サッリはこう説明した。

「メンバー選びは簡単ではなかった。2人の重要な選手を外さなければいけなかったので申し訳ないが、こうした困難はチームの強さの証明でもある。選手が難しく影響の大きな選択に直面した時に、感情的になるのは普通のこと。感情を吐き出す機会を与えないといけない。私はこうした反応を理解できる年齢だ」

 余剰人員に関する問題は、この後も噴出し続けるだろう。セリエA第3節終了時点でピッチに立ったのは昨シーズンまでの主力メンバーばかりで固定されており、新戦力のラビオやラムジーはもちろん、パウロ・ディバラ、フェデリコ・ベルナルデスキ、ロドリゴ・ベンタンクール、ダニエレ・ルガーニやメリフ・デミラルにはなかなか出番が回ってこない。当然ながら、ナポリ時代にローテーションをしなかったサッリに質問が飛んだ。

「今はチームの色を模索していて、現段階でローテーションを行うことは難しい段階にある。ナポリでは主力の14、15人の選手とそれ以外に差があったが、チェルシーでは18人の選手による積極的なローテーションを採用した。まだ完全に準備はできていないが、10人の入れ替わり可能な選手を揃えることが目標となる」

 そんな大きな目標を実現したとして、果たして本当に、すべての個が最大限に輝くチームを作ることができるのか。サッリが果たすべき仕事は非常に難解だが、逆に言えば、それをクリアするチームでなければCLを獲ることはできないということだろう。

“これまで”以上を実現するには?

 相変わらず、ユヴェントスのスロースターターとしての表情は今シーズンも変わらない。しかし今シーズンのユヴェントスは、どこか、なんとなく、いつもとは空気感が違う。チームマネジメントが空回りしている。現時点ではその印象が強いのだが、クラブは“これまで”を持続するだけではCLを獲れないと考え、抜本的な変化に向かおうとしている。

 主役はサッリだ。元銀行員という異色の経歴の持ち主にこれまでのユヴェントスになかった力があれば、もしかしたらユヴェントスは、スクデットを獲得し続けた過去8年間でどうしても手が届かなかったビッグイヤーに到達できるかもしれない。

文=細江克弥