「窓をあける」急落との関係とは

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ニトリホールディングス(HD)の株価が冴えない展開となっている。きっかけは2018年6月の既存店売上高が3か月ぶりに前年割れになったこと。その後、時系列は後戻りするが内容が好調な18年3〜5月期連結決算の発表があったものの、株価を反転させられないでいる。米国と中国欧州など世界の「貿易戦争」のあおりで輸出銘柄が不調ななか、投資家が買い進んだ内需株の中心的な位置づけだったが、転機を迎えた可能性もある。

ニトリHDが6月22日(金)の東証取引終了後に発表した6月の既存店売上高は前年同月比4.5%減だった(既存店売上高についてニトリHDは毎月20日締めの1か月分を発表している)。下げ幅は2016年12月以来、1年半ぶりの大きさ。天候不順で夏物が売れなかったという小売業界全体に共通する問題に直面したわけだが、前年を超えた4、5月は5%台の伸び率だっただけに、投資家は驚きをもって受け止めた。

花粉をからめとるカーテンのようなヒット商品も

株式市場が開いた週明け6月25日には当日高値が前週末安値を下回る「窓をあける」急落となり一時、前週末終値比5.5%(1065円)安の1万8280円まで下げ、終値は同1040円安の1万8305円。成長を続ける有力な内需株として投資家の人気を集める中、6月19日に上場来高値の1万9850円をつけたところで、その達成感もあって「買われ過ぎ」との見方も浮上していただけに、悪材料を見て一気に売りが膨らんだ格好だ。

こうした中でニトリHDは28日、2018年3〜5月期連結決算を発表した。売上高は前年同期比6.9%増の1576億円、営業利益は18.3%増の304億円、純利益は3.4%増の197億円で、増収増益。ニトリは商品の生産から物流、小売りまで手がけ、ほぼプライベートブランドで売り場を埋め尽くすことでコストを低減し、手ごろな価格を実現している。それを「お値段以上」と受け止める消費者の支持を得て成長を続けてきた。

決算の対象である3〜5月においては、年度変わりの引っ越しに伴う需要を取り込み、寝具やカーテン、家具、生活雑貨の売り上げを伸ばした。空気中の花粉をからめとるカーテンのようなヒット商品もあった。自社で手がける物流面では人手不足への対応として弁当無料配給などで人員つなぎ止めを図り、繁忙期の安定稼働とコスト削減につなげた。

「好材料出尽くしによる先行き不安」などの声

野村証券はこれを受けてニトリHDの目標株価を2万1000円から2万4000円に引き上げ、「人件費や物流費の上昇を継続的な経費削減努力で補ったことが奏功した」と評価した。一方、SMBC日興証券は6月28日発行のレポートで「原料費高などが粗利率の改善幅を圧迫している、との会社のコメントが気がかり」などの点を挙げ「ややネガティブな印象」とし、見方が分かれた。

とはいえ、内容を見る限りは株価が上昇へ反転する好材料となってもおかしくない決算。しかし、29日の株式市場では上昇する局面もあったが売り圧力が出てもみあう時間帯もあり、終値は結局前日比3.1%(550円)安の1万7280円で引けた。市場では「好材料出尽くしによる先行き不安」などの声が聞かれた。翌営業日となる週明け7月2日も全体が下げ相場とはいえ続落し、終値は前週末比4.9%(840円)安の1万6440円と、よりきつい下げとなった。2018年2月期まで31期連続で営業増益の勢いが止まったわけではないが、「高値不安」も感じられていただけに、足元の株価が調整局面に入っている。