「店舗スタッフには強大な力がある」 アルタの新たな インフルエンサー 戦略の全貌

記事のポイント
アルタビューティーは店舗スタッフの専門性と影響力を活かし、社内インフルエンサープログラムを推進している。
各店舗から30人を選出し、専門性や個性を活かした美容情報をSNSで発信中。
SNS活動は特典や露出機会に加え、本社勤務への道にもつながる取り組みとなっている。
アルタビューティーは店舗スタッフの専門性と影響力を活かし、社内インフルエンサープログラムを推進している。
各店舗から30人を選出し、専門性や個性を活かした美容情報をSNSで発信中。
SNS活動は特典や露出機会に加え、本社勤務への道にもつながる取り組みとなっている。
アルタビューティー(Ulta Beauty)は、以前からソーシャルメディアコンテンツを制作している店舗スタッフを活用し、情報を発信している。消費者と直接つながれるように設計した新たなインフルエンサープログラムを通じて、ソーシャルマーケティング戦略を推進しているのだ。
アルタビューティーは1437店舗を展開しており、そこで働く店舗スタッフは約5万人だ。
アルタビューティーの最高小売責任者のエイミー・ベイヤートーマス氏は、「店舗スタッフは、我々がやっていることの心臓部だ」と米グロッシーに語った。「店舗スタッフはさまざまなソーシャルメディアプラットフォームに投稿し、交流している。そして昨年、『我々の最大の支持者で、我々がやっていることにもっとも熱心に取り組んでいるのは店舗スタッフではないか』ということに気づき、このインフルエンサープログラムを立ち上げた」。
専門知識を重視し30人のチームを結成
「アルタビューティーズ(Ulta Beauties)」と名づけられたこの社内インフルエンサープログラムは、6月に同社のフィールドリーダーシップコンファレンス(field leadership conference)で発表され、第1期のメンバーには約1500人の店舗スタッフが応募した。このプログラムは、アルタビューティーに6カ月以上在籍している店舗スタッフであれば誰でも参加できる。
「『どうすれば彼らの声を広げられるだろうか。どうすればより大きな舞台に立たせ、コンテンツをより広く共有してもらうことができるだろうか』と考えた」。コブレンツ氏はそう述べ、「コンテンツをより大きく、より良くし、彼らに報いるためにはどのようにサポートすればいいのだろうか」と話した。
チームは第1期のメンバーとして、すでに美容にフォーカスしたソーシャルコンテンツを制作していたスタッフを中心に30人を選んだ。コンテンツのほとんどは場所と関係しないため、チームは店舗スタッフが所属する店舗の所在地よりも彼彼女らが持つ専門知識を重視した。参加者は店舗所在地や姓など個人を特定できる情報をオンラインで公開するかどうかを選択できるが、ほぼ全員が公開している。
チームは知識の多様性を考慮している。現在のメンバーの役職は、ストアマネージャーからキャッシャーまで16にも及び、ヘアスタイリング、メイクアップ、スキンケア、ネイルケアなど、それぞれ異なる専門分野を持っている。
ボトムアップアプローチの一環
たとえば、ミシガン州ランシングでゼネラルマネージャーを務めるジェン・ロドリゲス氏は、かつてヘアスタイリストとしてアルタビューティーに入社した。同氏はコンテンツ制作を10年間続け、これまでに5万人のフォロワーを集めている。
「アルタの企業チームは何を求めているのかが非常に明確でありがたいし、質問やアイデアを広く受け入れてくれる」とロドリゲス氏は語った。「私たちは、今までとは別次元のレベルでチームと関わるようになった。チームが我々を尊重し、さまざまな方法で私たちの意見を評価してくれていると感じる」。
これは、アルタのボトムアップアプローチの一環だ。店舗スタッフは、消費者の気持ちやニーズをリアルタイムで直接伝える窓口として、頻繁にフィードバックを求められる。このプログラムは、各店舗スタッフが毎月2つのコンテンツを提供するという構成であり、コブレンツ氏のチームでは、毎月ブリーフィングを行ってコンテンツの計画を立てはじめる。もっとも重要なKPIはエンゲージメントだ。
販売促進、カテゴリー、新製品の発売などテーマは多岐にわたり、最近では「ユーコールイット(you call it、あなたが決める)」の月として、店舗スタッフがコミュニティを通じて特定した消費者のニーズについて創造的に語る機会を設けた。目立つ成果をあげた店舗スタッフは、アルタのコマーシャルに出演したり、アルタのプラットフォームでアドバイスを届けるライブ配信をしたり、コンテンツを再投稿してもらったりするチャンスを得ることができる。
らしさを出しながらコンテンツを作る
店舗スタッフはCreatable.ioというプラットフォームを通じてコブレンツ氏にコンテンツを提出し、チームの審査を受ける。クリエイターにコメントが返されることもあるが、「ほとんどの場合、動画はすぐに承認されて店舗スタッフが各チャンネルに投稿できるようになる」とコブレンツ氏は述べた。同氏は、指示が多すぎるとその人らしさが損なわれるため、審査は投稿内容の日付やそのほかの詳細についてのファクトチェックがほとんどだという。
