福岡は15人制の代表からの引退を明言【写真:荒川祐史】

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2度目のW杯は「集大成」、7人制専念へ…変わらなかった「ここが最後」

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は20日、東京スタジアムで準々決勝の第4試合が行われ、日本は南アフリカに3-26と敗れ、散った。松島幸太朗との俊足WTBコンビで、世界の強豪から“フェラーリ”と警戒された福岡堅樹は、今大会を最後に15人制代表から引退。「ここまで頑張れたのは、ここが最後だからです。後悔はありません」と潔くジャージを脱いだ。

 その決意は固かった。2015年に続き、自身2度目のW杯。開幕直前に右ふくらはぎを負傷し、開幕戦のロシア戦こそ欠場したが、途中出場したアイルランド戦とサモア戦では1トライずつ、先発したスコットランド戦では2トライを挙げ、世界トップのディフェンスも翻弄する機動力とスピードで“フェラーリ”級の存在感を見せた。チームとして目指したベスト8も達成。その先の景色を見たい衝動に駆られてもおかしくないが、「ここが最後」という予定は変わらなかった。

 子供の頃からの夢だった医師を目指すため、2020年東京五輪での7人制代表を最後に、競技者としてのラグビーに終止符を打つ。15人制代表は今大会が最後。「ここまでやるって決めていたからこそ、きつい時も頑張れましたし、怪我からも前向きに努力できた」と後悔なき代表引退の理由を明かした。まだ27歳。グラウンドを駆け抜ける姿をもっともっと見続けたいと周囲に思わせながら、人生の新章へ段階的にシフトしていく。

 試合後のミックスゾーンでは「集大成として自分らしいパフォーマンスができたいい大会になったと思いますし、日本としても目標が達成できて、胸を張れる結果になったんじゃないかと思います」と清々しく言い切った。大男が居並ぶラグビーの世界で、175センチの福岡が放った強烈な存在感。「サイズのない人たちがどうやってフィジカルな競技で戦っていくか。その希望になればうれしいです」と胸を張る。

 ラグビーに全力投球し、今度は医師の道に全霊をもって臨む。これまで例に見ない人生の選択もまた、多様化が進む現代に生きる人たちの“希望”や“道標”にもなりそうだ。

 試合が終わった後、東京スタジアムの芝生の上で大の字になって寝転んだ。

「もう終わったなって思って、ちょっと寂しくなりましたけど」

 早過ぎる引き際に、寂しさを覚えるファンも多いだろう。だが、福岡が残した功績や感動が消えることはない。その決意を称え、快く次のステージへ送り出したい。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)