「終った直後に2打増えるなんて、最悪!」とガックリのウィー (Photo JJ.Tanabe)

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 全英女子オープン2日目は「バンカー・デー」の赴きだった。単独首位でスタートしたジュリー・インクスターは、初日に「もっと天候が荒れると思っていたのに……」と物足りなさそうに語っていただけあって、寒さと風が増した2日目もしぶといゴルフで首位を維持。しかし、女王アニカ・ソレンスタムはバンカーに悩まされ続け、ミッシェル・ウィーはバックスウィングでソールしたことが判明し、2打罰の憂き目にあった。日本の賞金女王、不動裕理も終盤はバンカーにつぐバンカー。そして、宮里藍と同組のカーリー・ウエブは初日に引き続き2日目もバンカーから逆向きに出さざるを得ない状況が連続し、最後は集中力も完全に切れて14オーバーの大叩き。天候そのものは、まだ大荒れではないが、選手たちのゴルフの内容は、予選ラウンドだけで早くも荒れ模様だ。

 ウィーの「バンカー事件」は14番ホールで起こった。左ラフから打った第2打がグリーン左のガードバンカーへ。ボールの5センチ手前(右側)にコケのかけらがいくつかあった。第3打を打とうとしたウィーがテークバックしたとき、クラブのソールが、まずボールとコケの間の砂に触れ、次にコケに触れた。この時点で、すでにルースインペディメントに触れたことになる。ウィー自身、「コケに触ったのはわかっていたけど、そのままスウィングを続けて打ち終えればルール違反にはならないと思った」とのことで、彼女はそのままバンカーショット。3オン、2パットでボギーだと信じていた。だが、テレビに大写しになったそのシーンを見て「ルール違反だ」との指摘が起こった。何も知らないウィーが15番、16番と進んでいくにしたがい、彼女のルール違反は明白になり、18番をホールアウトした後、アテストテント内で2打罰が言い渡された。結局、14番はボギーではなくトリプルボギーにあらためられ、2オーバーフィニッシュだと思い込んでいた通算スコアは4オーバーへ。憮然としたウィーは「16番、17番のパーセーブが無意味になっちゃった。18番を終わってから(2打罰と)言われるなんて最悪!」と言い残し、待ち受けたファンにサインもせず、そそくさとコースを去っていった。

 ビッグスターゆえの有名税かもしれない。プロデビュー戦でもウィーのドロップ方法に対する嫌疑が翌日になって米メディアから指摘され、結局、過少申告で失格になったという苦い経験がある。今回はスコア提出前に2打罰を言い渡されたため、過少申告で失格という最悪のシナリオは免れたが、本人の気分はその言葉通り、「最悪!」というところだろう。

 さて、最悪とまではいかないが、2日目の宮里には運が味方してはくれなかった。今日の宮里は、初日に左に飛び気味だったティショットこそ「昨日よりフィーリングは良かった」が、ピンを狙ったショットが、とにかくピンに絡まず、「バーディパットらしいバーディパットは14番ぐらい」に終わってしまった。今日3オーバー75のラウンドで通算2オーバー。ピンに寄らなかった原因は「フックめのショットが多かった」というミスヒットがまず1つ。「寄せにくいピン位置が多かった」のが2つめ。「100ヤード以内の距離感が難しい」が3つめ。そして4つめはラックを欠いたことだ。13番でも17番でも、ピンに向かって飛んでいった球が小さなデコボコでキックして妙な方向へ向けられてしまった。父・優氏も「ゴルフは運がないと勝てないと言うけど、今日の藍には運がなかった」。それでも、宮里自身は「あと2日、死に物狂いでがんばれば、なんとかなる。ベスト10には入りたい」と上を見つめる。そこに運が到来すれば、さらなる上位もありえなくはない。

 逆に、今日の横峯さくらにはギャラリーの足にボールが当たって止まったりといったラックがあった。もちろん、今日73、通算1オーバーのラウンドは「ショットが良かった」結果だが、少なくとも宮里のようにバッドキックでボールが予想外の方向へ持っていかれたり、ウィーのようにソールが砂やコケに当たって2打罰を食らったり、ウエブのようにバンカーに入れば壁のそばばかりとなったり、といった状況には出くわさなかった。

 ゴルフには運が必要。リンクスコースでは、ことさら運がモノを言う。天候の変化だって、いつどこで雨が降り出すか、強風が吹き始めるか、突風が吹くかは運次第と言える。運がすべてではないけれど、決勝2日間は運を味方につけ、ラックを生かした者が笑うことになりそうだ。