藤井 風『Best of Fujii Kaze 2020-2024』

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 藤井 風が今夏に開催される海外の音楽フェスへの出演を続々と発表している。

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 記事公開時点で出演が発表されているのは、デンマークの『Roskilde Festival』(7月4日)、オランダの『NN North Sea Jazz Festival 2025』(7月12日)、スイスの『Montreux Jazz Festival』(7月14日)、米シカゴの『Lollapalooza』(8月2日)、米サンフランシスコの『Outside Lands 2025』(8月8~10日のいずれか)の5つ。これらに加えて、7月1日からはドイツ、イギリス、フランスなどを回る自身初となるヨーロッパツアー『FUJII KAZE EUROPE TOUR 2025』がスタート。さらに先日、8月に北米ツアー『FUJII KAZE NORTH AMERICA TOUR 2025』を開催すると発表した。

 約2カ月をかけて欧米各地をめぐる今夏の藤井。これまでも海外での活動はしてきた彼だが、今年は今まで以上に濃密な期間となりそうだ。しかし、なぜここまで藤井 風は海外でも求められているのか。今一度ここで整理しておきたい。

 そもそも日本のアーティストが海外の音楽イベントに呼ばれるためには、いくつかの要素が必要となる。まず第一に、現地での知名度とファンベースが欠かせない。フェス主催者は集客力を重視するため、現地での一定の認知度やファンを持つアーティストが有利となる。藤井は2022年の夏頃より海外で「死ぬのがいいわ」がバイラルヒットし、海外リスナー数が急上昇(7月にフェス出演するオランダやデンマークのデイリーバイラルチャートでも、トップ10圏内のヒットを記録)。同曲は昨年アメリカレコード協会(RIAA)よりゴールド認定された。こうした功績により築き上げたファンベースが、海外フェス出演への足掛かりとなっている。

 英語や現地語でのコミュニケーション能力も大きなポイントと言える。ステージ上ではもちろんのこと、インタビューなどで現地の言葉を使えると観客との距離も縮まるだろう。藤井は英語を話せるため、その点で大きなアドバンテージがある。海外のレーベルや現地の音楽業界関係者とのネットワークも重要だ。昨年、アメリカの大手レコード会社のリパブリック・レコードとの契約を発表した藤井は、より海外で活動しやすい環境が揃っている。パフォーマンスの実力もポイントの一つである。フェスは生の体験のため、アーティストは観客を惹きつけるエネルギッシュなステージングや技術が求められる。ライブパフォーマンスに定評のある藤井はこの点でも申し分ない。

 これらの要素を兼ね備えているため、海外のフェスにもブッキングされて当然と言えるだろう。しかし彼は、この状況を一朝一夕で手に入れたわけではない。普段から英語を使ってSNSで積極的に発信していたり、海外リスナー向けに公式に楽曲の英語訳を掲載していたりと、常に海外を視野に入れて活動していた。加えて、海外アーティストによるリミックスや、DahiやA.G.クックといった海外プロデューサーとの共同作業を経た作品を果敢にリリースしてきている。こうした海外向けのクリエイティブ面があるからこそ、ワールドワイドなリスナー層からの注目が集まっている。

 また、今年に至るまでに日本国内だけでなく、アジアや欧米にて単独公演の実績を積んできたのも大きい。藤井が初めて海外で公演した2023年のアジアツアーは7都市11公演。続いて2024年にはアポロ・シアター、ユナイテッド・シアター・オン・ブロードウェイを巡るアメリカツアーを開催している。また、同年のアジアツアーでは、10都市14公演と前年よりも多くの都市を巡り、自身の音楽を各地のファンに届けた。このような海外公演での地道なステップアップを経て、この夏、藤井は多数の海外の音楽フェスのステージに立つ。もちろん海外フェスに参加するためだけにこのような行動を取ってきたわけではないだろう。自然と選んできた行動の積み重ねが、現在の状況に繋がっているのだ。

 藤井 風が今年海外の観衆に迎えられる光景は、これまで彼が取ってきた選択に対する答えと言えるだろう。全編英語詞による新作アルバムの完成も待ち望まれている。新たな作品やライブパフォーマンスなどを通して、さらに広がっていく今後の活動に注目したい。

(文=荻原梓)