わざわざ「領収書」をもらう必要はない

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会社の経理部員や人事部員たちは、何を考え、どこを見ているのか。お金の問題を甘く見ていると、「想定外」の落とし穴に落ちることもある。「プレジデント」(2018年3月19日号)では、11のテーマについて識者にポイントを聞いた。第1回は「経理に嫌われない領収書」について――。

■勝手に修正すると、私文書変造の罪に

提出された領収書に関して経理担当者が気にする点は2つある。まず、社内コンプライアンスの問題。次に、税務調査が入った際に税務署から指摘を受けない正当なものかどうかだ。

領収書は、それを発行した会社名や店名が印刷され、カーボンなど複写式で控えが店に残る形のものが一番信用力がある。また宛名は「上様」ではなく社名を入れてもらうなど、形式的に整ったものが経理担当者としては扱いやすい。いかにも個人売買でも使われるような汎用的な領収書で、要件がそろっていないと、チェックの対象となる。

ちなみに白紙の領収書をもらって自分で記入したり、勝手に記載内容を修正するのは私文書変造の罪に問われる。また、「社内の決済を通しやすくするために」などの理由で領収書を2枚に分けてもらうのも、違法と判断される可能性が高い。

▼経理が喜ぶ領収書とは?1.できれば、「上様」ではなく社名がベスト
2.飲食の場合、5000円/人以下なら会議費(法人税はかからず)、5000円を超えると交際費(法人税の課税対象)
3.金額が5万円以上なら、印紙が貼ってある(ないと印紙税法の義務違反。ただし、取引自体は無効にならない)
4.飲食などの場合、自宅の近くなど店の住所によって私用が疑われるケースもある
5.社名が「印刷」されているとgood
・文字がカーボン式(青・紺色など)だと、信用力が高い(店側に控えが残っているので)
・白紙の領収書に自分で日付・宛名・金額などを記入したら、私文書変造の罪に問われる可能性がある

■手書きの領収書より、レシートのほうがいい

飲食代の場合、会議費か交際費かでも経理担当者の対応は異なる。その分かれ目となるのは、1人5000円以下かどうか。たとえば取引先と計4人で会食をし、2万円を支払ったとする。この場合、1人5000円以下でおさまるので会議費となり、損金扱いで法人税の課税対象にならない。二次会まで行った場合は、お店単位で1人5000以下になるかどうかを判断される。しかし、3人で1店2万円を支払ったとすると、1人5000円を超えるので交際費となり、法人税がかかってしまう。

5000円超は即“悪”ではない。経理担当者が黙っていないのは、たとえば高級寿司店なのに1人5000円以下とする領収書だ。数合わせをしたのがバレバレで、税務署に指摘された際に説明責任を果たせない。

ところで、いまだ手書きの領収書にこだわる会社も多いが、税務署に対してはむしろレジから打ち出され、明細が記載されたレシートのほうが受けがいい。飲食店であれば、そこに人数が記載されていることもあるから、疑いを排除する証拠として強みを発揮できるわけだ。

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梅田泰宏
公認会計士
税理士法人キャッスルロック・パートナーズ代表。1954年、東京都生まれ。77年中央大学商学部卒。大手会計事務所を経て梅田公認会計士事務所設立。
 

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(公認会計士 梅田 泰宏 構成=小澤啓司 撮影=初沢亜利)