ブラックフライデーは「安売りの場」ではなくなった TikTok とAIが変えたホリデー消費の判断軸

記事のポイント
ブラックフライデー初動は好調で、経済不安のなかでも消費者の支出意欲は依然として強いことがデータから示された。
ホリデーのビューティ購買では、価値と贅沢の両立が重視され、インフルエンサーやAIによる推薦が購買決定を左右している。
フレグランスがもっとも強いカテゴリーとして浮上し、セルフギフティング需要と価格競争力が重要性を増している。
ブラックフライデー初動は好調で、経済不安のなかでも消費者の支出意欲は依然として強いことがデータから示された。
ホリデーのビューティ購買では、価値と贅沢の両立が重視され、インフルエンサーやAIによる推薦が購買決定を左右している。
フレグランスがもっとも強いカテゴリーとして浮上し、セルフギフティング需要と価格競争力が重要性を増している。
2025年の大半を揺るがした経済的不確実性にもかかわらず、ブラックフライデーとサイバーマンデーの初動データは、消費者が支出を恐れていないことを示した。アドビ・アナリティクス(Adobe Analytics)のデータによれば、米国の消費者はブラックフライデー当日にオンラインで118億ドル(約1兆7700億円)を支出した。
TikTok Shopが急成長 ライブ配信とインフルエンサーの力
TikTok Shopは、ブラックフライデーからサイバーマンデーまでの4日間で5億ドル(約700億円)の売上を記録した。ニールセンIQ(NielsenIQ)によると、TikTok Shopにおけるビューティ売上は、直近52週間で73.3%増加し、23億ドル(約3220億円)に達している。TikTok Shopによれば、BFCM期間中にライブ配信を活用したブランドは売上が84%増加したという。
ニールセンIQでビューティおよびヘルス分野のマネージングディレクターを務めるジャクリーン・フラム氏は、この影響力は2026年まで続くと見ている。
「TikTok Shopでは、個々のインフルエンサーに対して信頼性が付与されている」とフラム氏は語った。「ライブコマースとクリエイター主導のコンテンツが、美容製品の発見や購買のあり方そのものを変えている。エンゲージメントとコンバージョンは過去最高水準にある」。
オンライン販売が引き続き主要な売上ドライバーである一方、実店舗での体験も同様に大きな影響力を持つ。ニールセンIQのホリデーショッピングデータによると、ブランド体験はもっとも多く挙げられた購買動機であり、回答者の62%が購入理由として挙げている。
ホリデー売上の喚起について、ロンドン拠点のフレグランスブランド、ディスコテーク(Discothèque)の共同創業者ジェシー・ウィルナー氏は「まさに総力戦のような状況だ」と語った。
同ブランドはホリデー前にロンドン・ソーホー地区で5日間のポップアップを開催するほか、英国の百貨店セルフリッジズ(Selfridges)向けの限定フレグランスをブラックフライデー前に投入し、12月10日にはグローバルローンチも控えている。
同ブランドは値引きを行わないため、これらの施策はピークシーズンに消費者とつながるうえで極めて重要である。
「オンラインだけでなく、リテーラーを介さずにブランドを体験できる機会を提供している。それによって、ディスコテークらしいかたちで体験を設計できる」と、共同創業者のハノーバー・ブース氏は語った。「ブラックフライデー後の停滞を避けるため、すべてのリリースを第4四半期に集中させ、今季は多くの『新しさ』を提供してきた」。
有力メディアからの「お墨付き」が生む連鎖効果
ホリデーシーズンは、影響力のある声からの推薦を獲得する好機でもある。2024年、同ブランドのハシエンダ・キャンドルは、ガーディアン(The Guardian)のビューティコラムニスト、サリ・ヒューズ氏のホリデーギフトガイドに掲載された。ブース氏とウィルナー氏によると、掲載後すぐに在庫が尽きたという。
