国際貿易で人民元建ての取引が増えている。写真はロシア向け貨物が急増した中国とヨーロッパを結ぶ国際貨物列車「中欧班列」(中国国家鉄路集団のウェブサイトより)

世界の貿易取引で中国の人民元の存在感が増している。中国人民銀行(中央銀行)が10月27日に発表した2023年版の「人民元国際化報告書」によれば、2023年1月から9月までの人民元建てのクロスボーダー決済額は38兆9000億元(約795兆円)に上り、前年同期比24%増加した。

また、外貨建てを含めたクロスボーダー決済の総額に占める人民元建て貿易決済(サービス貿易を除く)の比率は24.4%に達し、前年同期比7ポイント上昇して近年の最高水準を記録した。

ユーロ建てを再逆転

輸出入業者に決済までの資金などを融通する貿易金融の面でも、人民元建ては(首位のドル建てに次ぐ)第2位に浮上した。国際銀行間通信協会(SWIFT)が発表した9月のデータによれば、世界の貿易金融に占める人民元建てのシェアは5.8%と、前年同月比1.6ポイント上昇。これまで第2位だったユーロ建てを上回った。

人民元建て貿易金融の世界シェアは(10年前の)2013年10月に8.66%を記録し、初めてユーロを超えて第2位になったことがある。だが、その後はシェアが低下し、2015年10月にはユーロに逆転を許していた。

中国人民銀行の報告書は、資金調達通貨としての人民元の利便性が着実に向上したことを背景に、「パンダ債」(訳注:外国企業などが中国市場で発行する人民元建て債券)の発行が増加していることも強調した。


「パンダ債」の1〜8月の発行総額は前年同期比6割近く増加した(写真はイメージ)

海外の発行体が中国市場で発行したパンダ債は、2023年8月末時点で合計434本、累計発行総額は7402億2000万元(約15兆1303億円)に上る。それらのうち(直近の)2023年1月から8月までの発行総額は1060億元(約2兆1667億円)と、前年同期比58.2%増加した。

オフショア人民元市場も活発

外国の企業や金融機関による人民元建て資金調達の増加とともに、中国の外為市場の取引額も増加している。中国人民銀行の報告書によれば、2022年の中国の銀行間外為市場における外国銀行の取引の88%が債券投資関連の取引だった。


本記事は「財新」の提供記事です

オフショア市場の人民元建て取引も活発化している。世界の主要オフショア市場における人民元建て預金の残高は、2022年末時点で約1兆5000億元(約31兆円)と過去最高のレベルに増加している。

(財新記者:王石玉)
※原文の配信は10月29日

(財新 Biz&Tech)