ナスダック総合指数が11月8日まで9連騰となるなど、米国株は大きく上昇。日本株はどうなるのか(写真:ブルームバーグ)

前回の「日経平均が3万円を割れたらどうすればいいのか」(10月30日配信)での結論は「今年最後の、そして最も重要な週になる」だった。「万年強気」の兜町まで弱気に傾いている厳しい現実を紹介しながら、まさに「陰の極」が来ている可能性を指摘した。

今回は、その厳しい現実が2週間後の今、どうなったかを検証してみたい。

やっぱり2週間前が「陰の極」だった

まず、まったく変わっていないのがウクライナ・イスラエル情勢という地政学リスクと、アメリカの政府機関の閉鎖リスクだ。これらは引き続き、市場に影を落としている。実際、大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは11月10日、アメリカ国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げた。

次に日本の状況はどうか。具体的事例を、前回紹介した順に見ていきたい。まず、プライム市場の騰落レシオ(25日)はどうか。本年相場のスタートとなった大発会と同水準の70ポイント台で「買いゾーン」となっていたが、これは一気に40ポイント以上も上昇(114ポイント台)、まさに底入れ感を表している。

次に移動平均線ではどうか。筆者が重視している日経平均株価の総合乖離(25・75・200日移動平均線との乖離率の合計)は10月26日に−7.47%だった。これを25日移動平均乖離率の−3%、同75日の−5%と合わせ、「移動平均乖離率の3・5・7%の法則」に当てはまる「大反転のタイミング」とした。

結果はどうだったか。やはり、25日と75日移動平均線の乖離率が大きくプラスに転換、現在の総合乖離率は強気相場を表す「2桁プラス」となっている。

さらに、チャートをゾーンで見たとき、日経平均は3万1500〜3万0500円の「おりの中」に閉じ込められ、兜町筋では、このおりも下に破られるのではないかと気をもんでいた。だが結果は、逆に上値を1000円以上も突き抜けて、11月10日のシカゴ日経平均先物は3万2830円で終了。7月3日の年初来高値3万3753円抜けまで、あと1000円弱となっている。

業績相場への期待感が再点灯、外国人買いも

つい先日までは米国株市場への期待感が消失し、日本株市場においても、1ドル=150円の円安で高まると言われていた「業績相場」がなかなか出てこなかった。だが、ナスダック総合指数は9連騰となり、2068円と低迷していた日経平均の予想EPS(予想1株当たり純利益)も2217円となった。今年の最高値を記録したことで、「業績相場」への期待感も再び点灯した。

今のところ、為替は1ドル=151円台になっても介入の手は出ていない。「実はこの30年間で世界から出遅れた日本が、生産の国内回帰をもくろむ起死回生の策ではないか」との兜町らしい見方も、荒唐無稽とは言えない様相を示している。

需給面を見ると、11月第1週の財務省ベースで見た外国人投資家の動向は3135億円の買い越しだった。これで買い越しは6週連続だ。先物手口に左右されないと言われる同省ベースのこの数字で見る限り、外国人投資家の日本株買いは本物だと思われる。

一方、取引所ベースの外国人投資家も11月第1週は576億円と、2週連続買い越しだった。しかも、目立ったのは11月1週515億円、10月最終週1117億円と買い越した事業法人(自己株買い)だ。

結局、事業法人の年初から10月までの累計は5兆8613億円の買い越しとなり、昨年10月時点の6兆0168億円(過去最高)に迫っている。買われた自己株は、消却されればもちろん、もし金庫株となってもほとんど市場には戻ってこない。

さらに10月のマネーストックM3(現金、銀行などの預金)の平残は1590兆2000億円と、最高水準の1590兆円台を今年5月から保っている。日本市場における「株対金(カネ)」のバランスは、引き続き資金超過だ。

このように、この2週間で相場の景色が変わったことは明白で、筆者の予想どおり、10月最終週が今年最後の、そして最も重要な週になった。

だが、まだ当然、紆余曲折はある。まず13日は、日本市場が前出のムーディーズによるアメリカ国債の格下げをどう織り込むかだ。

次回のアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)にも目配せが必要だ。開催は12月12日〜13日のため、12月に入ると参加者が発言を控えるブラックアウト期間に入る。今週からはFRB(連邦準備制度理事会)の要人や各連銀総裁などの講演会や会合が増加し、当局者の発言がメディアを賑わしそうだ。

すでに前週は、ジェローム・パウエルFRB議長発言でニューヨークダウ平均株価は9日に前日比220ドル安となったが、10日には逆に同391ドル高となる神経質な動きを見せた。

今後も「FOMCの政策決定は会合ごとに」ということなので、14日に発表される10月CPI(消費者物価指数)を筆頭に、15日の10月PPI(卸売物価指数)や小売売上高、16日の10月鉱工業生産・設備稼働率、17日の住宅着工件数などの同国の経済指標が注目される。

「年末高と新春高」が見えてきた

一方、日本においては15日の7〜9月期GDP(国内総生産)速報値が最も重要となる。4〜6月期は年率換算で+4.8%と高く出ていたが、7〜9月期は−0.5%程度と予想されている。すでにメディアで予想されている数字とはいえ、15日に実際発表になったときの市場の反応はどうなるか。

また、投資家が最も関心を持っているのが「これからの市場の中心はバリュー株かハイテク株か」ということだと思う。筆者は、デフレ脱却相場は銀行株中心のバリュー株が本線であることは変わらないと思っている。

問題はハイテク株、とくに半導体関連株だ。川下の半導体最終ユーザー(インテルやアップルなど)の在庫調整は今年で終わり、来春からの急上昇が考えられる。

ということは、川上に位置する半導体製造装置メーカーの業績回復は若干遅れるが、来年半ばには業界全体が上がってくると考えられる。つまり、2024年はバリュー、ハイテクの2本立ての強力相場とみる。これからの年末高はその2024年の強力相場につながる大事な相場とみている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)