2025年は、セフォラUK(Sephora U.K.)とブリティッシュ・ヴォーグ(British Vogue)のアドベントカレンダーに商品が採用された。セフォラのアドベントカレンダーは、ブラックフライデーを前に2万4000個すべてが完売している。
たとえ直接的な売上につながらなくとも、こうした施策は翌年以降のブランド認知を築く基盤となる。
「特にリテーラーとの関係において、アドベントカレンダーはパートナーシップの持続性を高める。パートナーとしての立ち位置を強固にするからだ」とブース氏は語った。「ブリティッシュ・ヴォーグは強い影響力を持ち、もっとも評価の高いブランドと並ぶことになる」。
ただし、こうした「狭き門」への参入は2025年さらに難しくなっている可能性がある。ニールセンIQのフラム氏によれば、米国の関税により、アドベントカレンダーやギフトセットに必要なパッケージ調達が2025年はより困難になっているという。
「2025年前半の関税懸念により、ギフトセットを店頭に並べられず苦戦したクライアントは多い。通常、これらは年のかなり早い段階で発注されるものだ」とフラム氏は語った。
AIも購買アシスタントに 10代向けギフトで存在感
消費者はサリ・ヒューズ氏やセフォラといった既存の信頼先だけでなく、AIにも購買支援を求めはじめている。アドビ・アナリティクスによると、ブラックフライデー期間中のAI駆動型リテールトラフィックは805%増加した。
AIによるショッピングガイドは、とりわけ「もっとも好みが難しい層」であるティーン向けギフトを探す家庭にとって魅力的な存在となっている。ニールセンIQのホリデー調査によれば、ティーンやプレティーンがいる家庭は、ChatGPTのようなプラットフォームをギフト選定に活用する傾向がもっとも高かった。
実際に消費者が何を購入しているのかを見ると、第4四半期とホリデーシーズンは従来からフレグランスの主要な販売期であり、その傾向は2025年も続く見とおしだ。
ニールセンIQのデータでは、フレグランスはホリデーショッパーにとってもっとも人気の高いビューティカテゴリーであり、2025年シーズンにビューティ製品を購入する消費者の71%がフレグランスを買う予定だとしている。
バス&ボディワークス(Bath & Body Works)は、ニールセンIQ調査でもっとも多く挙げられたフレグランスブランドだった。一方で、ラグジュアリーフレグランスへの関心も高い。あと払い決済プラットフォームのクラーナ(Klarna)によると、メゾン・フランシス・クルジャンの「バカラ ルージュ 540」(70ミリリットル、355ドル/約4万9700円)が、ブラックフライデーでもっとも検索されたビューティ製品だった。
ホリデーの主役は自分自身
今シーズン、消費者は誰のために買い物をしているのか。その答えは「自分自身」である。ニールセンIQのホリデーショッピング調査によれば、消費者の54%がこのホリデーシーズンに自分へのご褒美を予定している。
「今季に何を、誰のために購入するのかを尋ねたところ、特にミレニアル世代とZ世代で、自分自身が非常に大きく、成長しているセグメントとして浮かび上がった」とフラム氏は語った。「D2Cを持つリテーラーやブランドは、このセルフギフティングの姿勢を、コミュニケーションやマーケティング、販促設計の中心に据えている」。
それでも、ホリデーシーズンにおいて価格と価値は依然として重要な判断軸である。ニールセンIQのレポートによると、品質と価格競争力は、ビューティ消費者の購買動機としてそれぞれ2位と3位に挙げられている。
メイクアップ分野では、フレグランスと同様に手頃な価格帯のブランドが優勢で、E.l.f.コスメティクス、メイベリン、ロレアルがホリデー向けメイク購入者のトップブランドだった。
「ビューティは引き続き非常にレジリエントだが、今季は消費者がより意識的に何を買うかを選んでいる」とフラム氏は語った。
[原文:Trust, treat culture and TikTok Shop: The beauty trends to watch for this holiday season]
Emily Jensen(翻訳・編集:杉本結美)
