5Gで脳腫瘍リスクの真相は(写真はイメージです)

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 昨年3月に商用サービスが始まった第5世代移動通信システム(5G)。従来の4Gと比べて、超高速で大容量の通信を可能にするものだが、一部では「脳腫瘍の発症リスクが高まる」などと人体への悪影響を懸念する声も上がっている。果たして真相は?

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「現在5G対応のスマホを持っていても、対応エリアが限られているためになかなか『5G』の表示を見る機会は少ないと思います。しかし4Gで使っている周波数を5Gに転用する技術開発も進んでいるので、今年中には“一気に広がった”と実感することができるでしょう」(スマホジャーナリストの石川温(つつむ)氏)

 その5Gの電波を浴びると脳腫瘍に――と言われたらほとんどの人は「オカルトでしょ」と断ずるに違いない。しかし、

「5Gに関して私は重大な健康被害があるとは思いませんが、『サイエンティフィックアメリカン』という歴史ある雑誌のサイトでそのリスクが紹介され、NYタイムズでも記事として取り上げられている。欧州では健康被害を考慮し、スイスのように政府が5Gの使用停止を命じる国もあります」

5Gで脳腫瘍リスクの真相は(写真はイメージです)

 と、脳科学者の茂木健一郎氏は語る。

「単なるオカルトと言い切れない側面もあることから、特に欧米を中心に恐怖を感じる人は多いようです。イギリスでは昨年、『コロナ蔓延の原因は5Gの電波』といった陰謀論が広まり、実際に放火されてしまった基地局まであるほどです。もちろんコロナとの関係はデマの域を出ません」

 先の石川氏によると、

「5Gには大きく分けて2種類の電波があります。一つは『Sub-6』(サブシックス)と呼ばれる、従来の4Gに近い周波数のもの。もう一つは『ミリ波』と呼ばれる高い周波数のものです。『ミリ波』は、『Sub-6』に比べ電波が届く範囲は狭いものの大量のデータを超高速で送受信することができる電波です」

「迷信」

 従来の3Gや4Gでは使われなかった「ミリ波」が、5Gでは初めて使われる。それが人体への悪影響を心配する声に繋がっているようだが、

「ミリ波が健康被害を及ぼす、といった話は迷信の類だと思います」

 石川氏はそう話す。

「以前、基地局などを作るスウェーデンの大手企業『エリクソン』の方に電波の健康被害について質問したことがあります。その人は『アンテナに張り付いて生活するなら何らかの影響があるかもしれないけど、普通に生活していて影響があるとは考えにくい』と言っていました。やはり危険性としてはその程度のものということだと思います」

 そもそも、電磁波や電波が人の健康に影響を及ぼすのか否かというのは、実に半世紀も前から続いている論争だといい、技術評論家の桜井淳(きよし)氏によれば、

「欧米では高圧送電線に近い地域に住む子供には小児白血病が多いという研究が発表され、それをきっかけに大きな論争に発展しました。その後、こうした研究結果を多くの専門家が検証してきましたが、明確な因果関係が示されたことはありません。人間は目に見えないものに対して非常に大きな不安を抱きます。同時に、そうした不安を煽るような情報こそ広く出回るものなのです」

 そしてコロナ同様、一旦「恐怖脳」に陥ると抜け出すのは容易ではないのだ。

「週刊新潮」2021年3月25日号 掲載