3日、ヨーロッパから帰国した酒井高徳、浅野拓磨、太田宏介、香川真司、川島永嗣、長谷部誠、原口元気と、山口蛍が合流した。これで日本代表は20人。この日のコンディション調整まで練習は全部公開され、4日の戦術練習からは非公開となる。日本代表は9月と同じく2日間の戦術練習の後、イラク戦を迎えることとなる。

今回のメンバー選考でもヴァイッド・ハリルホジッチ監督は海外組を重用している。海外に行けば、何が身につくのか。コンディションの問題を無視できるほどの効果があるというのか。もちろん競争でうまくなると言うのもあるだろう。それに、メンタル面にも変化がありそうだ。

そんなヨーロッパ組のメンタリティを表す一幕があった。練習前の「鳥籠」と呼ばれるオニ役を置いたボール回しで、槙野智章のパスが悪く、ジャッキー・ボヌベーコーチがボールを手ではたき落とし、そのまま続けたときのこと。オニ役だった酒井は自分が持っていたビブスをコーチに渡そうとする。

ところがコーチは槙野のせいだというジェスチャーをして受け取らなかった。酒井が槙野を振り返ると、槙野も知らんぷり。すると酒井はビブスをピッチに投げ、オニ役を辞めた。そのことに気付いたコーチが渋々ビブスを手にする。酒井は何事もなかったようにプレーを続けた。

日本のチームだったら、選手が諦めて自分がオニ役を続けただろう。あるいは別の選手がビブスを拾ったかもしれない。だが、酒井がそこで自己主張して、コーチに折れさせた。いつもにこやかで人のいい酒井の意外な光景だったので、この話を本人にぶつけてみた。

酒井は「怒ってないです。ビブスは地面に置いただけですよ」と笑いながら話し始めた。「どうぞ(コーチと槙野の)2人で勝手に決めて下さいって感じですよ」という。だが、そういう主張をするようになったのは「たぶん、ヨーロッパに行ってからだと思います」と振り返った。

ハリルホジッチ監督のように自分の意見をどんどん前に出してくるタイプには、これくらいの自己主張が必要なのかもしれない。9月のUAE戦のように監督の打つ手が実らないときは、選手が自己判断をもっとしなければならないだろう。そのためには、監督が選んだヨーロッパ組が必要になる。そこまで考えて、今回はあえて試合に出場していない選手まで含めて呼んだ――という試合展開にだけはなってほしくないものだ。

【日本蹴球合同会社/森雅史】