パナソニックオープンレディース最終日、初優勝した天本ハルカ【写真:Getty Images】

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パナソニックオープンレディース最終日

 女子ゴルフの国内ツアー・パナソニックオープンレディース最終日が28日、千葉・浜野GC(6669ヤード、パー72)で行われ、首位で出た25歳の天本ハルカが通算19アンダーでツアー初優勝を飾った。7バーディー、1ボギーの66で回り、1998年度生まれの「黄金世代」では15人目の優勝。5度目のプロテスト受験で合格した苦労人が、一時1打差に12人がひしめく大混戦を制した。ジュニア時代からライバルたちの背中を見つめていたが、「これから追いつけ、追い越せでやっていきます」と宣言した。(取材・文=柳田通斉)

 ウィニングパットは2メートル半残っていた。ボギーにしても初優勝だったが、天本はフックラインを読み切って沈めた。右拳を握り、安堵の笑みを浮かべた。

「なかなか実感が湧かず、フワフワしています。みんなが伸ばしてくると思いましたが、前半は調子が上がらず、パー5の2つ(3番、9番)で(バーディーを)獲ることを目標にしていました。その中、8番(パー3)でも獲れて、10番(パー4)からは攻める気持ちになりました」

 耐えながらチャンスを待ち、8番からは圧巻の5連続バーディー。一時は2打差に12人がひしめいた大混戦が、瞬く間に天本が抜けて2位に4打差をつけた。しかし、13番パー4で1.2メートルのパーパットを外してボギー。「パーを獲り続けて、またチャンスを待とう」と切り替えていた。

 一緒に2021年度プロテストを受け、トップ合格だった尾関彩美悠の追い上げには「ドキドキさせられた」と振り返った。最後まで「自分は自分のプレーを」と言い聞かせていたという。

「自分は自分」。プロテスト合格前からのスタンスだ。同学年の黄金世代は、勝みなみ、畑岡奈紗がアマチュアにしてツアー初優勝を飾り、渋野日向子は海外メジャー・全英女子オープンを制した。小祝さくら、原英莉花も勝利を重ねた。だが、この間に天本はテストに落ち続け、スタートラインにさえ立てていなかった。

「正直言うと、(プロテストの)3回目くらいはきつかったです。『これ、通るのかな』とも思いましたが、『やりたい』が勝つ状況でした。コロナで(20年度の)テストが延期になり、自分を見つめ直すことができました。4回目で初めて最終まで行って落ちた時には、母に『次で最後にするから』と頼んで受けた5回目で通ることができました。でも、その間に培ったものがあるから、ツアー1年目(22年)から予選落ちが少なくいられたと思います。あの時間は無駄ではありませんでした」

「あんな人になりたい」 宮里藍さんがきっかけで始まったゴルフ人生

 テスト合格に至るまでには、数々のトップアスリートを担当してきたスポーツトレーナーの鴻江寿治氏と出会った。「無理のない体の使い方」を教わり、クラブも軽量に。技と心の面では男子プロのレジェンド・伊澤利光からも指導を受けた。

「鴻江さんと出会って、体が本当にいい状態になりました。伊澤さんからは今も毎日のようにLINEが来て、『勝てる選手だから、自信を持って頑張れ』と言ってくださいます。昨日の夜も『明日は楽しんで。グッドラック』というメッセージがありました」

 ゴルフを始めたきっかけは、テレビで見た宮里藍さんが優勝する姿だった。「あんな人になりたい」。その一心で母・結子さんに頼み、自宅に程近いジュニアゴルフスクールの門を叩いた。

「最初はコーチに『低学年の子は危ないからダメだよ』と言われましたが、『真剣にやるんでお願いします』と頼んで入れてもらいました。最初の2年はコースには出ずに練習だけでしたが、3年目から試合にも出てどんどん楽しくなっていきました」

 宮里さんの信条は「意志あるところに道はある」。天本もその生き方を学び、25歳にして初優勝にたどりついた。「藍さんは宮里藍サントリーレディスの会場でお見かけしたのですが、緊張してご挨拶もできていません」。だが、次週の国内メジャー・ワールドレディスサロンパス杯は宮里さんがホスト役を務めている。

「もし、機会があればご挨拶と初優勝のご報告がしたいです」

 ゴルフがとにかく好き。「真面目」と言われながら、地道に階段を上がってきた。同期のエリートたちには遅れを取ったが、今でも「ゴルフが好き」と言えるほど高いモチベーションがある。

「これから、みんなに追いつき、追い越せの気持ちでやっていきます」

 ツアー本格参戦した22年に「ゴルフファンの人に名前を覚えてほしい」と、登録名を本名の「遥香」から「ハルカ」に変更。これでファンにも宮里さんにも、名前を覚えられたはずだ。

(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)