国内家具最大手のニトリだが、海外比率はまだ低水準にとどまっている(撮影:今井康一)

家具小売りの国内最大手・ニトリが試練に直面している。

ニトリホールディングスは11月10日、今2024年3月期中間期(4〜9月)決算を発表した。連結売上高は前年同期比1.5%減の4168億円、営業利益は同20.1%減の551億円だった。会社計画に対し、本業のもうけとなる営業利益は90億円の未達となり、それぞれニトリ事業が85億円、島忠事業が5億円を下回った。

【2023年11月20日10時30分】初出時の業績の説明について一部に誤りがありました。上記の通り修正いたします。

今2024年3月期通期では、売上高が同1.7%減の9320億円、営業利益は同3.6%増の1451億円を見込んでおり、期初予想を据え置いている。

円安影響で247億円の減益

最大の誤算は、何といっても足元の円安だ。商品の9割以上を海外で生産するニトリでは、対ドル1円の円安で年間約20億円の利益が吹き飛ぶ。通常は為替予約を利用しているが、今期についてはスポットレートで決済を行っている。


決算説明会で似鳥昭雄会長は「日本国内はあと数百店で出店余地がなくなる」と語った(記者撮影)

今2024年3月期の為替レートについて、ニトリは1ドル=130円前提で会社計画を立てている。しかし4〜9月の仕入れでかかった為替レートの平均は144円72銭と、当初の目算から大きく狂った。この影響で経常利益ベースで247億円の減益要因(2022年3〜8月期対比)となった。

強烈な円安の逆風を受けて、ニトリも対応を進めている。新商品開発や原材料・生産地の変更などを軸に進める商品入れ替えを行うことで、今上期の粗利益率は3.6ポイント改善した。

同社の似鳥昭雄会長は「1ドル=155円の前提で商品開発をしている。今後も(ニトリ商品の約半数にあたる)6000SKUの商品変更を行っていく」と語った。年明けには新生活向けの商品が増える。円安前提で開発された商品は、12月末以降から店頭に並んでいく予定だ。

今後の為替レートに関して似鳥会長は、2024年中には円高に転じるとの見方を示した。「今までは2年〜2年半の長期で為替予約をしていた。昨年は皆さんの意見を聞きながら短期で為替予約をしたが、結果は大失敗。やはり短くても1年単位で取らないといけない。今のところ1ドル=155円以上(の円安)になることは考えていない。次、為替予約をするなら1ドル=120円以下か」(似鳥会長)と振り返った。

今2024年3月期下期に向けては、前述の粗利益対策に加えて、購買客数についても挽回を図っていく必要がある。4〜9月の既存店客数は前年比で91.7%に沈んだ。

ニトリは2022年秋に値上げを実施後、客数減が続いている。キッチン用品などが堅調だった一方、残暑が長引いたことで布団などのファブリック類が伸び悩んでいる。

今後は販促に一層力を入れることで客数回復を目指す。12月には値下げキャンペーンを実施し、昨年よりも対象アイテムを増やしていく。新商品周知のため広告宣伝も強化し、前下期より7本多い34本のテレビCMを放映する予定だ。

「ユニクロさんのように海外で稼ぎたい」

また、海外戦略についても抱負を語った。海外で最も多く出店している中国は不動産不況のあおりで苦戦が続くが、8月出店のタイ1号店、9月出店の香港1号店をはじめとした初出店地域でニトリ商品が好評を得ており、想定以上の売り上げが見込めるという。今後も韓国やベトナムで初出店が控えている。

これまでは国内を主軸に高い成長を続けており、2022年2月期まではコロナ禍での巣ごもり需要の恩恵も受けて、35期連続の増収増益(経常利益ベース)を記録した。だが特需が落ち着いてからの成長率は鈍化。前2023年3月期は決算期変更を行ったことで13カ月11日間の変則決算となったが、円安や貿易費用の高騰、減損損失などが原因で最終利益は減益だった。

似鳥会長は「日本国内はあと数百店で出店余地がなくなるが、海外なら無限。早い段階で(国内外の合計)年200店、2025年以降は年250店の出店ができるようにならないと。ユニクロさんは海外の店舗数が国内の2倍になっている。うちもユニクロさんを目指して海外の店を増やしたい」とビジョンを語った。

もっとも、ニトリ事業売上高に占める海外の構成比は4.9%(2023年4〜9月期)で、利益貢献もまだ少ない。これから前半の遅れを挽回するには、柱の国内ニトリ事業が肝心となる。円安を打ち返して増益を達成できるのか、試練の冬となりそうだ。


(山粼 理子 : 東洋経済 記者)