NECのコスパ重視の学生向け、デルのハイスペックな女性向け 最新ノートPC戦略とは?

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パーソナルコンピュータ国内出荷実績は、JEITA(http://www.jeita.or.jp)によると、デスクトップとノート型が、
2016年度は、697万4千台。
2017年度は、第3四半期までとはなるが486万6千台。
2017年度は600万台を割る可能性も見えている。

ちなみに10年前となる2007年度は、930万1千台と2016年と比較すると200万台以上も出荷台数が多かった。この10年の間に、スマートフォンやタブレットが普及したことにより、様々なサービスもスマートフォンを中心に提供される状況へと移行している。

PC市場は、「○○のPC離れ」と呼ばれるほど出荷台数が減っているのは明らかな事実だ。

そんな状況下の2018年1月、
NECパーソナルコンピュータ(以下、NEC)とデルがモバイルPCの新製品を発表している。

この2社の新製品の共通点は、コンセプトが若者や女性をターゲットにした製品であることだ。

しかしながら、両社ともにターゲットを絞ったモバイルPCではあるが、
製品の開発アプローチは異なっている。

●学生が社会にでる準備のためのモバイルPC
まずはNECの新製品「LAVIE Note Mobile」をみてみよう。
NECがターゲットとするのは、PC離れをしている学生だ。




ラインナップは第7世代インテル Core i5-7Y54を搭載する「NW550/KAシリーズ」、Core m3-7Y30を搭載する「NM350/KAシリーズ」、そしてCeleron 3965Yを搭載する「NM150/KAシリーズ」の3モデル。

価格はNECの直販ストア「NEC Direct」において69,800円(税抜)から。最上位モデルでも124,800円からとなっている。

このPCの特徴は、持ち運びができるサイズと大きさの実現と価格にある。サイズは横幅289mm、奥行は197.5mm、厚さは17mm。普段カバンに入れているA4の用紙(297mm×210mm)サイズよりもコンパクトなサイズである。画面は、スマートフォンや一般的なタブレットよりも大きくて見やすい12.5インチ。

重さは約924gで、開発には日本製らしく1kgを切ることにこだわったという。

さて新しいLAVIE Note Mobileに込められたメッセージとは何か?

卒業して社会に出ると、否応なしにPCを使わざるを得なくなる。
そこで、学生時代にPCに慣れておき、社会に出るまえに苦手意識をなくす。
学生が次のステップに踏み出すための支援となるPCということのようだ。




初歩的なところで言うと、
Windowsやオフィスアプリの使い方

根本的なところでは、
キーボードによる文字入力
など。これを社会にでてからイチから学ぶのは、出遅れ感や劣等感につながりやすく、社会人としてのスタートで大きなプレッシャーにもなるだろう。

そこで、学生でも入手しやすい低価格なノートPCを提供する。
これが、NECとしての一つの提案でもあり、新しい取り組みである。

開発では、実際に大学生の声を反映し、実際に使って貰いながら開発したという。

開発で重要視されたのが、やはり講義のメモ取りなどする上での持ち歩きやすいサイズと重さだ。
それに加えて、キーボードや廃熱対策を含めた静音性だ。
さらに、外出が多く、出先で長く使うことが多い学生活に配慮したバッテリーの駆動時間である。

また、これ以外にも持ち運ぶために必要な条件は、サイズや軽さだけではない。
バッグに入れて持ち歩く際、満員電車などで圧力がかかっても破損や故障がしにくい「頑丈さ」も重要だ。こうした様々な意見を盛り込んで開発されている。

ノートPCでは、性能と低価格は相反する。
低価格を実現するには、もちろん、妥協しなければならない点もある。
たとえば、
NECでは700g台という、モバイル利用のために軽さを極限まで追求した超軽量モバイルノートPCがあるが、価格もそれなりにする。

しかし学生向け製品で、軽くするために必要以上に価格が上がってしまっては意味がない。
コンセプトがPCに慣れて貰うことであることから、価格が単純につり上がるだけのハイスペックや多機能は必要ないという落としどころである。

今回のNECは、学生をターゲットとしている。
しかし、低価格で軽量、長時間バッテリーなどは、一般の日常での利用やライトなビジネスでの利用でも十分に魅力的だ。

学生だけでなく、現在のライトユーザーなど幅広い世代にもフィットする製品でもあるのだ。


では、デルはどうだろうか。
デルが発表したのは、
フラグシップ「XPS」シリーズのモバイルノートPC「New XPS 13」だ。




デルは、NECとはコンセプトが異なる。
いうなれば、ハイスペックを惜しみなく盛り込んだプレミアムノートである。

最上位モデルは、
第8世代Core i7-8550Uプロセッサ
16GB RAM、512GB PCIe SSD
13.3型4K(3840×2160ドット)タッチディスプレイ
これらを搭載する。

本体サイズは、
横幅302mm、奥行199mm、厚さ11.6mm。重さは1.21kg。
外装はCNC削り出しアルミ加工の表面と内側にはカーボンもしくはグラスファイバーを加工し、軽量でありながら高い剛性を持たせている。

デルのフラグシップらしい作り込みはこれだけではない。
・「Windows Hello」に対応する指紋センサー付き電源ボタン
・顔認証のためのセンサー
・音声認識に対応したAIエージェント「Cortana(コルタナ)」で利用できる4マイク
・USB 3.1 Type-C、Thunderbolt端子
・ストリーミング動画も途切れず再生できるワイヤレスアダプタ「Killer 1435」
など、ゲーミングPCのような全部入り構成である。

気になる価格だが、
デルの直販ストアでは、最小構成となる
・FHD(1920×1080ドット)ディスプレイ
・Core i5-8250U
・RAM 8GB、256GB PCIe SSD
このモデルが169,980円(税抜)からと、極端な高価格というわけではない。

しかしながら、これまでデルのPCはビジネス色が強く、XPSもシルバーやゴールドの外装にブラックのキーボードとクールなイメージを貫き通してきた。




New XPS 13では、こうした路線も維持しつつ、
女性ユーザーを開拓すべく
「ローズゴールド&アルペンホワイト」
というカラー構成でイメージを一新している。

薄くてリッチなアルミ削り出しのローズゴールドのボディは、美しく品がある。




またキーボード面は、明るいイメージの白。
この白は、塗装した樹脂ではなくグラスファイバー繊維を加工したものだ。
表面に見える素材感はXPSらしいこだわりだと言える。
さらに白は汚れが目立つということで、防汚加工とUV加工を施してあり、長く使っても色あせない白を実現しているというのだ。


NECのLAVIE Note Mobileは、
日本的なアプローチで多くの若者(学生)が購入できる価格と性能というコンセプトだ。

一方のデルのNew XPS 13は、
薄利多売の時代の品質に妥協した量産品ではなく、グローバル視点の「良品」を適正価格で購入したいプレミアム層が満足でき、女性でも使いやすさにフォーカスしたコンセプトだ。

2社のモバイルPCは、異なるアプローチで、PC離れ時代の顧客を獲得するための戦略的なモデルといっていいだろう。

こうした取り組みで新しいユーザーを掘り起こすだけではなく、次のステップにつながる価値体験をしっかりとサポートしていって欲しいと思う。


執筆  mi2_303