伝説級のヒット商品「牛乳と卵のエクレア」を生み出した老舗企業がロングセラー商品を連発できるワケ

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スーパーやコンビニなどでチルドスイーツを目にする機会も多いことでしょう。例えばシュークリームやエクレア、ロールケーキなどです。その中で商品個数が多くて目に止まるのがモンテールのスイーツかもしれません。実はこの企業、創業から70年を迎えていて、ロングセラーを生み出している会社でもあるのです。

「牛乳と卵のエクレア」は25年連続売上No.1

モンテールには定番商品がいくつかありますが、「牛乳と卵のエクレア」は特に人気のあるスイーツです。

チルドエクレアカテゴリーで、1999年から25年連続売上No.1の実績があります(日経POS情報の「チルドシュークリーム・エクレア」カテゴリーの1999年から2023年のデータをもとにモンテールが調査)。

また「牛乳と卵のカスタード&ホイップシュー」は、チルドシュークリーム・エクレアカテゴリーでロングセラー売上No.1に選出されています(日経POSセレクションロングセラー売上No1<2023年-2022年12月>に選出)。

この2つは美味しさに満足もできますが、買いやすい価格帯であることも売上No1に貢献しているのでしょう。

これらのスイーツの他に、年間100種類以上の新製品を発売していて、1日70〜80万食、年間約3億食近くのスイーツを出荷しています。

金太郎飴の製造からスタート

モンテールの前身は、1954年に創業した「鈴木製菓」です。当時は砂糖が貴重なので、おやつやお菓子は高級品とされていました。

でも少しでも多くの人にお菓子を届けたいという思いから、小さな菓子工場で金太郎飴などを製造。その後1960年代になるとお菓子は身近なものとなったのですが、洋菓子はまだまだ遠い存在です。

そのようなときに結婚式の引き出物でいただいたバームクーヘンに感動したのが2代目の社長でした。これを毎日のおやつにできないかと思って、本格的な洋菓子へと舵を切ったのです。

「モンテール」という社名になったのは1975年のこと。フランス語で「宝石職人」を意味します。組み立てることで美しい宝石を作る職人のように、素材にこだわり丹精込めて商品を磨き上げ、他にない美味しいお菓子を届けるという思いがありました。

チルド市場に参入したのが1991年の頃。そして2024年には創業70年を迎える企業になりました。

モンテールが成長できた理由

モンテールの商品が売上No.1になるなど多くの人に認められ、企業としても成長ができたのは、美味しいものを届ける新しい仕組みづくりにあります。

1980年代は、日持ちが重視されていて賞味期限も3ヶ月というお菓子もたくさんありました。でも日持ちをさせると生地がパサパサになるなど、美味しさの面でマイナスになってしまいます。

そこでモンテールは生地のみずみずしさを重視しました。食べて美味しい、しっとりふわふわのお菓子に変更したのです。結果賞味期限は約1週間と短くなりましたが、消費者に美味しさを届けることが可能となりました。

また1980年代には洋菓子がスーパーに並ぶことも少なく、逆にチャンスと考えて販売路線を確立しています。加えて、一口サイズで食べやすい「プチシュー」の販売など、食べる側の利便性にも着目しました。「プチシュー」は1996年に年間1000万パック売れるヒット商品になりました。

モンテールの商品が売れ続ける理由

モンテールの商品が売れ続けていますが、それにはちゃんとした理由があります。

■強いこだわり

モンテールは「専門店のような味わい」を目指しているので、素材・製法・安全へのこだわりが強いです。

素材は自家製低温殺菌牛乳を使うことで、生乳本来の甘さや風味を生かしています。卵も、工場近郊で採れた新鮮なものを使用しています。

製法に関しては、カスタードのなめらかさを損なわないように、熱を均一に伝える銅釜を使用。ロールケーキは、生地のふわふわ感を残すように1本1本手巻きをしています。安全は、合成着色料や添加物を極力減らし、食品安全マネジメントシステムの認証を全ての工場が取得しています。

■商品改良

消費者の食の好みは時代と共に変わってくるものです。そのためモンテールでは、生地の歯切れのよさや、オリジナルのホイップの改良、オリジナル洋酒の改良などをおこなっていなます。時に生地の食感を大きく変えることも。

その例が「生チョコクレープ」です。発売から25年たった時期に、モチモチとした食感が出るような生地に改良しました。

健康志向に合わせた商品の開発へ

スイーツは美味しいだけではなく、健康に配慮する時代になりました。

例えば糖質。スイーツでは糖質が気になる人も多いですから、低糖質の食品が人気です。モンテールでも2015年から糖質を10g以下に抑えた新シリーズを販売しています。

ただ発売当時は、今ほど「糖質」が知られていないので、底糖質のスイーツは売れなかったそう。

そもそも糖質が何なのか? 体にどう影響を与えるのかもあまり知られていませんでした。そこでモンテールは医者との連携をしたり、他企業とのコラボなどで低糖質の意味合いを伝えたりしました。

これが功を奏して、糖質10g以下のシリーズは好調に推移することになります。

「プチ贅沢」という付加価値の提供

ここ数年で物価上昇があり、節約思考も高まっています。とはいえ、節約ばかりでは生活に潤いがなくなりストレスもたまるもの。消費者は安いものばかりではなく、付加価値があるものにも着目をしているものです。

モンテールの商品は低価格で買いやすいのですが、「プチ贅沢」の価格帯ではない場合も。そこでゴディバなどの人気ブランドとのコラボなどで付加価値のある商品を、少し高い価格帯で販売するようにもしています。消費者が求める「プチ贅沢」に対応することで、心の満足も提供しているのです。

さらに昨今の冷凍食品のニーズを受けて冷凍スイーツの販売を行うなど、新商品の開発も進めています。時代の変化・消費者のライフスタイルの変化などに対応しながら、これからもモンテールはロングセラー商品を生み出していくことでしょう。

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