納期が遅れる人の締切を守らせる「根回しのコツ」
リーダーになれる人とそうでない人の差は、「報告してくれない相手」の立場になって考えることができるところにあります(写真:ふじよ/PIXTA)
「課長なんて楽勝、楽勝」と思いきや、いざ自分が「その立場」になってみたらチームがうまく回らないし、成果も一向に上がらない。打開策について上司に相談しても「課長になったんだから、もっとガツンとやれ」と意味不明なアドバイスしか返ってこない……。
いざリーダーになったときに途方にくれないためには、リーダーになる前から「正しい準備」をしておくことが大切なのです。
リーダー育成家、林健太郎の最新刊『できるリーダーになれる人は、どっち?: 話し方・考え方・聞き方……「ここ」で差がつく!』では、コーチとしてリーダーシップの指導にあたっている著者が、将来、リーダーとして活躍することを目指している人たちに向けて、「できるリーダー」へと成長するために身につけておきたい仕事の習慣について紹介しています。本稿では、同書から一部を抜粋してお届けします(全3回、今回は2回目)。
◆必要な「報告」が、なかなか届かないとき
リーダーになれる人は、「どうして報告が遅れるのか、教えてくれませんか?」と、相手の立場で理由を聞く。
リーダーになれない人は、「納期を守って、早く報告してください」と上から目線で相手を責める。
相手の立場になって想像を働かせる
私がコーチングをしているお客様で、ある海外メーカーの日本支社で主任として働いているZさんの話を紹介します。
Zさんは各部門から毎月「実店舗での売上の数字と、そこからわかるトレンド」を報告してもらい、それを「業績レポート」にまとめる仕事をしています。 とても段取り上手なZさんは、ほとんどの部署から納期までに報告をもらうことができているのですが、とある部門の担当者のことでいつも頭を悩ませていました。
Zさんが事前に何度もその担当者に根回しをしても、結局納期に遅れることが繰り返されていたのです。月末が近づくと、毎日のようにその担当者に催促メールを出すのがストレスになっていると、私に相談がありました。
「とにかくその部門だけが、毎回約束した納期に報告が上がってこないんですよ。別部門の人だから怒るわけにもいかないし、この1つの部門のせいでレポートが完成しないのでイライラするし、本当にストレスなんです」
「そうなんですね。毎回遅れるって、どれくらい遅れるのですか?」
「だいたい、1日か2日くらいです」
「そうですか。例えば依頼するのを1日か2日、前倒ししてみるとか?」
「それもやっています。でも、どんなに早く依頼しても、結局報告してほしい納期に遅れるんです」
「どうして毎回遅れるのか、理由を聞いてみましたか?」
「そんな! 他部門の人なので聞けませんよ!」
「そんなことないですよ、聞いてみれば原因がわかるかもしれませんよ」
そんなやりとりをしてからしばらくして、Zさんから続報が届きました。
「報・連・相」を駆使する
「林さん! 原因がわかりました! あれから林さんのアドバイスに従って、思い切ってその担当者に『どうして毎月、1日か2日、提出の納期に遅れてしまうんですか? 何か原因があるんですか? もしよければ、相談に乗りますよ』って聞いてみたんです」
「そんなことがあったんですね!」
「そうしたら、同じ時期にいくつか作成しなければならない書類が重なっていて、それを依頼された順にやっていくとどうしても提出の納期に遅れてしまう。それが原因だったんです」
「なるほど。だったら、その仕事の順番を変えてもらえないか提案してみたらどうですか?」
「そうですね。やってみます」
その後、Zさんはその担当者の元に何度か通い、どんな仕事をどんな順番でやっているのか教えてもらいながら信頼関係を築いたそうです。
そしてZさんがなぜ、その納期での報告が必要なのかについてもていねいに伝え続けたとのことでした。そして、優先順位の付け方について一緒に協議するプロセスを経て、とうとう仕事の優先順位を変えてもらうことに成功したのです。
このZさんの一連の流れは、「報・連・相」でいうと、「報告」をなかなかしてくれない相手に対して、「連絡」することを重ねて、「相談」に乗って、仕事のやり方を変えてもらった成功事例です。
このように、他部門の相手であっても「報・連・相」を駆使すれば、相手の仕事の内容がわかって、改善することも可能なのです。
相手の困りごとに対処できるか
私は同じような事例を、あるビジネス書でも読んだことがあります。
その本の著者は、独立する前に勤めていた会社で広報を担当していて、社内報を作っていました。現場の営業担当が、社内報用に頼んだ原稿をなかなか提出してくれないことが悩みでした。
打開するために営業担当の面々に「どうして締め切りまでに原稿をくれないのか?」とヒアリングしてみたのです。すると、ある社内的な手続きに時間を取られていて、「営業の外回りから帰っても社内で時間がない」ということがわかりました。
そこで、その手続きを行っている部門にかけあって、営業の負担を軽くする改善を進めました。その結果、営業担当の帰社後の業務負荷が軽減され、結果的に原稿の締め切りが守られるようになりました。
リーダーになれない人は、「提出物が遅い」という目の前の事実に感情を害してしまって、力任せに「早く提出してください! こっちの仕事が進まないんです!」とイライラを爆発させてしまいがちです。
しかし、リーダーになれる人は違います。
ここでグッとイライラをこらえて、相手の立場になるのです。「やってもらえないのには、相手なりの事情があるに違いない」と考えて、理由を聞いてみる。すると、それまで見えなかったものが見えてくることがあります。
そして、Zさんやビジネス書の著者のように、「相談に乗る」「相手の困りごとを理解し、対処する」ことに成功するのです。
こうした発想と行動が取れる人は、いざリーダーの立場になったときに、チームのメンバーに動いてもらえるでしょう。
(林 健太郎 : リーダー育成家 合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ)