事件後、現場付近には多数の花などが供えられていた/2025年3月14日、筆者撮影

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 昨年3月、東京・高田馬場の路上で動画配信中だった女性を刺殺したとして、殺人罪などに問われた高野健一被告(44)に対して、今年7月15日に東京地裁(井戸俊一裁判長)は懲役16年(求刑:同20年)の実刑判決を言い渡した。この判決を不服として控訴していたことがわかった。
 残忍な犯行の背景にちらついた、被害者との歪んだ関係に社会が注目したこの事件。法廷で、高野被告自らの口で語られた事件の詳細を振り返る--。

◆「殺すつもりはなかった」謝罪直後に語られた高野被告の弁明

「間違ったことをしてしまい、痛い思いをさせて、怖い思いをさせて、命を奪ってしまったことを本当に申し訳なく思っています」

 被告人質問の冒頭で、このように謝罪した高野被告。判決によると、2025年3月11日の午前9時50分頃、東京・高田馬場の路上で佐藤愛里さん(当時22歳)の顔面や首などを、ナイフ(刃体の長さ約12.4センチ)で刺して殺害するなどした。

 司法解剖の結果、佐藤さんは「多発刺切創による出血性ショック」で死亡したとされる。高野被告からの攻撃は、頭部や顔面、頸部などにわたり、合計で「55か所」もの刺し傷が認められた。致命傷は、深さ約9センチで「首を貫通していた」と所見されている。

 まさにメッタ刺し状態。苛烈な犯行だが、当初は殺意がなかったと高野被告は供述した。

「大けがをさせようと思っていませんでした」「事件になって、佐藤さんが裁判に出るとか、取り調べを受けて(佐藤さんとの金銭トラブルを)社会に明るみに出すつもりで、殺すつもりはありませんでした」(被告人質問から・以下同)

◆「彼氏みたい」--配信者と古参リスナーが親密になった経緯

「社会に明るみに出すつもり」と高野被告が表現した、佐藤さんとの問題。それは事件の発端ともされる金銭トラブルだった。はじめに、二人の関係性から解説する。

 佐藤さんは自身を「最上あい」と名乗り、動画配信サイト「ふわっち」の配信者として活動していた。投げ銭などに応じて決まるランクでは、「プラチナプラス(最上位クラス)」になったこともあった。

 一方の高野被告は、佐藤さんが配信を始めた頃から視聴していた古参のリスナー。二人はSNS上のDMを通じてLINEを交換すると、佐藤さんの方から「大好き」や、「タカノ選んでいい人」「大きな出会いした」「彼氏みたい」「タカノいなかったら配信できない」などのメッセージがあったようだ。

 次第に配信者対視聴者の構図から親密な関係へと発展していった。

◆借金を重ねても応じ続けた金銭要求…

 その親密な関係を表すように、佐藤さんは配信休止中も自身が勤務していた山形県内のキャバクラに高野被告を誘い、計4回にわたって飲食などをともにしていた。その関係性について高野被告は、自身を「リスナーの中でも特別な存在だろうと思っていた」と振り返っている。そんな二人の関係が歪みはじめたきっかけが、佐藤さんからの金銭の無心だった。

 初対面から14日後のこと。突然、佐藤さんがこうLINEしてきた。

<申し訳ないんだけどさ、昨日日雇いバイト行った先に財布忘れちゃってまじ手持ちない状態だからちょいお金貸してほしいんよね。明日か明後日取りにいくときに返すから(土下座の絵文字)>(裁判証拠から)

 その後も「高額のお酒の代金を支払うことになった」、「姉の売り掛け金の支払いを請求された。払えなければデリヘルさせられる」など、その真偽は不明だが、佐藤さんは度々助けを求めてきたという。

 その度に貯金を切り崩したり、消費者金融から借金したりして、佐藤さんに送金。結局のところ、佐藤さんから3万円が返済されたのみで、未払い額は約251万円にものぼった。