事件を担当する兵庫県警

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自宅に呼び出し「帰られへんぞ」

 暴力団幹部が過激な言動による脅迫を行ったとして逮捕されたことを報じたニュースが話題になった。6代目山口組の3次団体の幹部であるこの暴力団幹部の口から「指をちぎるぞ」などといった言葉も現場で出たとされるが、どうやら単純な脅迫事件ではないようなのだ。その真相は――。

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 暴力行為処罰法違反の疑いで逮捕されたのは、6代目山口組3代目弘道会野内組の西川純史こと光雄舎弟頭と、50代の司法書士の女性ら複数人で、逮捕日は5月29日。

「今年3月9日、西川舎弟頭と司法書士らは、被害者の男性A氏を自宅に呼び出し、“指をちぎるぞ”“帰られへんぞ”などと脅迫した疑いがもたれています。暴力行為処罰法違反というのは通常の暴行・脅迫罪よりも重く処罰される犯罪で、西川舎弟頭らが組織の名を出して男性を脅した可能性が指摘されています」

事件を担当する兵庫県

 と、担当記者。A氏と会社の代表権をめぐって係争中だった司法書士が、A氏側に提訴を取り下げさようと考え、西川舎弟頭に依頼。それを受けての呼び出し、脅迫という流れのようだ。

男性は現役組員か

「被害男性A氏から被害届を受理した兵庫県警が捜査を進め、西川舎弟頭のほか野内組からは関利晃若頭補佐ら6人が同容疑で逮捕されています」(同)

 今となっては珍しくなった暴力団の威光を笠に着た事件に見えるが、実態はそうシンプルなものではないようだ。

 というのも、関係者によれば、A氏は現役の野内組の構成員だという情報がある。そのせいか、事件直後にA氏は事件が起こったエリアを管轄する大阪府警に被害を訴えたが、府警は関利晃若頭補佐などに事情を聞いた結果、被害届を受理しなかったというのだ。

 大阪府警は「内輪のもめごと」とでも判断したのだろうか。その後のA氏の動きについて、元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は、NPO法人「五仁會」を主宰)によると、

「A氏は兵庫県警に話を持ち込んだようです。兵庫県警は、彼が現役組員であることまで把握していなかった可能性があります。そういうこともあって事件に着手することになり、逮捕に至ったようです。“指をちぎるぞ”といった言葉は通常カタギ相手には使わないものですがね」

 この発言が本当にあったのか、あったとしても誰に向けられたものなのか、疑問の余地が残るという。

司法書士への疑問

 界隈からは、問題の解決のためとはいえ、司法書士が暴力団幹部を頼った点について疑問の声があがっている。今の時代、紛争案件の仲介をヤクザに依頼するというのは悪手中の悪手だからだ。

 先の関係者によると、司法書士はA氏にダマされて事務所の経営権を奪われたと提訴、A氏はこれを受けて反訴したという形のようだ。争いが法廷内で繰り広げられているぶんには問題がなかったのだが、司法書士と西川舎弟頭とが以前から知り合いだったことで運命がいたずらをした可能性があるのだという。

「司法書士も西川舎弟頭に相談することのリスクを重々承知していたようですが、A氏と同じ組織にいるのだから内々のやり取りで事態を収拾できるかもしれないとの期待感があったのかもしれません。で、自宅に関係者を招集し、解決を図ろうとしたようです」(前出・竹垣氏)

 しかし、説得は不調に終わり、場が荒れてしまった。挙句の果てに兵庫県警に駆け込まれたという流れのようだ。逮捕にまで至ったということは、脅迫を証明する録音などがあった可能性もある。一方で、大阪府警兵庫県警との間で判断が異なったことにも疑問の声があがっているようだが……。

警察庁の狙い

 司法書士は、A氏側から経営権のみならず資産のすべてをダマし取られたなどと主張しているとされる。しかし、そうであっても解決のために知り合いとはいえ暴力団幹部の手を借りたのは異例で、回避すべき手段のようにも映る。

「それはその通りですね。西川舎弟頭に話をした時点で、その後にどのような手段に訴え出るかはある程度想像できたはずですよね。警察庁としては各県警本部を通じ、暴力団員であることのデメリットを説き続けることで構成員をカタギにさせ、暴力団を弱体化させようと目論んでいます。今回の事件はまさに、暴力団員であることにメリットがないことをアピールするのに好適だったと言えるのかもしれません」(先の記者)

 今回逮捕された西川舎弟頭や司法書士らが起訴されて裁判に進むのか、展開が注目される。

デイリー新潮編集部