ウザいと思われる最大の原因は話し方にあるのです(写真 : polkadot / PIXTA)

政治家の小泉進次郎氏は老若男女を問わず、人気があります。昨年の衆議院議員選挙では候補者の応援演説で引っ張りだこで、自身の選挙区の外にいた時間が長かったにもかかわらず、15万以上もの人からの票を集めました。
若手で大臣の経験もないのに、なぜここまで人気なのでしょう。ルックスのよさだけではありません。進次郎氏は話すときに、ある簡単かつ効果的な方法を駆使しているのです。これまでに多くの政治家、企業経営者のスピーチ指導をしており、『たった一言で人を動かす 最高の話し方』を刊行した矢野香氏に伺いました。

「間法」使いの名人たち

実は、小泉進次郎氏は「間」の使い方が絶妙な、「間法」使いです。たとえば、衆院選最終日の演説での一言。

「この選挙は(3秒の間)、感謝で始まり(1秒)、感謝で終わり(2秒)、横須賀で始まり(2秒)、横須賀で終わり(2秒)、スカジャンで始まり(1秒)、スカジャンで終わります」

このように文節ごとに「間」を入れているので、聞き手に一言一言が浸透しやすいのです。

演説の最後は、感極まって「今まで支えていただいた方、そのすべての恩に、心から」で言葉を切って、涙をこらえながら10秒以上の長い「間」。ここで拍手がわき起こり、「頑張れー」の声援が飛びました。

進次郎氏の場合、言葉自体も簡単でわかりやすいというのもありますが、「間」を入れずに一気に伝えていたら、それほど聞き手には響かないでしょう。「間」が感動的な演説を演出しているのです。

ほかに、ソフトバンクの孫正義社長、フェイスブックの創業者マーク・ザッカ―バーグ、アップルの故スティーブ・ジョブズといったプレゼンの達人と呼ばれる一流の方も、みんな「間法」使いの名手です。プレゼンや演説の場で巧みに「間」を入れて、聞き手を途中で飽きさせず、時に共感させ、時に感動を呼ぶスピーチをしています。

多くの人が夢中になる人には、カリスマ性が必要だと思うかもしれません。しかし、実は「間」を使いこなすだけで人を夢中にさせることはできます。そして、「間法」使いになるのに、特別なスキルは必要ないのです。

ウザがられる人の話し方の特徴

皆さんは、自分と話しているうちに相手がイライラしだしたり、話の途中で逃げるようにいなくなってしまったことがありませんか。女子社員をランチに誘っても、「すみません、やらなきゃいけないことがあって」と断られてしまったり……。

「相手の機嫌が悪かったんだ」「忙しかったんだ」と思っているかもしれませんが、実は相手に「ウザいな」と思われている可能性があります。そして、ウザいと思われる最大の原因は話し方にあるのです。

まわりから「ウザい」と思われる人は自分では自覚していませんが、次のような傾向があります。

・話が長い

一度話し出したら、何十分でもしゃべり続けるタイプ。相手はうんざりしていても、本人はそれに気づかず、延々と話し続けます。しかも、たいていは自慢話や同じ話の繰り返し。まわりは、「その話を聞いたのは5回目だ」と思いながら、渋々付き合っていることでしょう。

・一文が長い

「〜ですが」「〜して」と一つの文が長々と続くタイプ。「です」「ます」と言い切るのが怖くて続けてしまうのでしょう。聞き手は一文が長いと脳で話を処理できないので、懸命に話しても聞き手の記憶に内容が残らなくなります。

・人の話を遮る

相手が話している最中でも、「そういえば……」と遮って話し始めるタイプ。なかでも、「いやいや、そうじゃなくて」と否定から入る人は、相当相手に嫌われている可能性があります。

・相槌が多い

人が話している最中にずっと、「うんうん」「はいはい」「なるほど、なるほど」と相槌を打ち続けているタイプ。頻繁に相槌を打っていると、相手はかえって話しづらくなります。

いかがですか。自分がどれかに当てはまっていると気づいた方は、まだ改善の余地があります。

ウザがられる人は、自分の意見を押し付ける自己中心さがあるから敬遠されるのです。そこには優しさがありません。

これらの残念な話し方・聴き方も、「間」を使えば相手の様子を確認しながら話し、相手の話に共感を示すこともできるので、優しさを伝えられるのです。だから、女性にも好かれる。

「間法」使いになると、話し手中心の話し方から、聞き手中心の話し方に変わります。つまり、「間」は聞き手への思いやりになるのです。

また、「間」を入れると語尾がキツくならないので、相手に親しみやすさを与える効果もあります。それも多くの人から支持を得られる理由なのです。

相手を夢中にさせる「間」の使い方

それでは、どのような場面で「間」を使えば相手を魅了することができるのでしょうか。ここでは一部をご紹介します。

「間」はスピーチのように人前で話すときだけではなく、日常の会話でも使えるテクニックです。謝る叱る褒める励ます感謝するといった、感情を伴う場面でこそ、「間」は効果を発揮します。皆さんも、ぜひ日常生活での「間法」を実感してください。

・謝罪するとき

「間」をとることで、心からの謝罪が伝わります。

(例)「必ず原因究明し(3秒の「間」)再発防止につとめます」
「本当に(3秒の「間」)申し訳ありません」

・叱るとき

「間」をとることで、相手は事態の深刻さをひしひしと実感します。感情的に怒鳴りつけるより効果的です。

(例)「最近仕事が雑になってないか?(3秒の「間」)ミスには注意しなさい」
「残念だよ。(3秒の「間」)君には期待しているんだ」

・励ますとき

「間」をとることで、言葉は少なくても相手に寄りそうことができます。

(例)「大変だったね。(3秒の「間」)私たちがついてるよ」
「大丈夫。(3秒の「間」)何とかするから」

・感謝するとき

「間」をとることで、心の底からお礼を言っているのだと伝わります。そのため軽いお礼のときに使うとおおげさになりすぎるので注意しましょう。

(例)「○○さん、(3秒の「間」)ありがとうございます」
「何とお礼申し上げていいか……。(3秒の「間」)感謝しています」

「間」はただ無言になる時間ではない


「間」はただ無言になる時間ではありません。語らないことで相手により強いメッセージを伝えることができる時間なのです。100の言葉を使うより、数秒の「間」が人の心を動かすこともあります。

相手が話を聞いているかどうかも気にせずにペラペラ話す人は、相手に信用されません。本当は、話し方に必要なのは話す内容よりも、「間」の使い方。たとえ口下手の人であっても、「間」を使えば相手に信頼してもらい、心を開いてもらうことができます。

今まで、色々な話し方を試してみてもうまくいかなくて、話し方教室を渡り歩くような「話し方難民」の方もいるでしょう。そういう方も「間」を使えるようになれば、自分の望みどおりの結果を手に入れられるようになります。ぜひ、明日から試してみてください。