物価高倒産 月別発生件数 推移

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「物価高倒産」動向調査(2022年10月)

 10月の物価高倒産は41件判明し、月間最多だった9月(35件)をさらに上回り、4カ月連続で月間最多を更新した。10月には、今年最多となる6700品目の飲食料品が一斉に値上げされたほか、大手電力・ガス会社が利用料金を引き上げるなどエネルギーコストも上昇した。円安による急激な輸入コスト負担の増加も加わり、多方面に物価高の影響が広がっている。

 2022年10月に発生した41件を業種別にみると、「製造業」(12件)でトップとなり、なかでも「飲食料品製造」(7件)がもっとも多かった。以下、「小売業」(9件)、「運輸・通信業」(8件)、「建設業」「卸売業」(同5件)が続いた。業種詳細別でも「運輸業」(8件)や「飲食料品小売」(5件)が多く、燃料高や食品の価格高騰の影響を受けた業種が多かった。規模別にみると、「1億-5億円未満」が20件でトップ。次いで、「1億-5000万円未満」(10件)、「1000万円-5000万円未満」(8件)と負債額中規模の倒産が目立つ。2022年(1-10月)に発生した226件を業種別にみると、「運輸・通信業」(51件)が最も多く、全体の約23%を占めた。以下、「建設業」(49件)、「製造業」(44件)、「卸売業」(34件)が続いた。

 10月の全国企業倒産件数は594件と、低水準ながらも6カ月連続で増加した。中小・零細企業の多くは、コロナ禍で経営体力を消耗した末に倒産に至ったケースが多く、なかでも足元の物価高は「最後の一押し」となる要因の一つとして存在感を高めている。10月末に発表された政府の総合経済対策は歓迎される一方、足元の物価高に対して即効性があるかは不透明な部分がある。資金需要が例年高まり、かつ企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増加していく可能性がある。

「物価高」が最後の追い打ちとなる倒産、増加の一途をたどる
 帝国データバンクが9月に実施した「企業の価格転嫁の動向アンケート」では、コストの上昇分を販売価格やサービス料金に「多少なりとも転嫁できている」企業は70.6%であったのに対し、「全く価格転嫁できていない」企業は18.1%となった。物価高が続く状況下で、企業は取引先からの理解が得られないことや顧客離れを懸念し、価格転嫁に結びつけられていないのが現状だ。4カ月連続で月間最多を更新するなど前例のない水準で推移している物価高倒産だが、今後もさらなる増加傾向で推移していきそうだ。