ビジネスの究極系はディズニーと言えるその理由とは?(写真:MN Chan/Getty Images)

2025年に世界を席巻している企業はどこかと聞かれたら、だれもがGAFAと答えるでしょう。彼らは1つの業種だけでなく、多岐の業種にわたる「コングロマリット化」によって、世界を席巻しています。

しかし、それによって成功しているのはGAFAだけではありません。ディズニーも映像だけではなく「コングロマリット化」を成功させています――そう語るのは『2025年を制覇する破壊的企業』の著者であり、ビジネスとテクノロジーをつなぐベンチャーキャピタリストである山本康正氏です。同氏いわく「ディズニーはビジネスの究極系」ということ。どういうことなのか。同氏に聞きました。

コロナが業界全体の進化を加速

コングロマリット化を実行し、成功している企業の1つ。それはディズニーこと、ウォルト・ディズニー・カンパニーです。

ディズニーはもともとテーマパークとアニメーションからビジネスをスタートさせました。その後、グッズ販売や3Dサービスなども展開していきますが、アマゾンのように、すべてのタッチポイントでお客様を満足させています。

ディズニーという共通の世界観で、どのような業態にあっても消費者を満足させている。企業にとって何が大事なのか、ディズニーはまさしく体現していると思いますし、これから先の未来でも生き残る、数少ない企業だと言えます。

GAFAももちろん、映像業界に参入しています。アマゾンであればアマゾンプライムビデオ。グーグルはユーチューブ。フェイスブックはインスタグラムです。これらGAFAが映像ビジネスを行ううえでのトレンド、キーワードは何か。人工知能を活用したレコメンデーションです。

たとえば、プライムビデオで観ていた映画に登場していた女優さんの衣装がおしゃれで欲しいと思ったとします。それが2025年には、ボタン1つで購入できる。そんな世界です。

実際、フェイスブックはインスタグラム上で近い物販サービスを展開しており、いま紹介したようなサービスが、2025年までには形になっている可能性は高いです。

映像業界のトレンドは、私がイメージしていたよりもかなり前倒しで実現しています。新型コロナウイルスの影響です。それまでは一部の人しか使っていなかったビデオ会議ツールなどを、多くの人がリモートワークで使うようになったためです。

外出自粛要請で先の動画サービスなど、自宅で楽しめるコンテンツの需要が高まったことも要因でしょう。人工知能、とくに画像解析技術であるディープラーニングの精度が高まってきた時期でもありました。これらの状況から、2025年ごろに起きると考えられていたトレンドが、いま起きているのです。

ビジネスのやり取りも、Zoomなどのビデオ会議ツールを通して行う機会が増えました。その際、先方とのやり取りの動画を人工知能で解析し、どのような話し方や表情をすれば、相手に好印象を与えることができるのか。営業であれば、成約につながるのか。このような分析を行うことが可能になってきます。

お笑いタレントや歌手、アイドルがオンラインでライブ配信を行う際も同様です。どのような仕草や表情をすれば、視聴者に受けるのか。投げ銭のようなアクションをもらえる際の、自分の表情、仕草はどういったものなのか。動画を解析することで、わかることは大いにあります。

コミュニケーションをより円滑にするサービスが続々と

コミュニケーションを円滑にするサービスも今後のトレンドです。Zoomのバーチャル背景のようなサービスです。

資生堂は、実際は化粧をしていないのに、映像で見るときちんと化粧をしているような表情でビデオ会議が行えるツール、「TeleBeauty(テレビューティー)」を開発していま す。

この流れでいえば、洋服や髪型もセットすることなく、装った状態で相手に映る。極端に言えば、寝起きで頭はボサボサ、顔も洗っていないTシャツ姿といった状態にもかかわらず、画面ではビシッとスーツにネクタイ姿で髪型もばっちりで、肌ツヤも良好。そのような状態に、デフォルメすることが可能です。

装いだけではありません。オンラインでカメラを使ったコミュニケーションでは、相手と話す際にカメラを見たらいいのか、それとも画面上に映っている相手の顔を見たらよいのか、意外と悩む人が多いと思います。

本当は相手の表情を見て話したいけれど、それだと相手に映る自分の表情の目線がズレてしまう。そう、考えるからです。このような目線の補正も、今はまだ提供している企業はありませんが、現在のテクノロジーを活用すれば、可能です。

この手のニーズはまだまだありますから、ビジネスチャンスを見出した企業が、資生堂のように他の業界から壁を乗り越え参入してくることは、大いに考えられます。

オンラインコミュニケーションで必須のデバイス、イヤホンやスピーカー関連のビジネスも活気づくでしょう。イヤホンを装着していなくても、まるでしているかのように音声が届く、指向性の強いスピーカーなどです。

あるいはその逆、まるでその場にオンライン先の人たちがいるような臨場感漂う3Dサウンドを流すスピーカーなども、2025年には発売されているかもしれません。

AR、VR、MRを実現するヘッドセットやメガネにも注目しています。実際、マイクロソフトが開発したMRデバイスのホロレンズを装着すれば、目の前に人がいるような感覚で、コミュニケーションが行えます。ただホロレンズは現在数十万円もする高価なデバイスです。そのため安価なARやVR デバイスを活用したサービスが先にトレンドとなるのかどうか、そのあたりの動向も見ものです。

ディズニーの「動き」をジブリや任天堂でも?

VRに関しては、冒頭の未来予測小説で登場したフェイスブックのホライズンというサービスやマイクロソフトがマイクロソフトメッシュというサービスを発表したりと、サービスのクオリティも含め、各社ならびに技術・サービスの動向にも注目しています。


映像業界でもう1つ注目しているのが、ディズニーのような動きを、ジブリや任天堂が行えるのではないか、ということです。日本のアニメーションやゲーム、とくにジブリや任天堂は世界に通じるコンテンツです。

それぞれのアニメやゲームが持つ唯一無二の世界観が実現できるコンテンツは、映像やゲームでなくとも、間違いなくユーザーから評価されるでしょう。逆の言い方をすれば、 映像だけで終わらせるのはもったいない。

「スーパー・ニンテンドー・ワールド」は3月18日にユニバーサ ルスタジオジャパンを皮切りにフロリダ、ハリウッド、シンガポールにオープンする予定です。2022年に名古屋で開業予定の「ジブリパーク」の動向にも注目していますし、その後のトレンドの基点になるでしょう。