iPadのバッテリーはどの程度もつのか?

iPadは人気の高いタブレットだ。パソコンやスマートフォンと比べるとタブレットのシェア自体は数%台で推移しており、パソコンやスマートフォンを置き換えるデバイスではない。しかし、ネットサーフィンやメッセージング、スマート電子メモ、メールチェック、SNS、読書、資料ストレージ、グラフィックなど、人によっては欠かすことのできないデバイスだ。

iPad Pro


最近のノートPCは小型で軽量である上高性能だが、iPad Airといったデバイスはそれよりも軽く持ち歩きやすい。読書が目的ならiPad miniは最高の体験を与えてくれるデバイス。どこへでも持っていってさっと使える。これがiPadの魅力の一つだ。

このiPad、どの程度バッテリーがもつかだが、本稿執筆時点でAppleが提供しているデータをまとめると次のようになる。どのモデルもCellularモデルなら携帯電話データネットワークでインターネットを利用した場合は最大9時間とされている。

もちろん、これは使い方による。最大の時間で使える条件が公開されていないのでなんとも言えないが、参考までにAppleがiPhoneの駆動時間として提供しているデータをまとめると次のようになる。

iPadのほうが搭載されているバッテリーサイズが大きそうなので使用時間も長そうだが、その分ディスプレイも大きく消費電力も多い。使用時間としてはiPhoneのほうが長い状況になっている。

使えば劣化するリチウムイオンバッテリー

自宅で使うのがほとんどという場合は別として、iPadを持ち運んで使っているなら、バッテリーのもちは長いほうがいい。しかし、iPadが使っているリチウムイオンバッテリーは消耗品であり、使うことで必ず劣化する。これはリチウムイオンバッテリーの物理特性なので、どうにもならない。使って充電をすればそれだけ劣化する。それがリチウムイオンバッテリーなのだ。

iPadも例外ではなく、バッテリーのフル充電相当の充電回数が増えれば増えるほど、劣化が進み、最大充電容量が減っていく。2年や3年iPadを使っていると、徐々にバッテリーがもたなくなったなと感じるようになると思うが、気のせいではなくそれが適切な状態だ。

リチウムイオンバッテリーの劣化を避けることはできないが、リチウムイオンバッテリーの特性を知ることで少しでも延命を図ることはできる。リチウムイオンバッテリーは現代ではさまざまなデバイスで使われている。その特性を知って適切な運用を行うことは、iPad以外のデバイスにも応用できる。デバイスはその特性を正しく理解し、適切に運用していくことが肝要だ。

デバイスを適切な状態で使ってできるだけ長く快適に使ってもらえればと思う。以下、リチウムイオンバッテリーのもちをよくする方法を紹介していく。

バッテリーに快適な温度で使う

リチウムイオンバッテリーは温度で劣化する。Appleは最適な範囲を16度から22度まで定めている。人間が快適と感じるくらいの温度が、iPadもバッテリーにとっても快適な温度だ。稼働温度範囲は0度〜35度としているが、できるだけ最適な範囲内で使ったほうが劣化を抑えることができる。

なお、35度以上で放置するとバッテリーが損傷する可能性が高くなる。さらに、この状態で充電を行うと劣化がさらに進むこともわかっている。「夏の暑い時期に直射日光の当たる窓際に置く」「車のダッシュボードに放置する」「冬に暖房器具の近くや暖房器具の上にiPadを放置する」といったことをするとバッテリーの劣化が進む危険性が高くなる。

0%、100%にしない

自宅で使っている場合など、常に電源に接続した状態でiPadを使うことも多いだろう。しかし、これはリチウムイオンバッテリーの品質維持の観点からするとよくない。リチウムイオンバッテリーは0%でも劣化するし、100%でも劣化する。常に電源に接続した状態にすると、ちょっとバッテリーが使われるとすぐに充電が行われる。100%が維持される上、充電が行われてバッテリーの劣化も進む。できれば避けたい使い方だ。

充電が80%に到達したら充電を停止するといったような設定はパソコンによっては提供されている。iPadではそうした機能は提供されていない。AppleはiPadOSの機能を工夫することで、以前よりもバッテリーの劣化が進まないようにしているものの、充電の上限は80%くらいと覚えておくとよいと思う。バッテリをもたせる方法の一つとして、いつまでも接続しておかず、80%程度になったら電源を抜いて使ってみてもよいだろう。



