ブルージェイズ・川崎宗則【写真:田口有史】

人気は絶大、トロントでは多くの人が”帰還”を待っている

 ブルージェイズとマイナー契約を結んだ川崎宗則内野手は、マリナーズ時代も含めて4年連続となるメジャー昇格をつかむことが出来るのだろうか。明るいキャラクターとひたむきなプレーでファン、そしてチームメートからの人気は絶大なだけに、地元トロントでも多くの人が“帰還”を待っている。

 今オフ、川崎には日本復帰という選択肢もあった。3年連続でブルージェイズとのマイナー契約に合意した1月中旬には、地元紙「トロント・スター」が「ファンのお気に入りは、よりいい契約を取得できるであろう日本に戻ると噂されていた。日本でプレーすれば遥かに多くのお金を稼ぐだろうと伝えられているが、ムネノリ・カワサキはブルージェイズに帰ってくる」と報じている。契約条件を度外視して残留を決めたことで、川崎への人気はさらに高くなっているようだ。

 では、今季もメジャー契約をつかむ可能性はどの程度あるのか。地元メディアの「NBCスポーツ」は、四球が多く、出塁率が高いことや、内野のどのポジションも守れることに言及。今季もどこかの段階でメジャーに昇格すると予想している。ベンチに置いておけば、これほど使い勝手のいい選手はいない。

二塁のレギュラー候補に挙げるメディアも

 マイナー契約にも関わらず、川崎をレギュラー候補に挙げるメディアもある。最も可能性が高いのはセカンドだ。阪神から海外FA権を行使した鳥谷敬内野手の獲得に動くなど、ブルージェイズが補強を目指していたポジション。しかし、結局は正式オファーを出さず、鳥谷は阪神残留という決断を下した。そのままレギュラー候補を獲得することはなく、アレックス・アンソポロスGMは現有戦力のままで開幕に向かうことを示唆している。

 これを受け、移籍情報サイトの「トレード・ルーマーズ」がセカンドのレギュラー候補として名前を挙げたのは5人。メイサー・イズタリス、ライアン・ゴインズ、スティーブン・トールソン、そしてマイナー契約の川崎、トレードで獲得した若手有望株のデボン・トラビスだ。

 2014年は二塁、三塁、遊撃を守った川崎だが、途中出場を含めて二塁の59試合が最も多く、首脳陣もその実力を十分に把握している。しかも、イズタリスが負傷で10試合の出場にとどまったこともあり、川崎は昨年、この候補者の中で最も二塁での出場が多かった(ゴインズは50試合、トールソンは35試合、トラビスはメジャー経験なし)。

ショートでの出場のチャンスも?

 一方、各チームをポジションごとに分析する特集を開始した野球専門の米データサイト「ファングラフス」には、川崎の名前は登場しない。内野の分析の中で、セカンド候補として明記されているのはゴインズ、イズタリス、トールソンの3人だけとなっている。メディアによっても見方は分かれる。

 むしろ、ショートにもチャンスがあるかもしれない。レギュラーを務めるスター選手のホセ・レイエスは圧倒的な身体能力を誇るが、怪我も多い。川崎が2013年にブルージェイズで初めてメジャー昇格を果たした時も、レイエスの負傷が原因だった。そして、大きな穴を懸命に埋めた川崎のプレーは、ファンの心をつかんだ。

 新加入で三塁のレギュラーとなるジョシュ・ドナルドソンにアクシデントがあれば、その穴も埋められる。実は、昨年の川崎はショートでの出場は3試合のみで、三塁での18試合が2番目に多かった。

 二塁のレギュラーか、それとも内野の「便利屋」か。いずれにしても、首脳陣やチームメートが川崎の力を認めていることは間違いない。何よりも、チームにエネルギーを与える選手として、その存在価値は高い。本拠地ロジャース・センターで、川崎が打席に立った時、守備でボールをさばいた時に沸き上がる歓声の大きさは、チーム内でも群を抜いている。4年連続となるマイナー契約からのメジャー昇格へ、キャンプから暴れ回ることになりそうだ。