30日、レバノンの首都ベイルートで、イスラエル軍の攻撃後、がれきを片付ける人々=ロイター

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 【エルサレム=笹子美奈子】米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは30日、関係筋の情報として、イスラエル軍の特殊部隊が、地上侵攻の準備として、レバノン南部で限定的な作戦を行ったと報じた。

 本格的な地上侵攻は今週にも始まる可能性があるとしている。

 報道によれば、作戦はレバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラが国境に建設した地下トンネルを通じてレバノン側に侵入し、ヒズボラの戦力の情報を収集することが目的だったという。米CNNは米当局者の話として、特殊部隊は既に撤収した模様だと報じた。イスラエルは侵攻時期を慎重に見極めようとしているとも伝えた。

 一方、中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラは30日、イスラエル軍がレバノン南部三つの町を地上から襲撃したと報じた。

 ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師がイスラエル軍に殺害される前に組織のナンバー2だったナイム・カセム師は30日、ナスララ師の後継者を近く選び組織を立て直すとし、「イスラエルが地上侵攻を行うなら、我々は用意ができている」と述べ、徹底抗戦の構えを強調した。

 アル・ジャジーラによると、イスラエル軍は29〜30日、ヒズボラの拠点レバノンの首都ベイルート中心部を攻撃した。中心部への攻撃は、イスラム主義組織ハマスとの戦闘が始まった昨年10月以降で初めて。

 軍はヒズボラ本部があるベイルート南郊を空爆してきたが、報道によれば、今回の攻撃対象は中心部で、空港と市内を結ぶ交通の要所だ。この攻撃で、武装組織「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」の幹部3人が殺害された。

 軍は29日、ヒズボラの軍事施設など約120か所を攻撃し、レバノン南部でハマスの現地幹部を殺害したと発表した。PFLPについては殺害を認めたが、場所を明らかにしていない。レバノン保健省によると、29日に105人が死亡、359人が負傷した。中心部の攻撃が本格化すれば、死傷者数の拡大は必至だ。

 攻撃対象は周辺国に広がっている。イスラエル軍は29日、イエメン西部ラスイサなどの発電所と港湾施設を空爆。反政府武装勢力フーシがイランからの武器・石油の輸送に使う施設を戦闘機など数十機で攻撃した。

 バイデン米大統領は29日、中東情勢を巡り全面戦争は回避しなければならないとして、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と近く協議する意向を示した。