「証言を求められることはありませんでしたが、事故の数日後、女性の旦那さんから会社の私宛に手紙が届き、何度もお礼の言葉が述べられていました。

 一応、事故のことは直属の上司である営業部の課長に伝えていましたが、朝礼で支社長が直々に褒めてくれたのは嬉しかったですね。営業成績は部署でも真ん中くらいの成績で、会社じゃ人前で褒められる機会なんてなかったので(笑)」

◆加害女性の「事故後はパニックに」との供述を知って憤慨!

 被害女性からも後日、直接会ってお礼を言われたが、彼女は鎖骨骨折で全治3カ月の重傷。過失割合は100:0で全面的に自動車の高齢女性に非がある形で決着したのはよかったが、問題は彼女の供述だ。事故後も車に閉じこもって被害女性に言葉をかけなかったのかは「パニックを起こしていたため」と警察の調べに対して述べていたからだ。

「パニックどころかいたって冷静に見えましたけどね。向こうからは最後まで謝罪はなく、旦那さんはブチ切れていたらしいですが当然ですよ。最近は高齢ドライバーの事故がよく報じられているから当時のことはよく思い出します。

 よく事故では『簡単に謝罪しちゃダメ』と聞きますし、それはもちろん理解できるのですが、明らかに一方に過失が認められる場合は別じゃないですか。それに謝罪でなくも相手のケガの状況を気遣う言葉の1つくらいはあってもよかったと思うんです。現場を素通りした人に対しても思うところはいろいろあったし、当事者ではなくても考えさせられることが多かった事故でしたね」

 加害側なら救護義務が発生するため、これを放棄するのは論外。第三者の立場でもこうした状況に遭遇した際、被害に遭った相手を気遣い、手を差し伸べてあげられる人間になりたいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

―[世知辛い世の中]―

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。