競争激化を味方につける「逆手」の成長戦略とは?

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過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、2021年11月にIVS那須で開催された「起業家の別解力」をテーマとしたディスカッションの内容をお伝えします。

超レッドオーシャンの金融で起業した理由

甲斐真一郎(以下、甲斐) FOLIOの甲斐です。よろしくお願いします。私は2006年にゴールドマンサックスという証券会社に入社をして、かれこれ10年ほど金利のデリバティブのトレーダーをやっておりました。

そういった経験を経て、2015年の12月にFOLIOという証券会社を創業しました。これはフィンテックの領域が話題になりだしたくらいの時期です。2021年の頭ぐらいに、初めてB向けのSaaS事業を展開し始めました。これがまさに今回のテーマである、僕の別解力というものの具現化されたものです。

売り上げ成長というところでいうと、われわれ証券会社は、創業からローンチまで大体ざっくり1年半ぐらいかかるんですね。ローンチしても、広告宣伝費やシステム投資など非常にお金がかかる。ご案内の通り、証券業界は非常に競争環境が厳しい領域です。フィンテックブームとはいえ、当然既存の強い競合他社がいるわけです。競合が既に大きな経済圏と資本を持っている中で、我々もユニークなアプローチと、資金力が必要だった。そんな状況下で、2018年1月の70億円の調達まで、ほぼ売り上げゼロの中、累計91億円の調達をすることができた。

ただ、このお金をうまく使って、売り上げを上げていければよかったんですけど、実際のところ売り上げが伸び悩んだ。どれだけシステム投資をしても、宣伝広告をしても、サービスがマーケットフィットしなかった場合、その時点で終わってしまう。C向けの金融サービスは初期投資が大きいので、ダメージは非常に大きい。

その伸びの鈍さがあったがゆえに、実績としては売り上げがKPIを大きく劣後してしまう。組織にも急激に大きくなっていた時期でしたから、カルチャーの醸成もうまくいかない。そんな中で、2019年半ばから2020年の頭ぐらいに、離職率が30%を超えるというとんでもない組織崩壊が起きたんです。幸い、そういったところを乗り越えて、今、離職率は一桁台をずっと維持していて、売り上げも年率で400%程度成長しており、かなり伸びています。

B向け事業の立ち上がりと時期を同じくして、我々はSBIグループに入らせていただきました。現状は連結子会社として、全く組織体制も変わらずIPOを目指しています。

平尾丈(以下、平尾) 実は甲斐さんが創業されたあたりのときに、私もフィンテックを立ち上げたくていろんなベンチャーキャピタルを回っていったんですけど、100億も私は調達できる感じはなかったんですね。これって何が決め手なんですか。

甲斐 多分21億円のところまではパワポ、つまり事業構想とメンバーで調達できる領域だと思っていて、最後の70億円の調達ですね。これは、正直LINEさんとの事業提携が大きかった。当時は時勢も良くて、Alipayやカカオペイが海外で強く成長していた。そのタイミングで、ちょうど資金調達に入っていた我々は、LINEさん用にしっかりと連携の構想をモックアップとして作りました。パワポではなく動くプロトタイプで、連携の構想を伝えた。そこで強いシナジー効果を認めていだき、最終的には資本業務提携に行き着いた。結果としてそのラウンドで70億円の出資を受けることができたんです。

平尾 日本で一番大きいVCに「3社ぐらい似たようなことやろうとしてるんだよ」と言われたことがありましたが、1社は甲斐さんだったということですね。

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