店舗スタッフは、日々の業務に従事している勤務時間内にコンテンツを作成することもできるが、希望する場合は勤務時間外にコンテンツを作成することもでき、ソーシャルコンテンツに対する報酬が成果物ごとに支払われる。
もっとも効果的なコンテンツのタイプはクリエイターによって異なるが、一般的なテーマとしては、GRWM(get-ready-with-me、一緒に準備しましょう)といった身支度の様子を見せる動画、新製品に関する教育的コンテンツ、おすすめの製品のまとめなどがある。
米グロッシーが3人の現参加者に話を聞いたところ、全員が「最大のメリットのひとつは特典だ」と認めた。特典には、ブランド製品のPR用パッケージ、アルタビューティーワールド(Ulta Beauty World)などのイベントへの無料招待、ビューティーブランドのマスタークラスへの参加権、大量の無料ノベルティ、TikTokやメタ(Meta)などのソーシャルメディアプラットフォームを利用した学びの機会などがあり、どれもアルタが用意している。
この機会は、参加者の多くにとって自身のフォロワーを増やすことにも役立った。「はじめた頃のフォロワー数は2万人くらいだったが、この1年で3万5000人近くに増えた」と、元企業インターンで現在はバーチャルトライオンのスペシャリストとして働いているアレックス・アガグ氏は述べた。同氏は、アルタのシカゴオフィスに所属する2名の「アルタビューティーズ」参加者のうちのひとりだ。「最近のフォロワーの多くは、アルタビューティーでの私の経歴、今の仕事に就いた経緯、この仕事で働くのはどんな感じかについて、とても興味を持っている」とアガグ氏は語った。
アガグ氏のオーディエンスのほとんどは、全米各地にちらばる女性美容愛好家、クリエイター、そしてアルタビューティーのスタッフだという。Z世代として、社内のチームメイトからはプレスオンネイルやつけまつげの付け方といった新しいトレンドに関する専門知識をしばしば求められ、フォロワーからは新製品をカメラの前で試してほしいといつも依頼されている。
目指すの本社勤務
多様な消費者にリーチすることも、アルタビューティーの目標のひとつだ。たとえば、このプログラムが誕生するきっかけとなったのは、フロリダ州オーランドのアルタのセールスマネージャーでコンテンツクリエイターのオデット・パウリーノ氏だと、コブレンツ氏は述べた。パウリーノ氏はドミニカ共和国出身で、ソーシャルメディア上にいる40万人のフォロワーに対して主にスペイン語で話している。
「スペイン語の話者が来店するときは、『ここの人たちはスペイン語を話さないんだ』という感じで、たいてい少し緊張している」とパウリーノ氏は語った。「私もそういうコミュニティの一員だった。ここに来た当時は、何を買えばいいのかわからなかった」。
パウリーノ氏はもともと美容を愛する手芸と編み物のクリエイターとしてソーシャルメディアのフォロワーを増やしていたが、たまたまアルタで働くことになった。やがて美容にフォーカスしたスペイン語のショッピングコンテンツにニーズがあることに気づき、スキンケアルーティンやレビューをオンラインで共有しはじめたところ、コミュニティが飛躍的に成長した。今では返信しきれないほど多くのメッセージが届き、全米各地の消費者からレビューの依頼や質問がダイレクトメッセージで送られてくるという。
現在、第2期のメンバーであるパウリーノ氏は、5人のメンターのうちのひとりとしてプログラムの新人5人を指導し、応援している。ほかの多くのアンバサダーと同様に、パウリーノ氏もこの経験を将来、会社での役割に活かしたいと考えている。
また、アルタビューティーに15年間籍を置き、実店舗でキャリアをスタートさせたのち本社勤務となったベテランのコブレンツ氏の指導は、多くの参加者にとって特別な意味を持つ。「多くの参加者は、最終的には本社でマーケティング、クリエイティブソーシャルメディア、あるいはPRの仕事に就きたいと考えている」とコブレンツ氏は述べた。その野望を同氏はよく理解している。
「可能性は無限大だと思う」とコブレンツ氏は話し、「彼らのうちの誰かが、いつかアルタのCEOになるかもしれない。私の最近15年の経験から見ただけでも、そのチャンスは十分にある」と言い添えた。
[原文:Ulta Strategies: How Ulta is tapping in-store associates for content creation with new ‘Ulta Beauties’ internal ambassador program]
Lexy Lebsack(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:島田涼平)
