両社とも借入金など他人資本を巧みに活用し、少ない自己資本で最大の利益を目的にROEを向上させている。自己資本の低さから、財務の安定性としては若干の脆弱感は否めないが、早期リターンを求める投資家や株主の期待に応えている。

 特にゼンショーはすでにその目的を達成しつつあり、ROEは14.3%と高く、M&Aで買収した外食企業が業績にも貢献してきている。一般的にROEは10%以上であれば良好とされる。ROEは業界によって適正値が異なるが、飲食・サービス業は10%が理想とされ、ゼンショーはその目標値の達成に向け頑張っているようだ。

◆M&A戦略による多業態戦略で勢いづく2社

 M&A戦略による多業態戦略で勢いづく2社を分析したい。まずゼンショーは1982年6月設立の外食企業で、すき家、なか卯、ココス、ロッテリア、ビッグボーイ、ジョリーパスタ、はま寿司などが代表ブランドでお客さんの認知度も高い。

 グループ店舗数は1万5100店舗(2024年3月末時点)。売上9657億円(2024年3月決算)と1兆円を超すのは時間の問題だ。 売上だけ見ても、2位のマクドナルドに圧倒的な差をつけ、売上2.5倍と突出している巨大外食チェーン企業になっている。

 直近も前年に対比して、売上で1858億円増加し、23.8%の売上増と著しく業績を伸ばしており、勢いが如実に実績に表れている。財務状態も、前年(2023年3月期)24.7%だった自己資本比率は、今年(2024年3月期)28.7%に資本が増強されており、ほぼ1000億円純資産を増加させ財務を安定させている。

 もちろん買収資金に活用するため、負債も2784億円増加しているが、総資産が前年4695億円に対し、今年は7480億円と2784億円も資産が増えている。決算資料(2024年3月期)から各事業の業績を見ると、各事業の売上構成比はすき家27.5%、はま寿司20.4%、ファストフード25.2%、レストラン14.6%となっている(すべてグローバル含む)。

すき家、はま寿司を擁するゼンショーHD

 ゼンショーHDが運営する各社の業績を振り返ってみたい。まず牛丼市場の競争状態は吉野家・すき家・松屋の“牛丼御三家”が88%と寡占化状態の中、すき家の店舗数1954店舗は吉野家(1232店舗)、松屋(1037店舗)に圧倒的な差をつけている。売上は2653億円、営業利益185億円、営業利益率7.0%となっている。

 2002年10月に設立したはま寿司。最も業績を伸ばしており、前年と比較しても著しい伸長度を見せている。売上は前年1695億円に対して1971億円(2024年3月期)と前年同期比に対して276億円(116.3%)、営業利益も前年84億円に対して114億円と30億円(135.5%)伸ばしている。売上よりも利益の伸びが大きいのはDXの積極的な推進が、効率性をさらに高めているのが推察される。営業利益率は5.8%だ。

 ロッテリアの買収や新ブランドのゼッテリア(ZETTERIA)などを展開している。売上は886億円、営業利益は139億円、営業利益率は5.7%となっている。

◆復活の兆しを見せているビッグボーイ

 ステーキ・ハンバーグのビッグボーイ、ファミレスのココス、焼肉食べ放題が人気の熟成焼肉いちばん、スパゲティのジョリーパスタなどがファミリー客に支持されている。これらを含むレストラン事業は売上は1407億円、営業利益は78億円、営業利益率は5.5%となっている。

 特に2002年ダイエーから買収したビッグボーイは店舗を改装し、ロゴを刷新し巻き返しを図っている。店舗数は207店舗(2022年8月時点)である。2020年以降は統廃合でかなり店舗数を減らしたが、前年(2023年)以降は残存店舗の一部を「炭火焼レストラン」として順次改装し、復活の兆しを見せている。

 ビッグボーイは人手不足の中でDXをより積極的に推進している。店内に入って案内もロボット、オーダーもタッチパネル、料理提供は配膳ロボット、会計はセルフレジと一連のプロセスをほぼ無人化している。