「脳が疲れたら甘いものを食べる」は逆効果…3〜4時間ごとに食べると集中力が長続きする「最高のおやつ」
※本稿は、岩見 謙太朗『ハーバード、ペンシルベニア、スタンフォード… 科学的に認められた 疲労回復大全』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

■なぜ集中力は続かないのか
ここでは、脳の疲労から早く回復する方法、そして疲れを予防する方法を解説します。
その前に、まず脳の性質やエネルギー源、脳が働く仕組みについて整理しておきましょう。脳は、実はとても「燃え尽きやすい臓器」です。重さが体重のわずか2%しかないにもかかわらず、全身のエネルギーの約20%を消費しているのです。
長時間の集中作業や、夜遅くまで残業をしていたり、タスクに追われたりする毎日を送っていると、こうした“頭のガス欠”を感じる人は多いのではないでしょうか。「すぐに集中が切れる」「午後になると頭が回らない」……この原因は、脳が使うエネルギーの種類と、その燃やし方にあります。脳はもともと、長時間フル稼働できるようには設計されていないからです。
私たちの体は、脂肪や糖など、複数のエネルギー源を使い分けて活動しています。しかし、脳は少し特殊です。脂肪はほとんど使わず、おもに「糖(ブドウ糖)」だけを燃料にしています。脂肪はゆっくり燃え続ける「長距離型」。一方、糖は一気に燃える「瞬発型」です。つまり脳は、短時間で強いパフォーマンスを発揮する“短距離スプリンター型”の臓器なのです。勢いよく働ける反面、エネルギー切れも早い。これが「集中力が続かない」「頭がぼんやりする」正体です。
また、脳には糖を蓄えておく“燃料タンク”がほとんどありません。神経細胞(ニューロン)が蓄えられる糖の量はごくわずかで、常に血液からの補給が必要。つまり、脳は「高性能だが、こまめに給油しないと止まってしまうエンジン」なのです。
■糖分は摂り方を間違うと脳疲労が悪化
脳のエネルギーである糖ですが、“摂り方”を間違えると、むしろ脳の疲労が加速してしまいます。脳疲労を起こさないようにするには、糖の摂取は「早く摂る」より「安定して継続的に摂る」ことを意識する必要があります。
よくあるNGパターンが、空腹時にジュースや菓子など、糖質だけを摂取した後に血糖値が急上昇する“血糖値スパイク”です。
ジュースや甘い菓子類を空腹の状態で摂ると、血糖値は一気に上昇します。すると体は、上がりすぎた血糖値を下げようとして“慌てて”糖を分解し始めます。
すると、今度は血糖値が急降下します。その2〜3時間後には眠気・イライラ・過食といった“反動”が起こります。このアップダウンを繰り返すほど、脳はエネルギーの波に振り回され、疲労がどんどん蓄積していきます。
スーパーやコンビニで見かける「脳の栄養=ブドウ糖(ラムネやグミなど)」や、糖質の多いエナジードリンクも、短期的にはスッキリしても、その後の失速が大きいというデメリットがあります。「脳の燃料が安定しない=集中力が乱れる」ことが本質的な問題です。

■カギは「安定供給」
先ほどお伝えした通り、脳のパフォーマンスに必要なのは、瞬間的なエネルギー補給ではありません。重要なのは「一定量を、ゆっくり、途切れなく」供給することです。
車でいえば、燃費にやさしいのはアクセル全開と急ブレーキを繰り返す運転ではなく、一定速度で走り続けることです。脳も同じで、「急上昇→急降下」を最も嫌います。
ここで近年注目されているのが、血糖変動(GV:Glycemic Variability)です。
健康診断では血糖値の“平均”を見ますが、実は脳にとって重要なのは高さではなく「揺れ幅」。血糖値がジェットコースターのように乱高下すると、脳へのエネルギー供給は不安定になり、パフォーマンスは急激に落ちます。血糖値が急降下すると体は軽い低血糖ストレス状態に入り、以下のような反応が起こります。
・強い眠気が出る
・判断力・集中力が低下する
これは、生理学的に脳が「ガス欠モード」に入っている状態です。つまり問題は「糖が足りない」ことではなく、「血液中の糖の量を短時間で大きく増減させる(揺らす)」ことなのです。
脳疲労の正体は“不足”ではなく、“乱高下”。だからこそ、糖は「早く入れる」のではなく、「安定して流し続ける」ことが重要なのです。
■持久系アスリートのエネルギー補給法
では、どうすれば血糖値を揺らさずにすむのでしょうか。
結論から言えば、一度に大量に摂らないことです。これが血糖値を安定させる、最も確実で科学的な方法です。
スポーツ科学の分野では、持久系アスリートのエネルギー補給法として、「30〜40gの炭水化物をこまめに補給する」ことが標準的な戦略になっています。
この方法は、血糖値の急上昇と急降下を防ぎ、持久力と集中力を長時間維持できることが数多くの研究でわかっています。少量の糖を定期的に補給すると、血糖はなだらかに推移し、脳へのエネルギー供給が“点滴”のように安定します。
■おすすめの食べ物
アスリートだけでなく私たちの脳も同じく、少量を3〜4時間ごとに補給した方が、集中力は明らかに長く続きます。おすすめは、以下の食べ物を3〜4時間ごとに分けて摂ることです。


■朝食の質が1日の集中力を決める
GI(Glycemic Index・グリセミック指数)とは、食後の血糖値がどれだけ上がりやすいかを示す指標のことです。低GIの朝食を選ぶと、昼食後の血糖も安定する「セカンドミール効果」が確認されています。

セカンドミール効果とは、その日の朝最初に取った食事が、次に取る食事(セカンドミール)による血糖値上昇を抑える現象です。朝食(特に大豆、大麦、食物繊維など)で血糖値の急上昇を防ぐことで、昼食後の血糖値まで安定させ、仕事の集中力を維持する効果が期待できます。つまり、「オートミール+卵+無糖ヨーグルト」のように糖質が低い朝食を摂ることで血糖値の変動が安定し、夕方まで集中が継続するということです。
お菓子メーカーのカルビーが大学と共同で行った「セカンドミール効果」についての興味深い研究があります。
朝にオーツ麦を使った食品を食べたグループは、その後の食事後の血糖値上昇まで抑えられることが確認されました。つまり、最初の食事内容が、次の食事後の眠気や集中力にも影響する可能性があるということです。
近年、こうした“血糖値を乱高下させない食べ方”は、スポーツ栄養学やビジネスパーソン向けの健康管理でも注目されています。
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岩見 謙太朗(いわみ・けんたろう)
医師・産業医
労働衛生コンサルタント、株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役。東京生まれ。北海道大学医学部卒。史上最年少で労働衛生コンサルタント資格を取得。日立グループ専属産業医を務める。その後、株式会社いわみ産業医事務所(https://iwamisangyoui-office.com)を設立。神奈川県を中心に、中小製造業など計20社以上の産業医を担当している。少子高齢化や人手不足が進む日本において、働く世代のメンタルヘルス不調の予防、労働災害防止、組織の生産性向上に取り組む。また、若手産業医の育成および労働衛生コンサルタント資格取得支援を目的に一般社団法人プライムエッジ(産業医600人の勉強会)を設立。代表理事として教育事業を展開している。著書に『ゼロから始める産業医の教科書』(中外医学社)、『ハーバード、ペンシルベニア、スタンフォード… 科学的に認められた 疲労回復大全』(実務教育出版)がある。
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(医師・産業医 岩見 謙太朗)
