83年にわたる栄光の歴史に泥を塗る「13連敗」というワースト記録を樹立した巨人は、6月13日、すぐさま再建に着手した。これまでの病巣を一掃すべく、最初に手をつけたのは、フロントの刷新だった。編成部門のトップである堤辰佳GMが退任し、かつてヘッドコーチも務めたOBの鹿取義隆GM特別補佐のGM就任を発表したのだ。
 見逃せないのが、巨人内で鹿取GM誕生と合わせて、次期監督に中畑清氏の名前が囁かれていることだ。高橋由伸監督にとって堤前GMは慶應大学野球部の先輩であり、二人三脚でジャイアンツの強化に取り組んできた人物。その兄貴分が詰め腹を切らされたことで、本人も追い腹を胸に秘めているといわれ、今季日本一を逃した場合、辞任が濃厚と見られているのだ。
 巨人の場合、第一次政権時の原辰徳監督、堀内恒夫監督がともに2年目のオフに契約を1年残して解任されている。結果を残せなければ、粛々と首を切る前例があるだけに、プライドの高い慶大出身の高橋監督は解任を待たず、自ら身を引く覚悟だという。

 そのことを踏まえ、連敗が始まった5月末から、読売首脳部は“ミスタージャイアンツ”長嶋茂雄終身名誉監督に相談を開始。GM人事と合わせ、巨人再建の工程表作りに着手しているという情報を本誌はキャッチした。
 母校・立教大学野球部が59年ぶりに日本一に輝いたことで、長嶋氏にとって残る願いは一番弟子ともいえる松井秀喜氏の巨人監督就任だけとなった。国民栄誉賞を子弟でダブル受賞したパートナーであり、実はここに、恩返しの意味も込められている。

 '13年に同賞をダブル受賞した背景には、こんなエピソードがあったという。
 「当初、国民栄誉賞は巨人とメジャーリーグで活躍し、引退が決まった松井氏への単独授与ということでした。森喜朗元首相と松井氏は、同じ石川県根上町(現・能美市)出身。森氏が安倍首相に働きかけたのですが、松井氏は過去にメジャーの年間最多安打記録を84年ぶりに更新したイチローが国民栄誉賞を打診されて断っていることから、受ける意思はなかったのです。そこで首相官邸は、長嶋氏との『ダブル受賞』という裏技を使って口説き落としたと言われています。事情はどうあれ、長嶋さんにとって国民栄誉賞は長年の夢でした。ON時代を築いた王貞治氏が授与されていることもあり、心から望んでいた。弟子からの贈り物に応えるためにも、是が非でも松井氏を巨人監督に就かせたいのです」(スポーツ紙デスク)

 しかし、長嶋氏の宿願とはいえ、松井氏は巨人監督就任を固辞し続けている。そこでひねり出したのが、松井監督への“つなぎ”として、中畑氏が巨人監督に就任するということ。
 今の巨人は、FA組と外国人選手が主流となる寄せ集め集団で、真の最強軍団を望むことはできない。大幅な血の入れ替えが必要なのは明らかで、長嶋氏はかつて原氏と袂を分かった鹿取氏をGMに就けて地ならしをさせ、中畑監督と連携する形で球界盟主の座を取り戻そうとしているのだ。
 「中畑氏はDeNA監督時代の'15年、沖縄・宜野湾の春季キャンプに松井氏を招き、筒香嘉智をはじめ、チームの打者を視察してもらいました。松井氏はその前年オフに巨人からコーチ要請を受けましたが、断った関係で、DeNAからのキャンプ視察要請も当初は巨人に配慮して断っていました。しかし、中畑監督が師匠の長嶋氏を通じて再度要請したことで、松井氏は師匠の顔を立てる形で受け入れた経緯があります。今度は中畑氏に、巨人の再建に汗を流してもらい、松井氏を監督に迎えるのです。'20年の東京オリンピックイヤーまでの3シーズンでチームを松井カラーに染めるのがミッションです」(長嶋氏と親しいメディア関係者)

 鹿取GMは今オフ、大幅なコーチ陣の再編成を行うと言われている。候補に挙がっているのが、ヘッドコーチに内田順三氏(現巡回打撃コーチ)、一軍打撃コーチに田代富雄氏(現二軍打撃コーチ)、投手コーチに小谷正勝氏(現三軍投手コーチ)、守備走塁コーチに高木豊氏(現解説者)らが有力視されている。
 ヘッドコーチに就く予定の内田氏は中畑氏の駒沢大学時代の先輩で、松井氏の打撃の師匠にあたる。他の主要ポストも横浜DeNAのOBたち。これを見るだけでも、「中畑監督」を前提としたコーチ編成であることが分かる。

 現在、次期巨人監督は、原辰徳、中畑、松井の3氏に絞られている。だが、原氏は東京五輪の日本代表監督に内定したという情報がある。松井氏も今は受諾の意思がない以上、次は中畑氏以外には考えられない。
 そんな松井政権誕生へのお祝いに中畑氏が用意しているのが、DeNAの主砲・筒香だ。'20年オフに国内FA権を取得し、巨人移籍が可能となる。

 読売上層部はしきりに、テレビ視聴率やチケット売り上げの話を持ち出すというが、ミスターの支援と天然キャラの中畑氏なら心配はない。果たして強い巨人は甦るのか…。