【ファンキー通信】次世代路面電車の侮れない実力

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 唐突だが、LRT(Light Rail Transit)という新しい交通システムをご存じだろうか? 

 大型の車両でたくさんの乗客を運び、都市と都市を結ぶいわゆる普通の鉄道とは違って、LRTは都市の中を走る小さな鉄道網だ。路面電車の21世紀バージョンとでも言えばわかりやすいだろうか。

 もちろん路面電車とは大きく異なる。主な特徴を挙げると、まずは超低床であること。床が低い構造になっていて、電停から段差なく乗り降りができるバリアフリーなシステムである。

 ふたつ目は、LRTが自動車交通に対して優先権を持つということである。即ち、優先信号と呼ばれるシステムで、LRTが交差点に近づくと、LRTの信号がどんどん青に変わっていくのである。だから、LRTが信号待ちすることはなく、定時性も保てるわけだ。

 そして三つ目はトランジットモールという、人とLRTだけのストリートができること。自動車が入ってこない、人と路面電車だけの通りを作ることができ、商店街も活性化させることができるのだ。そんな人間優先のシステムである。

 このようにさまざまな特徴を持つLRTだが、ヨーロッパでは環境面から論じられることが多い。ヨーロッパの都市部では、渋滞の緩和や排気ガス抑制のため、都市部への車の乗り入れを制限する傾向にある。その点、LRTは電気で動くため、排気ガスの心配がない。しかも、バスとは違って車両を連結させて走行させることができるので、輸送力でも優れている。まさにLRTは、21世紀の交通網なのだ。 

 日本では未だ本格的なLRTは導入されておらず、宇都宮市などで検討されている状況だが、普及が進んでいるとは言い難い。しかし、ここへきて日本でもLRTが脚光を浴びつつあるのだ。

 一例として現在、大阪府にある新日本製鐵堺製鐵所の敷地内で民間がLRTの試験線を建設し、本格的な試験に乗り出そうとしている。しかも、ゴムタイヤ式LRTトランスロールという、最新のLRTだ。従来のLRTの特徴に加え、タイヤ式にしたことで、路面電車特有の騒音がなく、静かな走行を実現したという。日本でも近い将来、LRTが都市交通の主役になるかもしれない。(文/verb)

画像提供:三井物産交通システム株式会社
http://www.mitsui-tr.co.jp/goods/translohr.htm