その他のDF、岸田、藤井、小谷はいまだ出場機会がなく、まずは所属チームでのアピールが先決になる。FWも同様で、3人いずれも今シーズンは得点がなく、空中戦に強い場面を見せられてはいない。富山は9試合にスタメン出場しているとはいえ、大宮の強力な助っ人ふたり(ムルジャ、ズラタン)の陰に隠れがち。彼らを押し退けてでも前に出る姿勢が必要かもしれない。

 面白い存在なのが、甲府のルーキー松本大輝。谷口とは大津高の同期だ。いまだリーグ戦出場は2試合で計25分の出場にとどまるが、184センチの高さに加え、尋常ではないスピードを持つ。大学3年時には50メートル5秒7の記録を叩き出したというエピソードもあるほど(※日本記録は5秒75)。今後試合に絡んでくれば、間違いなく目立つ存在にはなるはずだ。
 さらに、対象を高校・ユース出身の選手にまで広げて、1)180センチ以上、2)90年代生まれという条件で検索すると、今回メンバーに選ばれた松原、森岡、扇原貴宏(C大阪)の3人を除き、24人が該当。以下、ポジション別に並べてみると――。
 
DF/大谷尚輝(広島)、北谷史孝(横浜)、福森晃斗(川崎)、昌子 源(鹿島)、植田直通(鹿島)、濱田水輝(浦和)、酒井高聖(新潟)、三浦弦太(清水)、鈴木大輔(柏)、中谷進之介(柏)、刀根亮輔(名古屋)、ハーフナー・ニッキ(名古屋)、高橋祥平(大宮)、西野貴治(G大阪)、岩波拓也(神戸)
 
MF/熊谷アンドリュー(横浜→湘南)、幸野志有人(FC東京→千葉)、野澤英之(FC東京)、磯村亮太(名古屋)、新井涼平(甲府)
 
FW/永井 龍(C大阪)、杉本健勇(C大阪)、鈴木武蔵(新潟)、柏瀬 暁(清水)
 
 DFには実績のある選手が集中。なかでもロンドン五輪代表でA代表でも出場経験のある鈴木、ワールドカップの直前合宿で招集された昌子などは、いつ選ばれてもおかしくない面々だ。今後は、U-21代表の最終ラインを担う岩波や植田、U-19代表CBの三浦といった19-20歳の選手の台頭が注目される。
 
 三浦に関しては、いまだ清水でのリーグ戦出場はゼロだが、大榎克己新監督が就任とともに早速21節の鹿島戦でベンチ入りさせている。U-19代表で4大会ぶりのU⁻20ワールドカップ出場権を勝ち取り、清水でも出場機会を得れば急速な成長曲線を描く可能性も否定できない。
 
 MFでは、代表招集の経験がある磯村がいる。ただし、今シーズンは序盤戦こそスタメンに定着していたものの、下降線をたどったチームとともに調子を落としたまま。U-21代表の熊谷、幸野も所属元で出場機会を得られず、今夏J2クラブにレンタル移籍したばかりだ。FC東京の野澤も含め、まずは所属での出場機会の獲得が先決だ。
 
 そうしたなかで、甲府で2年目を迎える新井は、19試合にスタメン出場。チームは15位(21節終了時)と低迷するものの、ボランチとしてチームを救う仕事ができれば、「サプライズ」の可能性は広がる。
 
 FWは鈴木武蔵に注目が集まる。U-21代表の主力としても期待されるストライカーだが、所属の新潟ではエースの川又が移籍。その穴を埋め、新しいエースとして存在感を発揮できれば自ずと代表への道は開けてくるはずだ。永井、杉本のC大阪コンビも出場機会は得ているだけに、今後のアピール次第か。
 
 今回、Jリーグでの実績も少ない皆川と坂井がアッと驚く初招集を叶えたわけだが、今後もこうした「サプライズ招集」がないとは言い切れない。少なくとも選出メンバーの傾向を見れば、ここに挙げた32人の若手にとっては、日本代表に食い込むチャンス到来の時期だと言える。