インターネット上のさまざまなサービスを利用するためには、利用規約に同意する必要があります。本来であればじっくりと読んで検討しなければいけないものですが、実際はほとんど読み飛ばして同意してしまう人も多いはず。そんなネットサービスの利用規約の99%以上が「一般的な読解レベルをはるかに超えて学術誌レベルで難解」という研究論文が発表されています。

The Duty to Read the Unreadable by Uri Benoliel, Shmuel I. Becher :: SSRN

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3313837



Most Online ‘Terms of Service’ Are Incomprehensible to Adults, Study Finds - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/xwbg7j/online-contract-terms-of-service-are-incomprehensible-to-adults-study-finds

ヴィクトリア大学ウェリントンの法学准教授であるShmuel Becher氏と、College of Law&Businessの准教授であるUri Benoliel氏は、GoogleやFacebook、Uber、Airbnbを含めたアメリカの人気ウェブサイト500件を対象に、その利用規約の可読性を評価する2つのテストを行いました。

1つは「Flesch-Kincaidテスト(FKG)」と呼ばれるもので、1文あたりの平均単語数と1単語当たりの平均音節数からスコアを算出し、アメリカの教育学年レベルに対応させて可読性を評価します。もう1つは「Flesch Reading Ease(FRE)」と呼ばれ、1文あたりの平均単語数と100単語あたりの平均音節数からスコアを算出し、その値が高いほど可読性も高いと評価するものです。

読みやすさに関する先行研究の多くでは、サービスユーザーに向けたテキストは、FKGでは8年生以下の読解レベル、あるいはFREスコアが60以上であることが求められるといわれているそうです。しかし、Becher氏とBenoliel氏の調査結果によると、500のサービスの中でその基準を満たしたサービスはたったの2つで、残りの498件は平均して14年以上の教育を必要とする学術誌レベルの可読性だったとのこと。専門的な法律用語を多用してしまったために利用規約の文章が難化してしまい、法律に通じていない一般ユーザーには全く内容が把握できないものになっていることが判明しました。



by Wufoo Team

二人によると、例えば利用規約の他にわかりやすいガイドラインを用意したTumblrのように、法律用語を並べた利用規約以外にもわかりやすいバージョンを用意している企業は全体のおよそ4.8%ほど存在していたとのこと。こうした工夫によって規約内容の理解度も上がることが期待できますが、Becher氏とBenoliel氏は「テキストのどの部分に拘束力があるのでしょうか?トラブルが発生した場合に裁判所はどの文書を優先するべきなのでしょうか?」と疑問を提起しています。

評価で使われたFKGとFREは、納税申告書や医療給付計画などの文書の可読性をあげるために一部の国や自治体でも使われているとのこと。Becher氏とBenoliel氏は、消費者契約の文面にもFKGやFREによる評価を義務化するべきだと主張しています。