清宮幸太郎(早稲田実業)の打撃の秘密は左腕の使い方にあり

写真拡大

 現在の高校野球界のスターである清宮 幸太郎。3月25日の練習試合で、高校通算27号、28号本塁打を放ち、改めて凄さを見せつけた。今回は清宮の特異な技術を紹介するとともに、この冬の取り組みにも迫った。

清宮は普通の右投げ左打ちの打者と比べて左腕の使い方が秀逸

清宮幸太郎(早稲田実業)

 「右投げ左打ちの選手はここ10年の動きを見ると、敬遠されている傾向にありますけど、清宮君の場合、それは関係ないんじゃないですか」と語るのが聖光学院の斎藤監督だ。それにしても清宮の当たりは凄かった。

 聖光学院戦で放った高校通算27号本塁打。低めのストレートだった。打った瞬間、外野手が一歩も動けない豪快な当たりだった。この試合、本塁打が多く出ていたが、他の選手は「行きそうかな、行きそうかな、入った」という感じだが、清宮の場合は打った瞬間、「文句なし!」と確信できるものである。聖光学院の斎藤監督は特にバッテリーに指示を出していないようだが、「全国トップクラスの清宮君がどんなものか、試してきなさいと話しました。攻め方を見ると、結構厳しくついていたのではないでしょうか」確かに打席を振り返ると、聖光学院戦の第2打席で詰まりながらもセンター前ヒット。この打席を見て、斎藤監督は、「彼が凄いのは右投げ左打ちながら、左肘の使い方が上手く、左脇がなかなか出てこないんです。普通の打者では早く回ってしまうんですけど、彼の場合、綺麗に畳むことができていて、インコースに対しても厳しいコースが来ても押し込んで打ち返せる強さがあります」左腕の使い方を評価していた。

 右投げ左打ちの選手は、スイングするときに左脇が空いてしまい、ロスのあるスイングになってしまうことが多い。斎藤監督によると、「右打者は右ひじを畳んでインパクトに持っていきやすいのですが、特に右投げ左打ちの選手は左肘が空きやすい。右利きですから、左が上手く使えないのは仕方ないことなのですがただ、清宮君は右利きであの技術力の高さですからね。潜在的に左利きなのか。それともご家庭でそういうトレーニングをやっているのかもしれませんね。私は甲子園、U-18、国体で清宮君を見てきましたが、やっぱり別格だと思いました」と斎藤監督も脱帽の打棒を見せた。

 今まで清宮の打撃を見ていくと、リストが早く返りすぎず、上手くボールを手元まで呼び込んで打っていた。その時、打つ直前の左肘の動きを見ると引っ張るか、逆方向に打ち返すか、その打ち分けができていたのだ。これは特異な技術といっていいかもしれない。

 2本とも豪快な当たりだったが、それは昨秋、しっかりとトレーニングした影響だと語る。「体重はそんなに変わっていないと思いますけど、筋力量を上げることを意識していろいろやってきました」と意識高くやっている。また筋力トレーニングをすると、体が重くなってしまうのではないかと懸念する選手もいるようだが、清宮はそれを否定し「それは重くなるようなトレーニングをやっていると思いますし、僕はそうならないようなトレーニングをしてきました」とさらりと答えた。取材時間に限りがあったため、ではどんなトレーニング、どういうところを意識してやってきたのかは伺えなかったが、今年の清宮は走攻守の動きがだいぶシャープになっているのを見ると、それはできたといえるだろう。

 清宮はスイング軌道自体、リトル時代から変わっていない。コンパクトなスイングでボールを捉える中でも、筋力アップにより、さらにボールを飛ばす力がついてきている。1年の時から金属バットは彼にとって鬼に金棒だと思っていたが、その思いはより強くなっている。

 初戦は4月2日。去年よりも凄くなった姿を多くのファンに見せてくれるはずだ。

(文=河嶋 宗一)

注目記事・2016年度 春季高校野球大会特集