「パブは念のため、目線を入れて隠していたんですが、やっぱり旦那だったら目元とか胸の形でわかりますよねぇ(苦笑)。ただ、半年間はなぜか黙っていたんです。それが、お正月に爆発しました。車に乗っている最中、異様な空気で。あ、これはバレたなって。家に着いた瞬間、すごい剣幕で私が載っている雑誌を投げつけてきて『出てんだろ! ぜんぶ知ってるんだぞ!』って」

◆“身バレ”で迎えた修羅場「ママは汚い仕事をしているんだよ」

 そこからは“修羅場”だったという。

「すでに借金は返していたので、辞めろって言われるわけですが、私としては子供を育てるために仕事を辞めたくなかったから、正直に伝えたら大喧嘩になって。小学生の娘に『ママは汚い仕事をしているんだよ』とか、親族にも言いふらしたり。その後も娘は普通に接してくれたけど、私の母なんて毎日、何十件も電話してきて罵詈雑言の嵐ですよ」

 セクシー女優を辞める、辞めない。離婚する、しない……。

 大喧嘩のすえに、なんとか続けることになったが、香音凛さんは身内にバレてしまったことが転機となり、「逆に吹っ切れたんです」と当時を振り返る。

「いちばんバレたくない人たちにバレてしまったので、もういいかなって。パブを全開にして、もっと稼ぐぞって」

 雑誌の表紙になった際には「ありえない!」「恥ずかしい!」などと身内からクレームが止まらなかった。そんななかで、唯一の理解者が「父親でした」と話す。

「父が『亭主が稼げないんだから仕方ない。それだけ家庭が大変なことになっているんだろう』って。小さいときから可愛がってくれて、いざとなったら私がすごく頑張るのを知ってくれているから。そんな父の言葉には救われました」

 当時、夫は働けなくなっており、一家の大黒柱としてローンなどを払い、子どもを育てる生活が4年を過ぎた頃、離婚を決意する。原因は夫のブログだ。

「人気ドラマのパロディみたいなブログを書いていたんですよ!『自分はブランド物ばかり買って、俺らのはすべて安物』『ブランド物を買うくせに俺の小遣いは3万円』とか『子どもの下着は擦り切れるまで買い替えない』とか。ありもしないことが面白おかしく書かれていたのを見て、我慢の限界がきました」

◆「撮影現場が唯一、私が息をしていられる場所でした」

 まさに紆余曲折、そして四面楚歌ともいえる状況のなかで香音凛さんは1人で家を出ることになってしまった。

「話すと長くなりすぎるので割愛しますが(笑)、調停で親権を争ったり、もう精神がボロボロになるなかで、セクシー女優としての撮影現場だけが救いだったんです」

 その後、長く離婚の相談をしていたピエール剣さんと再婚。一男一女に恵まれる。

「彼はアダルト業界の仕事に誇りを持っていて、『なにも恥ずかしいことじゃないんだから、隠す必要なんてない』といって保育園の先生とか保護者たちにもオープンでした。子どもを産んでから私は引退していたけど、本当に生きやすかったですね。この仕事で一軒家も別荘も買えるって、すごいことですよね」

 そんなピエール剣さんとも「色々あって別れちゃいました」という香音凛さんだが、現在は「最後のパートナーを探している最中です」と笑う。

 インタビューの締め括りに「後悔はしているか?」と聞くと、香音凛さんは「後悔はないですね!」とキッパリ。

借金で夜逃げするか一家心中という状況や、家族と一緒に暮らせなくなってうつ状態だったときも、撮影現場があったから救われましたもん。どんなにツラいときも唯一、私が息をしていられる場所だったので」

●香音凜(かおりん)
Instagram:@kaorin.0923

<取材・文/吉沢さりぃ、撮影/藤井厚年>

―[香音凛]―

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720