将棋の第72期王座戦五番勝負第3局が9月30日、京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で行われ、藤井聡太王座(竜王、名人、王位、棋王、王将、棋聖、22)が156手で永瀬拓矢九段(32)に勝利した。挑戦者が着実に勝利に向かっているかと思われた一瞬の隙を突く藤井王座の逆転劇。解説者も一瞬何が起きたかわからず「これは、なんだ?…え、え!?」と大混乱していた。

【映像】グラフの動きにも注目!藤井王座、大逆転の瞬間

 若き絶対王者の3連勝で幕を閉じた本シリーズ。今期は、熱戦必至の“藤井・永瀬”がタイトルホルダーと挑戦者の立場を入れ替え再戦するとあり、大きな注目を集めていた。奇しくも第3局の舞台は、前期の王座戦で藤井王座が前人未踏の“全八冠独占”を達成した地。今期はどのようなドラマが起こるのか、対局室は張り詰めたような空気で包まれていた。

 第3局は、これまでの2局と同様の角換わりの戦型に。後手の藤井王座は千日手を視野に入れた指し回しを見せたが、先手番を持つ永瀬九段は打開を選択した。じりじりとした長い序盤戦を経て一手一手が濃密な中盤戦へ。藤井王座が繰り出す攻めの手を、永瀬九段は持ち味を生かして丁寧に受け止めていた。

 互角のまま突入した終盤戦では、両者惜しまず持ち時間を投入する超難解な消耗戦に。秒読みとなった最終盤でも攻めの姿勢を貫いていた藤井王座に対し、永瀬九段は着実に迫ってポイントを積み重ねていた。一歩一歩と勝利に近づく永瀬九段に対し、ラストスパートの最中に驚きの瞬間が待ち受けていた。

 最後の最後に勝負手を仕掛けた藤井王座に対し、永瀬王座は最も自然に見える歩合いで対応。しかしこれは、自玉の詰みを消すという超高度な藤井王座が用意した落とし穴だった。これにはABEMAで解説を務めた中村太地八段(36)、本田奎六段(27)も「これは、なんだ?…え、え!?」とキョトン顔。その後、「歩合いよりも桂合いの方が安全なんてことが世の中にあるんですか?」「あ!後手は詰めろじゃなくなったちゃうんだ!?」と驚きを隠せない様子だった。

 永瀬九段にとって唯一の“正解”は、中村八段が言及した桂合い。「一緒のエアポケットに入ってしまった」と藤井王座が見せた大逆転劇に圧倒されていた。

 前年に同じ舞台でも起こったドラマの再演とも言える展開に、ファンも大興奮。「藤井すっご」「キターーー」「嘘でしょ?」「やばいやばい」「ナイアガラ!!!」「ここまで来て狙ってたな 聡太」「なんて勝負術だ」「こーれはすごいよ……」「まじ鳥肌立った」とコメントが殺到していた。
ABEMA将棋チャンネルより)