――そのような事例を聞いたことはありますか?

吉岡:私は聞いたことはありません。検査で陽性が出た場合は事前に治療しますので、女優や男優が性感染症を持ち続けているということはまずありません。

――撮影がある時、診断書はどのタイミングで提出するんですか?

吉岡:撮影の契約段階で提出します。その診断書の有効期限は1か月です。

――女優や男優のみなさんが無茶な行動をすることはないと思いますが、例えば検査で陰性だった翌日に性感染症にかかる可能性もありますよね?

吉岡:そうですね。性感染症には潜伏期間もあります。

三並医院長:クリニックの医院長の三並と申します。私から少し補足させていただくと、潜伏期間というのは感染から症状が出るまでの期間のことです。似たものに「ウィンドウ・ピリオド」というのがあって、これは感染してから検査で陽性になるまでの期間のことです。クラミジア、淋菌はウィンドウ・ピリオドは数日以内ですが、梅毒HIV、B型肝炎は数週間から2か月かかります。

吉岡:なので、「性行為の翌日に検査しても結果がでますか?」と聞かれても、正直なところ分からないんです。

――潜伏期間中に性行為をした場合、感染する可能性はあるんですか?

三並医院長:潜伏期間中にだんだんとウイルスや細菌が体内で増えて検出できるようになるということなので、潜伏期間中も感染の可能性はあることが多いです。症状が出ないことも多いので、潜伏期間だったのか、かかっていないのかは、あとにならないと判断できないんです。

吉岡:最近増加傾向にある梅毒は、徐々に体内でウイルスが増えていくタイプの性感染症です。時間が経つにつれてウイルスが体内で増殖し、体がウイルスだらけになった状態で性行為をすると、感染のリスクが高まります。

――なるほど。とても勉強になります。のちほど性感染症について詳しく聞きますが、話題を少し変えて、セクシー女優のセカンドキャリアについてお聞きします。

◆新たな目標「性別に関係のない仕事に挑戦したい」

――先ほどセクシー女優になったきっかけを伺いましたが、引退を決めた理由は何ですか?

吉岡:自分で立てていた目標を達成できたことが一番大きいですね。また、セクシー女優というのは女性しかできない仕事ですが、性別に関係のない仕事に挑戦したいという新たな目標ができました。そのタイミングで三並先生や他の方々と出会い、次のキャリアを考えるようになりました。

――今、セクシー女優は一種の就職先とも言われていますが、10年以上続けている方は少ないですよね。

吉岡:そうですね。引退後の人生の方が長いですし、10年以上続けている方は本当に稀だと思います。

――セクシー女優というキャリアに限らず、20代後半で転職を考えるのは大変な時代ですが、いきなり新しい道に進むのは難しいですか?

吉岡:その通りです。セクシー女優を辞めた後の人生がどうなるか、みんな考えているとは思います。自分にどんなスキルを付けるのか、経験を積むのか、経歴を作るのか、その点で悩んでいる方は多いと思います。

――現役時代から資格の取得などに取り組んでいましたか?

吉岡:実は宅建(宅地建物取引士)の勉強をしていたのですが、2点足りずに落ちてしまいました。引退後は宅建のスクールに通い、毎日8時間以上勉強していました。

――それはすごいですね! 再チャレンジはされましたか?

吉岡:再チャレンジしようと思ったのですが、ちょうどそのタイミングでクリニックとの縁ができたんです。この仕事が落ち着いたら、また宅建に挑戦しようと思っています。

――吉岡さんのように目標が見つかり、新しい職業に出会える方もいれば、アダルト業界に戻る方もいます。セカンドキャリアを見つけるのはやはり難しいですか?