(漫画:©︎三田紀房/コルク)

記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第89回は東大生が正解した問題こそ見直しをする背景を解説します。

正解した問題の見直しをしている?


みなさんは勉強のときに、正解した問題の見直しはどのくらいしますか?  間違えたところの見直しではありません。合っていたところの見直しです。

ミスした箇所をきちんとチェックするのは当然として、正解した問題のほうは〇をつけて終わり、という人も意外といるのではないでしょうか。

もしそうなら、成長が頭打ちになってしまうかもしれません。正解した問題でも、振り返る価値のあるポイントがたくさんあるからです。「合っていれば別にいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、勉強が得意な人は正解したところもそのままにしません。

質の高い見直しをして、さらなる実力アップにつなげているのです。『ドラゴン桜』でそのやり方が説明されている場面があるので、まずはこちらのマンガをご覧ください。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください





(漫画:©︎三田紀房/コルク)




(漫画:©︎三田紀房/コルク)


(漫画:©︎三田紀房/コルク)

いかがでしょうか。主に以下の3つの点が説明されていましたね。

・あやふやな知識で迷った問題はチェックする
・選択肢に出てくる語句はすべて確認する
・正解した問題は空欄や選択肢がなくても解けるようにする

これをやらないと、いくら勉強しても大きなリターンは得られません。それぞれ詳しく見ていきましょう。

まず「あやふやな知識で迷った問題はチェックする」ですが、これは正解かどうかに関係なく行うべきです。自信がないまま適当に答えても、偶然正解できることってありますよね。

特に選択問題が典型的なパターンです。合っていたのは、たまたまであって、再現性はありません。しっかり根拠となる知識を持って答えられなければ、次に似たような問題に出会っても攻略できるとは限らないでしょう。

そのため、次の「選択肢に出てくる語句はすべて確認する」のも、必須の作業です。選択問題で正解したときって、ひっかけの選択肢を振り返らずに済ますことが多いのではないでしょうか?

選択肢の中身をしっかり確認する必要

いちいち見るのも面倒だし、合っているから大丈夫だと思いがちです。ですが、もし問題文の中にある知らない語句や意味がわからない部分があれば、そこがほかのところで問われる可能性もあります。

問題に使われている以上、関連性のある情報であることは確かです。間違いの選択肢も含めて、すべて自分にとって重要な知識だと思っておいたほうがいいでしょう。

また、基本的に出題者は、解く側の理解度を判別するために問題を作っています。知識があやふやなままでは攻略できないように、巧みに選択肢の中に罠を仕掛けているのです。そのトラップに引っかからないようにするためには、こちらも知識で対抗するしかありません。

どうやってこちらを誘導しようとして、何と間違えようとさせたのかがわかるようにするためにも、選択肢の中身をしっかり確認する必要があるわけですね。

そうして目指すのが、3つ目の「正解した問題は空欄や選択肢がなくても解けるようにする」レベルです。やってみるとわかりますが、空欄や選択肢があれば正解できた問題でも、一から自分で答えを書き出すのは意外と難しいです。理解があいまいだったり、知識のつながりが抜けているところがどうしても出てきたりするからです。頭のいい人はこれを逆手にとって、空欄補充や選択問題で正解しても安心せず、記述形式で再度トライします。

特に東大入試はほとんどが記述問題のため、この勉強法をやっていた東大生は多いです。中でも現代文は難しく、市販の問題集でも適したレベルや形式のものが少ないので、共通テストやセンター試験の過去問を利用して、選択肢を見ずに記述で解く練習をしていたという話はよく耳にします。

私も現代文を含め、さまざまな科目でこの勉強法を実践してから、かなり実力が伸びました。文章にするとごまかしがきかないため、たまたま正解できたのか、それとも本当にわかったうえで解けていたのかがよくわかるのです。

「成功も成功のもと」

よく「失敗は成功のもと」と言いますが、私は「成功も成功のもと」であると思っています。

一度の成功を偶然で終わらせるか、きちんと振り返って再現性を高められるかどうかは、大きな違いですよね。マンガにあったように、正解したところまで確認して復習すればもちろん時間はかかりますが、それだけの価値はあるでしょう。

失敗と成功のどちらも精査することで、確かな力に変わるはずです。答え合わせのときに間違えたところだけフォーカスしていたという人は、ぜひ試してみてください。

(青戸 一之 : 東大卒講師・ドラゴン桜noteマガジン編集長)