謝罪の品について、有識者がアドバイス

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 謝罪に持っていく際の菓子折りといえば「とらやの羊羹」と聞いたことはないでしょうか。全国の百貨店内にも店舗を構える和菓子店であり、歴史としては京都で室町時代後期に創業し、後陽成天皇の御在位中より御所の御用を勤めるなど伝統を持ちます。

 筆者自身は謝罪を理由にとらやで羊羹を購入したことはないのですが、同僚が謝罪の際に持っていくところを見たり、逆に詫びの品として他の人がもらったものをおすそ分けしてもらったことがあります。なぜ謝罪といえばとらやの羊羹なのか、ビジネスマナーに詳しい西出ひろ子さんに聞きました。

謝罪にはなぜ「羊羹」?

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 西出さんによるとマナー講師の間でも「お詫びの品といえば『とらやの羊羹』」という共通認識は確かにあるとのこと。

「お詫びの品にとらやの羊羹を勧めるという雑誌の記事を見かけることも度々あります。選ばれる理由としては『高い知名度』『良質』『信頼感』『伝統』、これらを持ち合わせたうえ広く愛されている会社であるという点です。渡すものによっては相手をさらに怒らせかねないという状況において、まず勧める側としては外すことの無い選択と言えるのではないでしょうか」(西出さん)

 加えて、謝罪の品として相応しいものとされる「条件」にも合致していると西出さん。

「お詫びの品は“謝罪を重く受け止めています”という気持ちを伝える意味で、持った時にずしっと重みを感じるものが良いとされています。他にも包装やパッケージの色合いもポップで楽しげなものでなく、上品で落ち着いた印象のものが好まれます。その点でも、とらやはから高級感や落ち着きのある上品さがありますので条件にピッタリ合うのです」(西出さん)

 ただ、注意点として西出さんは「決して軽い煎餅やポップな包装の洋菓子がダメというわけではない」と補足します。

羊羹以外でもアリな理由とは?

マナーは強制でも押し付けられるものでもなく、それをしていれば絶対に正解というものでもありません。お詫びであれば、あくまでも相手への謝意が伝わることが大切ですので、もし相手の好みなどがわかっているのであればそれも選択の一つとなるでしょう」(西出さん)

 謝罪の品について、西出さんがアドバイスを求められた場合どうしているのか質問しました。

「お詫びに相応しいものとされるものの条件を満たしたうえで、さまざまな選択肢を考えるようにと伝えています。『お詫びといえばとらやの羊羹』があまりにも定番となってしまったこともあり、相手によっては『何も考えず選んだな……』と捉えられ、逆効果になってしまう可能性が無きにしもあらずだからです。ただ、他に何も思いつかないのであれば、やはりとらや。選択肢として常に頭の中に入れておいて間違いはないでしょう」(西出さん)

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 なぜとらやの羊羹なのかよく分かる取材でした。が、やはり「謝罪の機会」自体、無いにこしたことはありませんよね?

謝罪しなければいけないような事態はなるべく起こしたくないものです……

(取材・文=宮田智也)