吉岡:そうした背景のせいで、性感染症に苦しんでいる人たちが社会から見過ごされてしまうことも問題だと感じています。

――例えば、アダルト業界は映画やテレビと同じ映像系にもかかわらず軽視されがちですが、性感染症内科も一般の医療と比べて軽視されているのでしょうか?

三並医院長:確かに、医師の中でも救急医療はかっこよく見られ、性感染症内科や在宅医療は地味だと見られることがあります。

――その意味では、アダルト業界と性感染症内科のイメージには共通点がありますね。とはいえ、性的な健康管理は日常生活において重要です。

吉岡:はい、世間から偏見のイメージは確かに感じています。だからこそ、私たちは正しい情報を発信していく必要があると思いますが、私のような前職がある人間が発信しすぎると、「そんなに遊んでいないから大丈夫」と言われてしまうこともあるんです。そこが一番の課題だと思います。性感染症は誰にでも関係のある話なのに、アダルト業界や遊んでいる人たちだけに関係があると思われてしまうのです。

――確かに、「性感染症=アダルト業界、風俗関係者の病気」というイメージが根強いですね。

吉岡:でも実際には、性行為をする人全員に関係する話なんです。それを強く主張しすぎると逆効果になることもあるので、伝えるのが難しい問題です。

◆性感染症はアダルト業界だけの問題ではない

――医院長は吉岡さんのキャリアをどのように活かしてほしいと思っていますか?

三並医院長:キャリアを売りにしてほしいというつもりはありません。それよりも、吉岡さんが今やっている営業や経営の能力を活かしてほしいです。前職がどうとかにこだわることはないです。

吉岡:先生は、私が今どんな仕事をしているのかをちゃんと見てくれています。

――それは素晴らしいことですね。吉岡さんは今、具体的にどんな仕事をされていますか?

吉岡:営業と広報を担当させていただいています。

――セクシー女優のライブイベントでブースを出してPRされているのを見ましたが、今後もそのような活動を続ける予定ですか?

吉岡:当初はアダルト業界に広めたいと思っていましたが、広めすぎると「アダルト業界だけのもの」と思われてしまうんです。「元セクシー女優が性感染症クリニックに就職!」なんて書かれると、興味を惹かれますが(笑)。

――確かにそういうテーマになりがちですね。

吉岡:でも、そういった見出しだけが目立ってしまうと、「性感染症=アダルト業界の問題」という誤解が広まってしまいます。本当に性感染症で悩んでいる人たちに正しい情報を届けたいので、私の前職に依存せず、なるべくそこに焦点を当てない形で情報を発信していくべきだと思っています。

――逆説的にそれはすごい発想ですね。

吉岡:アダルト業界にはもちろん情報を届けたい気持ちはありますが、今はそこではないかもしれないと思うこともあります。ただ、何が正しいのかはやってみないと分からないので、医院長の意向やみなさんの意見を聞きながら調整し、情報を届けるのが私の仕事だと考えています。

◆大流行中の梅毒、対策はどうするべきか?

――最近、梅毒が流行していて、NHKの報道によれば、年間の感染者数が10年で12倍に急増し、2023年には3年連続で過去最多となりました。何が原因で広がっているのでしょうか?

吉岡:感染ルートは検査では分からないので、はっきりした原因は不明です。

――そうなんですね。

吉岡:NHKの記事では、マッチングアプリが一因かもしれないという説もありましたが、結局のところは分かっていません。

三並医院長:いろいろな説があるんですが、決定的な感染源は見つかっていないんです。過去にはクラミジアが増加したこともありましたが、その理由も実際のところよく分かっていません。感染が広がっていることは事実なので、検査をし、治療で抑えることが大切だと思います。