レガシーテクノロジーに定着し、特定の領域では依存度が極めて高いサードパーティCookieが、2024年末までにChromeから完全に消え去る(予定だ)。

これまでに幾度も延期されてきたCookie廃止だが、Googleはこの1月中にもChromeユーザーの1%を対象としてサードパーティCookieを無効にするとしており、今回ばかりは(と断るのも妙だが)本気で取り組むと思われる。これまで当然のように存在していた技術が消え去り、まったく新しいものに置き換わるということは、どれほど入念に備えていても混乱を引き起こすものだ。

控えめに言っても、Cookieの存在感は依存どころではなく必需品に近い。Webサイトを訪問するたびに表示されるCookieの受け入れに関するオプトアウトで、何も考えずに「拒否する」を選択しながら、我々はその存在を体感している。少し哲学的に語るなら、そんなCookieの死が意味するものとはなんなのだろうか? 

ターゲティングに関する議論は今更感



Cookieと切っても切れない要素と言えば、デジタル上においてその絶大なパフォーマンスとともに悪名も届かせているターゲティングおよびトラッキングが挙げられる。ただし、この文脈は正直なところ今更感が拭えない。ターゲティングの没落は2017年、AppleがSafariにおいてターゲティングやトラッキング目的でのサードパーティCookieの有効性縮小を始めたときから始まっている。

デバイス上のアプリによるトラッキングの可否をユーザーが選択できるATT(App Tracking Transparency)も、導入されてすでに2年が経過しており、Cookieをはじめとするサードパーティデータに依存することの「実存的危機」はわかっていたことだ。

こうした動きは欧米圏における政治的な思惑も多少影響はしているが、根本にはオンラインプライバシーに対するユーザーの懸念があり(規制当局も世論を無視しない)、コミュニケーションのあり方も含めてユーザーシフトが進んでいることを示している。「Cookieが取り上げられてターゲティングができなくなる(なった)」のではなく、ユーザー本位になるがゆえに、事業者サイドが不便になったに過ぎないのだ。

そもそも、GoogleがAppleの方針を踏襲するという断言したのは2020年1月だった。ChromeでCookieが4年近く延命されてきたことが驚きではないだろうか。

関係者全体を直撃するのは測定の混乱



ターゲティングよりも懸念すべきは測定の混乱だ。Googleはデジタル広告業界の支配者であり、同社のCookie廃止が広告の測定や評価に与える影響・責任は、Appleよりもはるかに大きい。デジタルにおいて(本当に正確だったかどうかはさておき)測定の明確さと、それによるPDCAの実行やアトリビューションの容易さは大きな価値だったが、不幸なことに指標も含めCookieを使わない測定よりもCookieベースの測定が主流だった。

そうしたなかで、ある日Cookieが消えるとどうなるのか。クリエイティブエージェンシーのButler, Shine, Stern & Partnersでマーケティングサイエンス担当責任者を務めるトリーナ・アーネット氏によると、同社のとあるクライアントがプライバシーをめぐってカリフォルニアで訴訟を起こされるリスクを警戒し、Cookieを含めたすべてのトラッキングメカニズムの使用を中止することを決めた。これにより当面は事実上、広告の測定と最適化の能力を失うことになり、アーネット氏が言うところの「1994年の世界」、つまり「『みんなクリックしてくれているのか?』という手探りの状態に戻った」のだ。幸いなことに、このクライアントは過去のマーケティングミックスモデルを参考にし、将来のパフォーマンスをある程度まで予測できるという。

広告主だけでなく、枠を提供するパブリッシャーにとっても測定の混乱は致命的だ。「ターゲティングもできないし、成果もわからないデジタル広告」に価値があるかと問われれば、自信を持って「ない」と答えられる(もちろん、それだけがデジタルの価値ではないのだが、本稿では言及しない)。

せめて代替手段が確立されていれば、ギリギリまでCookieを使い倒し、直前で終了するという手もあったのだが、アテンション指標や代替IDなど効果測定や評価指標の技術は発展途上だ。Googleがターゲティングや測定の代替手法として提案しているプライバシーサンドボックスも、信頼性や透明性において大いに疑問がある。

プログラマティックに関連するあらゆるものから、Cookieもタグもすべて外さなければいけない時代に、我々はどうすべきなのか。ひとまずは、ユーザーに関心を持ってもらえるコンテンツを提供し、インプレッションを生み出すのはどうだろうか。古き良き2000年代初期の「インターネット」に戻ってみるのは。

主な数字



90%:Googleが実施した、プライバシーサンドボックスで広告主がサードパーティCookieと同じレベルのオーディエンスにリーチできたかを確認する試験の結果。サードパーティCookieと比較したクリックスルー率も90%以上だったという。

31%:2023年8月時点で米DIGIDAYの調査においてサードパーティCookieの終焉が自社ビジネスに影響を与えると回答した広告主の割合。2022年は51%だった。

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