「さっきから自分にはたくさん蚊が寄ってくるのに、近くにいる別の人にはあまり蚊が寄ってこない」という体験をしたことがある人もいるはず。一体なぜ蚊に刺されやすい人とそうでない人がいるのかという疑問について、科学者らはさまざまな事実を明らかにしています。

Cyphers and cycles - A chemical basis of the differential attraction of mosquitoes to human odor: iScience

https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(26)00950-8

Mushroom alcohol makes some women more attractive to mosquitoes than others | slu.se

https://www.slu.se/en/news/2026/04/mushroom-alcohol-makes-some-women-more-attractive-to-mosquitoes-than-others/

Scientists Reveal Why Mosquitoes Bite Some People More Than Others : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/scientists-reveal-why-mosquitoes-bite-some-people-more-than-others

「蚊にさされやすい人とそうでない人がいる」という説について、フランス国立開発研究所(IRD)のフレデリック・シマール氏は、「これは誤解ではありません。ある人は別の人よりも蚊を引き寄せるのです。しかし、私たちは常に蚊を引きつける磁石のような存在ではありません」と述べています。

血液を吸うメスの蚊は、人間の体から発せられる匂いや熱、そして吐き出す息に含まれる二酸化炭素などの手がかりを使ってターゲットの人間を探しています。蚊の体には、これらのシグナルを検知するための精密に調整された受容体があるとのこと。

スウェーデン農業科学大学で蚊の研究をしているリッカード・イグネル教授は、「蚊が人間の吐き出す二酸化炭素に引き寄せられることは100年以上前から知られています。これは、蚊が数十m離れた場所にいても行動を引き起こす最初の信号なのです」と説明しています。

さらに、蚊は10mほど離れた位置から人間の匂いを感知し始めるそうで、この匂いが二酸化炭素と相まってさらに蚊を人間に引き寄せます。より近づくと人間の体温が感じられるようになり、皮膚に針を刺して吸血するというわけです。

一方、「血液型がO型の人は蚊に刺されやすい」といった説もありますが、蚊が特定の血液型を好むという考えには科学的根拠がないとのこと。シマール氏は、「血液型に関していくつかの研究が行われていますが、対象者はごく少数です。肌の色・目の色・髪の色とも関係ありません」と述べました。



特に蚊を引き寄せるかどうかに関係しているのが、その人が発する「匂い」だとのこと。シマール氏は、「私たちの微生物叢(そう)が作り出す分子の混合物は、多かれ少なかれ蚊にとって魅力的なものなのです」と説明しています。

人間は300〜1000種類もの異なる臭気物質を放出していますが、イグネル氏らの研究チームはどの物質が蚊を引き寄せるのかについて調べる実験を行いました。実験では妊婦を含む42人の女性が被験者となり、女性がいる部屋にデング熱やジカ熱を媒介することで知られるネッタイシマカを放ち、蚊が好む女性が発する匂いについて分析しました。

実験の結果、蚊を引き寄せるかどうかを左右する27種類の揮発性化合物が特定されました。蚊にとっての魅力が高い被験者には妊娠中期の女性も含まれており、これらの女性の体臭には、皮脂が分解される時に生成される1-オクテン-3-オールが多く存在していたと報告されています。

イグネル氏は、「蚊が人間を見つけるために使う匂いの成分については、これまでかなり多くのことがわかっていました。しかし私たちの研究は、人によって蚊の魅力が異なる理由を化学的に説明した初めての研究です」と述べています。なお、1-オクテン-3-オールはマツタケの香りに大きく寄与しているため、「マツタケオール」「マツタケアルコール」などとも呼ばれています。



他にも、蚊を引き寄せる要因についてはさまざまなことが知られています。いくつかの研究では「ビールを飲むこと」が体温を上昇させたり、呼気中の二酸化炭素量を増加させたり、皮膚の臭いを変化させたりするため、蚊を引き寄せることがわかっています。

シマール氏は病気を媒介する蚊の生息範囲が広がっていることに触れ、蚊に刺されるのを防ぐために肌を覆うゆったりとした衣服を着たり、蚊の多い場所では蚊帳を使ったり、虫よけスプレーを使ったりすることを推奨。「このリスクはますます多くの人々に影響を与えています」「軽めの食事を心がけ、アルコールは控えめにしてください」とコメントしました。