福岡県北九州市小倉南区を流れる紫川の河川敷で、拳銃や手りゅう弾、ロケットランチャーのようなものが発見された。ABEMA的ニュースショでは現場付近を取材した。

【映像】ロケットランチャーが発見された現場(実際の様子)

 見つかったのは草に覆われた空き地で、近隣住民は「県警が草を刈った。真新しいトランクが、すぐわかるところに放置されていて、警察が調べたところ、いろいろなものが出てきた」と語る。

 散歩していた70代夫婦が、不審なスーツケースを見つけ、110番通報したことから発見につながった。近隣住民の散歩コースながら、夜は真っ暗のため、歩く人はほぼ居ないという。周辺に住む人も「この辺の人は、夜はあまり歩かない」と証言する。

 警察が草を刈るまで、現地には約2メートルの草が生え、不法投棄のゴミが問題になっていたという。住民の中には「行き止まりで、土地勘がないと来られない」と話す人もいるが、ではなぜ不審物が置かれたのだろうか。

 元福岡県警の刑事部長で、特定危険指定暴力団工藤会」の壊滅に向けた「頂上作戦」を指揮した、福岡県暴力追放運動推進センターの尾上芳信氏は、「真実はよくわからない」としつつも、「通常は、暴力団と一切関係のない“ズブの素人”が保管していることは、ほとんどない」との見立てを示す。「過去の押収事例でも、警察が簡単にガサ入れできるところだと、発見・検挙のリスクが高い。自宅、組事務所、愛人宅には一般的に隠さない」と説明した。

 北九州市でロケットランチャーが発見されたのは、今回が初めてではない。2012年には戸畑区の住民宅から、ロケットランチャー1基と拳銃5丁、実弾などが発見された。後に工藤会関係者が逮捕され、懲役10年の判決を受けた。見つかったロケットランチャーは直径7センチ、長さ70センチのロシア製のもので、X線検査で砲弾が装填されていることがわかっている。

 そもそもロケットランチャーとは何なのか。銃器ジャーナリストの津田哲也氏は「ロケットの推進薬で飛び、命中したら中の炸薬(さくやく)で爆発する。“ロケット花火”と同じ要領で、殺傷・破壊力は通常の銃器よりも、はるかに上。操作のしやすさや簡易性が高く、女性や子どもでも撃てる」と解説する。

 ではなぜ、このような兵器が、日本に入ってきたのか。裏社会ジャーナリストの石原行雄氏は「関係筋に近い人物」からの話として、「重火器の管理が甘い国や、紛争地帯が近い国では、簡単に流出して行方がわからなくなる」といった状況に加え、「海外にいくつも存在するブラックマーケットから、海外マフィアや日本の暴力団が、ブローカーを通じて買い付けているケースがある」と語る。

 石原氏によると、貨物に紛れ込ませる、相手国の管理官を買収するなどの手口により密輸するほか、「船同士が接近し海上で引き渡す、もしくはGPSを付けたブイを海に流して引き上げる“瀬取り”の手法」も使われているという。

 尾上氏は、今回の報道の印象として、「幹部を含む工藤会組員の多くが長期刑になった。そういった者から頼まれた人間が、連絡も取れない状況の中、処分に困って投棄したのではないか」との見方を示す。2012年の発見時も「親交者が預かって保管していた」という。

 暴力団の“武器庫”は、かなり巧妙に隠されている。尾上氏は「警察が把握しやすい場所には隠さない」と繰り返しつつ、「これまでも行きつけのスナックや、遠い親戚の倉庫で発見されたケースはあった」と振り返る。

 これまで手りゅう弾が投げ込まれたケースはあったものの、「さすがにロケットランチャーが使用された事例は聞いたことがない」。とはいえ、工藤会への頂上作戦以降、「一般人に対して、拳銃で襲撃する事件は起きていない。ロケットランチャーも、かなり前に入手したものが発見されたと思われるため、北九州市民が心配する必要はない」と、尾上氏は念を押した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)