先日、同じオランダ代表選手である、実弟のジェイソン容疑者に刺殺され、24歳の若さでこの世を去ったグレッグ・ハルマン外野手(元マリナーズ)。その実の姉であり、現在イタリアのセリエAで、バスケットボール選手としてプレーしているナオミ・ハルマンさん(25)が、27日の午後2時から4 時まで、ハーレム市内でグレッグの「お別れ会」を行うと発表しました。また、彼の葬儀はその2日後、29日の午後1時から執り行われるそうです。ナオミさんからのメッセージは以下の通り。

 「私たちは、これまで皆さんから受けてきた温かい支援に、本当に感謝しています。それでも依然として、私たちはグレッグに「サヨナラ」を告げるという、最も悲しい瞬間を迎えなければなりません。私たちは、この瞬間を参列してくださるすべての皆様と分かち合いたいと考えています。今度の日曜の午後2 時から4時、ハーレムのキンヘイムのジムで行われるこの集まりが、グレッグとお別れする機会になります。29日の葬儀は、ドライフイスにあるウェスターフェルド式場にて行われる予定です。皆様とこの時を共有できることを、私たちは心から望んでいます。そして野球好きの方々には、グレッグが好きだった赤色の野球帽を、ぜひ被ってきて頂きたく思います」

 今回の事件は、グレッグの故郷であるオランダはもちろん、ヨーロッパやアメリカの球界関係者にも、非常に強い衝撃を与えています。マリナーズで同僚だったイチローは「彼はきっと、素晴らしい選手になると確信していた。どうか安らかに眠ってください」とのメッセージを、ハルマン一家宛てに送信。また、全米屈指の技巧派右腕として、その名をとどろかせたグレッグ・マダックス(元カブスなど)も「これは悲劇だ。マリナーズに対して、そしてそれ以上に彼の家族に対して、心から哀悼の意を表したい」との声明を寄せました。マ軍の元ヨーロッパ担当スカウトであるマウロ・マゾッティ氏は、ミラノでミスターベースボールの取材に応じ、次のように語っています。

 「昨日の昼過ぎ、友人からこの件について聞かされたあと、私は一日中ショックでふさぎ込んでいた。これまでスカウトとして、何千人もの選手を見てきたが、グレッグはその中でも特別な存在だったんだ。オランダまで彼の試合を見に行った時、彼は私の前でたまたま3三振を喫してしまったが、それでも彼は契約するに足る逸材だったのは間違いない。野球選手として成功するために必要な、全てのツール(パワー、巧打、スピード、肩、守備力、選球眼)を備えていたからね。当時の私の上司だったウェイン・ノートンが、その後自らオランダに飛び、彼と契約を結んだんだ。後は歴史が語ってくれるだろう。今はただ、彼が安らかに眠ることだけを望んでいるよ」

 グレッグに関しては、その人柄の良さがアメリカ球界でも話題になっていたそう。2006年にプレーしていたA-級エベレットの専属キャスターであるパット・ディロン氏は「他の選手が解雇通告され、ロッカーで打ちひしがれている時、彼はいつでもその選手の下に寄り添って、サポートを申し出ていた。彼はいつでもみんなのそばにいて、他の皆が成功できるように、あらゆる手を尽くす男だった」と、当時を振り返っています。今年までグレッグとチームメイトで、現在はFAになっているデビッド・アーズマ(オランダ系アメリカ人)は、「彼は自身の調子に関わらず、いつでも笑みを浮かべながら、楽しそうに球場にやってきた。その笑顔を絶やすことなく、ひたすら成長しようと日々努力を続けていた。チームメイトとして、最高にいい奴だったよ」と語りました。

 またある選手は、彼のその言語能力が、チームに溶け込む中で大きな力になったと言います。母語であるオランダ語に加え、英語、スペイン語、パピアメント語(キュラソーなどで話される、スペイン語・ポルトガル語・オランダ語の混合言語)を流暢に操るグレッグは、自分自身はオランダ生まれで、米大陸出身者から見た「アウトサイダー」であったにもかかわらず、英語圏とスペイン語圏の橋渡し役を見事に果たしていたとか。「彼はアメリカ人の選手とも、ラテン系の選手とも、非常に上手くやった。何かいさかいがあった時、両方の立場や言葉を理解できる彼は、すぐにお互いの意見を聞いて、事態の鎮静化に努めていたんだ」とその選手は言います。

 オランダ本国出身者では、現役唯一の野手大リーガーだったグレッグ。ヨーロッパの野球人にとっては、まさに希望の星といえる存在でした。それだけ、彼に素晴らしい選手としての才能があったことは、間違いないでしょう。しかし、単にそれだけでなく、これだけ人に愛された選手が早世してしまったことは、本当に残念だし悲しいことですよね。広島や巨人で名ユーティリティーとして活躍した、故木村拓也さんも然り。優れた人物ほど早く死んでしまうのが、本当に恨めしいです。今月12日に行われたMLBヨーロッパツアーの最終日、子供たちに笑顔で告げたお別れを、まさかこんな意味で具現化してしまうなんて、そんな残酷なことしないで下さいよ、神様。