堀江貴文「ChatGPTで遊んでいても生きていける」
ChatGPTをはじめとする生成AIの躍進で大きく変わること(写真:World Image/PIXTA)
ChatGPTをはじめとする生成AIの躍進で、私たちの仕事や生活は大きく変わると予想されます。今、私たちは何をすればいいでしょうか。堀江貴文氏の新刊『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』から一部抜粋、再構成してお届けします。
生成AIの民主化はどう進むか
変化のタイミングで、私たちは何をするべきなのか?
インターネットが普及しはじめた当初は、HTMLを使ってホームページを作成する仕事が高単価な仕事として成り立っていた。しばらくしてブログサービスをはじめとしたプラットフォームが次々と誕生し、サイト制作のような簡単な仕事の需要は少なくなっていった。
生成AIに関しても初期の段階では、プロンプト・エンジニアリングなどに精通した一部の層が活発に活動するだろう。そしてしばらくの移行期間を経て、一気に生成AIは民主化していく。
こうした時期に何をすればよいかというと、まずは情報を集めることだ。拙著『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』では、多くの人にとって必要と思われるAIに関する知識や考え方を体系的にまとめることを目的とした。だから、まずは本書を読んでほしい。
あとは、動くこと。何をすればよいか、読者の状況に分けてまとめてみた。
ビジネスを起こしたい人
→生成AIを使えばそれなりのビジネスはサクッと作れる
インターネットが数々のIT起業家を生んだように、生成AIを使って新たなビジネスを生み出す人たちが続出するだろう。
私としても50億〜100億円規模のビジネスならいくらでもアイデアが思いつく。たとえば、老人の相手をしてくれるChatGPT搭載のワイヤレスイヤホンなんかどうだろうか。同じ手法で子どもの話し相手のアプリもできるし、語学学習にも使えそうだ。もしかしたらすでに翻訳機を扱う企業で開発しているかもしれないが。
なかでも、生成AI×コミュニケーション分野のビジネスアイデアはいくらでも出てくる。私はバーチャルの占い師を作ろうとしているところだ。
具体的な活用方法に関しては本書で紹介するが、他にも私の人格を搭載したAIホリエモンを作って講演会で稼働させたり、新刊の試し読みを私の声で読み上げる仕組みを作ろうと考えている。
「AI×○○」で、社会にとってどんなことができるのか、いくらでも考えつくのではないだろうか。
自分の時間を有意義に使おう
今は会社員だが、何か始めたい人
→まずは、ChatGPTを使って不要な仕事をなくそう
私は今までによく「自分の時間と他人の時間はトレードオフであり、他人時間を減らして、自分時間を増やしたほうがよい」ということを言ってきた。
とはいえ、会社員だとどうしても、会社のために不要な仕事をしなくてはならない場面が出てくる。
そんな時こそChatGPTで仕事を効率化させよう。ルーチンの仕事に使う時間を極力減らし、自分の時間を有意義に使おう。
何かを始めてもいいし、遊んでいてもいい。
人生は楽しむのが大事だ。
何もしたくない人
→幸福の基準は下がってきた
工業化以降、科学技術は疑いの余地なく、人間の生活に豊かさをもたらし続けてきた。
食についても、そうだ。人間であれば毎日なるべく美味しいものを食べたいと思うだろう。
たとえば、うま味調味料は素晴らしい発明だ。少量をかけるだけでどんな料理も美味しくなる「魔法の粉」だ。
うま味調味料をうまく使えば、食費を抑えながら毎日美味しいものにありつくことができる。衣食住のすべてがフラット化し、誰でも一定の幸福を享受できるようになっているのだ。
多くの人はいまだに古い価値観にとらわれ、余計なものにお金をかけているが、理論的にはほぼ無料で生きられる社会になっている。エンタメについても、無料のゲームはあふれているし、ネットフリックスにサブスク料金を払えば地方に住んでいても世界最先端の作品を楽しめる。
将来的に核融合が実用化されれば、無限にエネルギーが作られるので、電気料金さえも無料に近づく。いわゆる労働は必要なくなるので、冗談抜きで、ほとんどの人は遊んで暮らせる社会になるだろう。これはある意味、テクノロジーの勝利だ。当たり前の幸福に目を向けよう。
幸い、人間には機械と違って食欲・性欲・睡眠欲からなる三大欲求がある。欲求をきちんと満たせれば、それだけで満足感は得られるはずだ。日常生活で喜びを感じられることをいかに増やしていくかを考えたほうがいい。
多少極端にいえば、今後は、次のように分かれていくと思う。
・自分が楽しいと思うことを追求している人
・突出した世界で変なことを考えながら、社会を変えていく人
遊んでいても、今後は、自分よりも賢い人たちが食いぶちを稼いでくれると思えばありがたい世界だ。
AIの進化は止まらないが、人間は妄想ができる
ユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス全史』(河出書房新社)の中で、約7万年前の「認知革命」が人類に大きな飛躍をもたらしたという。人類が神話などの虚構を想像し、仲間に語ることで大規模集団を形成できるようになったからだ(考えてみてほしい。「国」だって、もともとは人間の妄想から始まった概念なのだ)。
私たちの頭の中にあるこのフニャフニャの物体である脳の前頭前野が妄想を生み出し、バーチャルな概念を練り上げ、テクノロジーを発明しながら、未来を切り拓いてきたのだ。
今、OpenAIをはじめ世界トップの頭脳を持つ精鋭たちが日夜、AI研究と開発に勤しんでいる。その進化のスピードにはもはや誰もついていけない。一般人が情報をキャッチアップしていくのはほとんど不可能だろう。
それでも、ChatGPTをはじめとした生成AIが、私たちの生活や仕事あるいは世界や未来をどう変えようとしているのか、つかんでおいたほうがいい。
(堀江 貴文 : 実業家)