さらに検察側は、11月の面談では堀江被告から「3分の1以上の議決権を取ったら、村上さんは株を持ち続けるって契約してもらえませんか」と頼まれていたが、村上被告は応じなかったと指摘。LDがニッポン放送株の大量取得を発表し、同株価が7000−8000円に高騰したところで、保有株をすべて売り抜けて約30億4500万円の利益を上げた、と述べた。

 弁護側の冒頭陳述では11月の面談について「具体的な資金調達の話は出ていない。LD側の願望を表明しただけで、村上被告はLDが現実に株の大量取得を行うとは想像もしていなかった。言葉上は非常にノリのいいLDという会社の体質から出た発言だと受け止めていた」と反論した。また、村上被告の意図は、ニッポン放送の株主総会で議決権の過半数を確保する委任状争奪戦で、LDは味方になってくれる一員に過ぎないとの位置づけだったと述べた。

宮内被告「会談後、すぐに融資の準備」

 午後の公判に出廷した宮内被告は、04年9月15日に村上被告と会談した日にニッポン放送株を大量に買い集める準備を始めた、と述べ、検察側主張に沿った証言を行った。

 当時、M&Aを担当していた宮内被告の証言によると、会談には村上、宮内両被告のほか、堀江被告も出席。村上被告が「N社について」と題された資料を提示しながら「いまならニッポン放送が取れるぞ。3分の1取れば、うちの持っている分も合わせて過半数を超える。ニッポン放送はフジテレビの親会社でもあるんで、フジも取れる可能性があるぞ」と話した。具体的な取得方法については、外国人投資家など村上被告と親しくしている大株主をLDに紹介し、ブロックトレード(証券会社を通じて、大口の注文を相対で行う取引)することを提案した。LDはメディアが欲しいと思っていたので、同席していた堀江被告も非常に興味を示し「ぜひやらせてください」と返答した。村上被告から「お金はあるのか」と問われて宮内被告が「自己資金もありますし、借り入れもできると思います」と返答すると、村上被告は「そっか」と言っていたという。

 会談後、堀江被告と宮内被告は、ライブドアファイナンス元社長、中村長也被告=同法違反の罪で公判中=を呼び寄せて、スイス系金融機関「クレディ・スイス」と500億円の融資の交渉に入るよう指示。同日夜には宮内・中村両被告は日本でのクレディの窓口役を務める小谷彰彦氏に会い、「N社について」のコピーを示しながら「これをやるんだ、500億円を貸してくれ。担保はニッポン放送株。足りない分は堀江のLD株全部持っていってくれ」と頼んだ。小谷氏はスイスの本社と連絡を取り、1週間後には300億円はニッポン放送株を担保、200億円は無担保にする提案を持ってきた。

 その後、融資は200億円に減額されたものの、自己資金と合わせて300億円ほど用意できる準備ができたため、04年11月8日に再び村上被告と会談することにしたという。

 また、宮内被告は、9月の会談後に堀江被告がブログで会談の内容をにおわす記述をしたり、同年11月のプロ野球参入失敗の慰労会でもテレビカメラの前で「次は本丸いきますから」と話していたことを紹介した。【了】

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