なるべくバッテリーを使わない

リチウムイオンバッテリーはいつ充電しても問題ない。40%から充電を開始してもよいし、60%で充電を開始してもよい。充電した分を加算していって100%分に達したらそれを1回分のフル充電とし、フル充電が何回できるかというのが、設計上のリチウムイオンバッテリーの寿命ということになる。

フル充電相当の充電回数が少なくても、劣化が進んでいれば想定している寿命よりも短くなる。これはリチウムイオンバッテリーの物理特性なのでどうにもならない。いずれはバッテリーを交換する必要がある。

なるべく寿命を延ばすには、なるべく充電を行わなければよいということになる。電源を接続している間はバッテリーを使わないで電源で駆動するといったことができればよいが、その設定はiPadではできない。本稿執筆時点でなるべくバッテリーを充電しないようにするには、消費電力を減らす努力をするしかないということになる。いくつか方法があるが、手っ取り早いのは「低電力モード」で使うことだ。低電力モードは設定アプリから有効化できる。

設定アプリ:「バッテリー」→「低電力モード」→「オン」

低電力モードを有効にすると、なるべく電力を消費しないような動作に変わる。このモードを簡単に有効化できるようにしたいなら、次のように設定を変更してコントロールセンターに登録しておくとよい。

設定アプリ:「コントロールセンター」→「コントロールを追加」→「低電力モード」→「+」

こうしておけば、コントロールセンターからワンタッチで低電力モードを有効化できる。

しかし、低電力モードは、充電して一定のレベルを超えると自動的に無効化される仕組みになっている。これでは、永続的な低電力モードの使用は期待できない。

低電力モードを「常に」オンにする設定

iPadではショートカットアプリの「オートメーション」機能を使うと、「低電力モードを有効化する」処理を自動化することができる。この機能を使うと「低電力モードがオフになったときに、低電力モードを設定」という動作を自動的に行わせることができる。これで実質上、常に低電力モードを有効化することができる。

設定は次のように行う(なお、ショートカットアプリが見つからない場合にはApp Storeからインストールしよう。ショートカットアプリはAppleの提供する純正アプリだ)。

ショートカットアプリ:「オートメーション」→「個人用オートメーションを作成」


スライドさせて「低電力モード」を探す


「低電力モード」を選択


「いつ」の設定を変更する


「いつ」を「オフ時」だけチェックが入った状態にする


「アクションを追加」を選択


「低電力モードを設定」を選択


「次へ」を選択


「実行の前に尋ねる」を無効化する


「尋ねない」を選択


最終的に次のオートメーションが用意できたことを確認し、「完了」を押す。

内容を確認して「完了」を選択


設定したら動作を確認する。低電力モードを有効にしてから、これを無効化する。

低電力モードを無効化する


そうすると、次のようにオートメーションが動作したことを伝える通知が表示され、無効化した低電力モードがすぐに有効化されれば設定は成功だ。

オートメーションが実行されたことが通知される


低電力モードが再びオフになっていることを確認


低電力モードにした場合の動作は、低電力モードが無効になっているときとは異なっている。すぐにスクリーンが暗くなるなど、バックグラウンドの動作もより少なくなる。有効化してみて問題を感じなければラッキーだ。有効化して不便さを感じるようなら、元に戻そう。バッテリー寿命を延ばすために使い勝手が悪化しては本末転倒だ。

また、この設定を行うときは「実行の前に尋ねる」を「オフ」にしておくことがポイントだ。いちいち確認を求められては面倒でたまらない。

リチウムイオンバッテリーの特性を知って使ってみよう

消費電力を抑える方法はほかにもいくつかある。「ダークモードを使用する」「トラッキングを許可するアプリを最小限へ絞り込む」「スクリーンの明るさを抑える」といったことはよく行われている。iPadOSを常に最新バージョンにしておくことも推奨されている。Appleはバッテリーの使い方を改善する取り組みを続けており、新しいバージョンのほうがバッテリーの扱いがうまいと言われている。

リチウムイオンバッテリーは消耗品だ。購入当初の駆動時間を取り戻したいなら、いずれはバッテリー交換しなければならない。しかし、その物理特性を理解して推奨される使い方をすることで、さらなる劣化をなるべく防ぐことはできる。ちょっとしたことだが、積もり積もれば結構効いてくるものだ。

これまでリチウムイオンバッテリーの特性をあまり考えたことがないのであれば、これを機に取り組んでもらえればと思う。習慣化できればバッテリーへのダメージをこれまでよりも減らした使い方ができるかもしれない。