縦への抜け出し、あるいはカットインからのドリブルでどれだけバルサ守備陣にダメージを与えられるか。乾にかかる期待は大きい。(C) Getty Images

写真拡大 (全3枚)

「メンディリバルに憧れている」 

 バルセロナの監督時代のジョゼップ・グアルディオラが、現エイバルのホセ・ルイス・メンディリバル監督への憧憬を口にしたことがある。当時は多くのクラブが、バルサに対して下がってカウンターのチャンスをうかがう戦い方を採用するなか、メンディリバルが率いるチーム(バジャドリー)は、果敢に前からプレスをかけてボールを奪いにいっていたからだ。
 
 その発言から8年の歳月が過ぎ、リスクを冒してでも前からプレスを掛けるやり方が「対バルサ戦術」として主流になった。前々節のエスパニョール、前節のヘタフェともに、そのやり方で勝点1をもぎ取っている。

 両チームとも、通常あそこまで前からプレスに行くチームではない。他のチームが相手ならリトリートで凌ぐところだ。しかし、バルサに自由にボールを繋がれると、マークがどんどんずれていき、味方のDFが強力な攻撃陣の前に裸にされかねない。あるいは、ボールを自由自在に回され自陣から一歩も出られない状態に陥りかねない。それらを避けるための前線からのプレスなのだ。

 もちろん、このやり方にもリスクがある。最終ラインを高く設定する必要があるから、裏を突かれればあっという間にリオネル・メッシやルイス・スアレスに、GKとの1対1の状況に持ち込まれねないのだ。

 引きっ放しで言わば“座して死を待つ”のか? それとも一発のパスで“瞬殺”されることを選ぶのか?

 メンディリバスは“プレス派”の元祖だ。2年前に話を聞いた際も、「どんな相手でも戦い方を変えない」と断言していた。守備は前からプレス、攻撃は縦に速いカウンター、得点パターンはサイドをえぐってのセンタリングで2トップを生かす――。

 となると、今週末ホームにバルサを迎えるエイバルの乾の役割は明確だ。
 
 2トップと連動しながらの忠実なプレス、ボールを奪った時の素早い縦への抜け出し、敵陣深くからのクロス、またはカットインで進入してシュート性のセンタリングを送る。

 背後を守る左SBのホセ・アンヘルが、リーガのアシストランキングでDFのトップ(7)に立つほど好調であるため、センタリングは彼に任せ、乾は内にカットインする2つ目のオプションが増えるかもしれない。

 2人の縦関係で崩せない場合は、いったん戻し、逆サイドまでつないで、やはり好調を維持する右サイドアタッカー、ファビアン・オレジャーナからのサイドチェンジを待つ。逆サイドからのピンポイントのロングパスを、足の甲を使う柔らかいトラップでピタッと収め、「オー!」と感嘆を誘ってから、内に向かってドリブルを開始し、フェイントから右足でシュートを放つ――そんな光景が目に浮かぶようだ。

 実際、昨シーズンのカンプ・ノウではこうしたプレーで乾は2ゴールを挙げ、エイバルは歴史的な勝利を達成する寸前までいっている。
 もっとも、バルサのエルネスト・バルベルデ監督もその試合は研究済みのはずで、あの苦戦の二の舞を演じるつもりはないだろう。

 クリスマス休暇以来はじめて1週間のインターバルを経たチームには、前節出場停止だったサミュエル・ウンティティと故障の癒えたジェラール・ピケが帰って来る。つまりバルサは、主力にケガ人も累積警告者もおらず、ベストメンバーが組める状態なわけだ。

 加えて、乾とマッチアップするバルサの右サイドの守備力は、あの2ゴール時と比べて大幅に向上した。

 4-3-3システムを採用していた昨シーズンは、3トップの右に入っていたメッシが守備をせず、乾に圧倒された右SBのセルジ・ロベルトが前半だけで交代させられたのは記憶に新しいところだが、今シーズンは4-4-2が主流。右サイドはフィジカルの強いパウリーニョと右SBで守る形が主流で、おそらくエイバル戦も、脅威である乾を止めるためにバルサはこのシステムを採用してくるだろう。