【A4studio】94店舗しかないが「1店舗当たりの売上高」はサイゼリヤ超え…ファミレス業界で異彩を放つ「北海道発和食チェーン」の名前
静かに異彩を放つ「和食レストランチェーン」
外食チェーンの競争が激化している。
帝国データバンクによると、2025年上半期の飲食店倒産は458件に達し、上半期として過去最多を更新した。
一方で好調な大手外食チェーンもある。低価格路線を武器に支持を集める「サイゼリヤ」は増収増益を続け、2026年8月期第2四半期決算では売上高が前年同期比17.5%増、営業利益は同39.9%増となっている。
各社が生き残りをかけた戦いを続けているそんな外食チェーン業界のなか、静かに異彩を放つのが和食レストランチェーン「北海道生まれ 和食処とんでん」だ。
北海道で創業し、1978年に北海道から関東へ進出してファミリーレストラン形態の1号店を埼玉県浦和市にオープン。現在は寿司や天ぷら、そばなどの和食を主力としながら埼玉県や千葉県を中心に店舗を展開し、幅広い世代を取り込んできた。
とんでんの店舗数は94店(2026年6月時点の公式サイト情報)と、1200店超を誇る「ガスト」や1600店超(海外店舗含む)を誇る「サイゼリヤ」のような全国チェーンと比べれば決して大きくない。
さらにいえば、派手な新業態を展開しているわけでもなく、大手に比べるとSNSで話題になることも少ない。安さで勝負しているわけでもない。話題性を売りにしているわけでもない──。
いってしまえば、目立たない“地味なチェーン”だが、それでも半世紀近くにわたり、地域に根ざして営業を続けているのだ。
実際、とんでんは店舗数こそ大手に及ばないものの、1店舗当たりの年間売上高は約1億7800万円(2025年3月期決算より計算)に達する。これはサイゼリヤの約1億5300万円(2025年8月期決算より計算)を上回る水準であり、店舗ごとに高い収益力を持っていることがうかがえるだろう。
なぜとんでんは過酷な競争を生き抜いてこられたのか。外食産業に詳しい外食ビジネスアナリストの三輪大輔氏に解説していただく。(以下「」内は三輪氏のコメント)
外食業界は「二極化」が進んでいる
三輪氏はまず、現在の外食業界が「二極化」していると説明する。
「最近の外食産業は倒産件数が増えている一方で、大手チェーンでは過去最高益を更新している企業も少なくありません。この二極化はさらに広がっていくでしょう。
ファミリーレストラン業界も大きく変化してきました。以前は価格競争の時代で、低価格路線が支持されてガストが店舗数を伸ばし、質で勝負してきた高価格路線のロイヤルホストなどのチェーンは苦戦しました。ですがいま、その構図も変わり始めているのです。
大きな要因は人件費や食材の高騰です。加えて、海外事業の利益を背景に国内では低価格路線を維持するサイゼリヤの存在感が増していて、多くのチェーンが同じ土俵で戦うことを難しくしています。
そこで他のファミレスチェーンは、別の価値をつくる必要が出てきました。重要になっているのが体験価値です。単純な価格競争ではなく、どんな体験を提供できるのか。そこが生き残りのポイントになっているのです」
他社が捨てた「非効率」を守り続けた
その視点で見ると、とんでんは非常に特殊な存在だという。
「とんでんは、いまでは珍しく『手作りの料理』と『フルサービス』を守り続けているチェーンです。実は、この2つはファミレス草創期には各社が当たり前に備えていたものでした。ところが業界が価格競争と効率化へ向かうなか、多くのチェーンはそれらを手放していった。一方、とんでんは変わらず守り続けてきたのです」
確かに現在の外食業界では効率化が進んでいる。セントラルキッチンの活用やタッチパネル、モバイルオーダーの導入が進み、少人数で店舗を運営するケースも珍しくない。
「そんな時代だからこそ、ファミレスの“原点”を残しているとんでんの価値が改めて見直されているのだと思います。一度は時代遅れとみられた手法でしたが、信念を貫いて大切なものを守り続けた結果、いまではむしろそれが一周まわって競合チェーンとの差別化になり、業界内で個性を放つ存在になっているわけです」
では、上乗せされたコストはどうするのか。それを支える土台もあるという。
「駅前立地や都心エリアなどだと、家賃の負担だけでも大きくなってしまいますので、そのなかで手作りやフルサービスを維持するのは簡単ではありません。けれど、とんでんの店舗の多くは郊外ロードサイド型で賃料が相対的に安いため、その部分でランニングコストを抑えられています。とんでんは立地も含めて、自社の強みを生かせる形を選んできたのではないでしょうか」
【つづきを読む】安さや知名度はないのに…「和食処とんでん」が埼玉や千葉のロードサイドで圧倒的な支持を集める理由、高齢者にも子どもにも優しい「唯一無二の店舗設計」
(取材・文=森田浩明/A4studio)
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