ペップの予言は的中「最高のロドリが見られるのはW杯だ」。数字にもその支配力は明確に刻まれ、サッカー史でも限られた領域に足を踏み入れた
ワールドカップ、EURO、チャンピオンズリーグ、バロンドール。そのすべてを獲得した男子選手は、ゲルト・ミュラー、フランツ・ベッケンバウアー、ジネディーヌ・ジダン、そしてロドリの4人しかいない。
前の3人が歴史上の偉人として語られる一方、ロドリは同じほどの畏敬を集めてきただろうか。得点を量産するわけでも、華麗なドリブルで観客を総立ちにさせるわけでもない。だが、今回のW杯は、ロドリがすでに彼らと並べて語られるべき選手であることを改めて証明した大会だった。
2024年9月、マンチェスター・シティで右膝前十字靱帯を断裂。長期離脱を強いられ、復帰後も故障を繰り返した。以前のような強度と機動力を取り戻せるのか。シティ内部やスペイン代表周辺にも疑う声があったという。
それでも当時のシティ監督ペップ・グアルディオラは、昨年10月にこう予言していた。
「最高のロドリが見られるのはワールドカップだ」
その言葉は希望的観測ではなかった。ペップの予言通り、30歳の司令塔は大舞台で本来の姿を取り戻したのだ。
ロドリの凄みを端的に言い表わしたのが、現役時代に同じセントラルMFとしてプレーしたスコット・パーカーだった。英紙『デーリー・テレグラフ』への手記で、「ロドリには、周囲の誰よりも二手先を読む特別な能力がある」と評している。
たしかにロドリは、目の前の出来事に追われるのではなく、次に起きる展開を先回りする。味方がどこへ動き、相手がどのコースを塞ぎ、その先にどんな空間が生まれるのか。ロドリはそれを瞬時に整理し、自分が望む速度で試合を進めていく。
数字にも、支配力は明確に刻まれた。
W杯の8試合で成功させたパスは756本。1966年以降のW杯では、1大会の最多記録となった。大会全体の成功率は93.2%に達し、ラインブレイクパス122本、ファイナルサードでのラインブレイクパス76本も最多だった。
アルゼンチンとの決勝では、106本のパスのうち101本を成功。成功率95.3%は、今大会の自身最高記録だった。ボールを安全に回しただけではなく、相手の守備を動かし、スペインが押し込むためのリズムを絶えず作り続けた。
同時に、タックルも大会最多の26回。決勝では4回のタックルを成功させ、ドリブル突破を一度も許さなかった。後半アディショナルタイムには、ペナルティエリアへ近づこうとしたリオネル・メッシからボールを奪っている。一歩遅れていれば、決勝の結末が変わっていた可能性もあった。
元シティのDFで、FIFAのテクニカルスタディグループに加わったパブロ・サバレタは、ロドリについて「いつプレスをかけるべきかを常に理解している」と語った。
「ボールを失った直後、全員が2〜3秒以内に反応しなければならない。そしてロドリは、いつもそこにいる」
いつもそこにいる。これほどロドリの凄みを的確に表わす言葉もないだろう。
派手なスライディングで危機を救うのではなく、危機が生まれる場所を先回りして消す。そのため、彼のプレーは時に簡単そうに見える。むしろ調子が良ければ良いほど、個人としては目立たなくなる。
スポーツメディア『ジ・アスレティック』は、その姿を「チーム全体の組織を静かに維持し、周囲を輝かせる逆説的な存在」と表現した。ロドリが正しい位置に立ち、正しい速さでボールを動かすと、スペインのパスは自然につながり、相手のカウンターは始まる前に終わる。
英紙BBC放送が、19歳のラミネ・ヤマルを「スペインの華やかさと創造性の象徴」とする一方、ロドリを「その糸を操る人形使い」と評したのも同じ理由だろう。ヤマルをはじめとするスターが自由に輝ける舞台そのものを整えていたのがロドリだった。
スペイン人ジャーナリスト、ギジェム・バラゲは、端的に言い切る。
「これはロドリのチームだ」
ロドリのキャリアには、プレミアリーグ4連覇、シティでの三冠、EURO、ネーションズリーグ、そしてバロンドールが並ぶ。そこへワールドカップとゴールデンボールが加わり、その実績は歴史的選手と呼ぶにふさわしい厚みを備えた。
ロドリがサッカー史のどこに位置する選手なのか──。米国ニュージャージーで掲げたワールドカップは、その答えを世界に示した。
文●田嶋コウスケ
【動画】大乱闘騒ぎの発端となった決定的瞬間…モリーナが通り過ぎるロドリの胸部にパンチを見舞う!

