2022年に行われたアメリカ大統領選挙の中間選挙期間中に、Facebookではジョー・バイデン大統領が自身の孫娘と写った動画を加工し、「異常な小児性愛者」とレッテルを貼るような投稿が行われました。この投稿を受けてさまざまなFacebookユーザーがMetaに対して削除依頼などの報告を行いましたが、Metaは「ルールに違反していない」として投稿の削除を行いませんでした。しかし、SNSの異議申し立てやコミュニティポリシーの改定などを審査・勧告する第三者機関であるFacebook監督委員会はポリシーの見直しを含めた調査を行うことを発表しました。

Oversight Board announces two cases: Altered Video of President Biden and Weapons Post Linked to Sudan’s Conflict | Oversight Board

https://www.oversightboard.com/news/698422811785085-oversight-board-announces-two-cases-altered-video-of-president-biden-and-weapons-post-linked-to-sudan-s-conflict/



Meta Oversight Board to weigh in on manipulated Biden video | The Hill

https://thehill.com/policy/technology/4246311-meta-oversight-board-manipulated-biden-video/

The Oversight Board will take on Meta’s manipulated media policy ahead of 2024 elections

https://www.engadget.com/the-oversight-board-will-take-on-metas-manipulated-media-policy-ahead-of-2024-elections-120046787.html

事の発端となったのは、2022年10月に行われたアメリカの大統領選挙における中間選挙中の出来事でした。バイデン大統領が投票を行った自身の孫娘であるナタリー・バイデン氏に対して「I Voted(投票済み)」ステッカーをシャツに貼り付け、その後愛情表現の一環として頬にキスをしました。

しかし、あるユーザーがその際の映像に対して加工を行い、あたかもバイデン大統領がナタリー氏の胸に繰り返し触れたように見せる映像をFacebookに投稿しました。その際の投稿には「異常な小児性愛者」というキャプションや、バイデン大統領に投票した有権者を「精神的におかしい」とからかうキャプションが添付されていました。

Facebookでは通常、コンテンツポリシーに違反した内容の投稿は削除の対象となります。この投稿についてもさまざまなユーザーがMetaに対して投稿を削除するよう要求しましたが、Metaは投稿の削除を行いませんでした。投稿の削除を拒否した件についてMetaは「AIによって生成された動画や、被写体となった人物が本来言っていない言葉を編集を使って言わせている動画にのみFacebookの『加工されたメディア』ポリシーは適用されるため、今回のバイデン大統領に関する投稿はコンテンツの削除を行うことに値しません」と述べています。また、Metaはこの投稿に関して偽情報やいじめと嫌がらせのポリシーは適用されないと判断しています。



Facebook監督委員会のトーマス・ヒューズ局長は「確かに言論の自由を認めることは民主的な社会を形成する上で極めて重要ですが、バイデン大統領という公人について誤解を招く印象を与えるために加工された動画コンテンツに関して、Metaの人権責任を問わなければなりません」と指摘しています。さらに「Facebook監督委員会は、動画コンテンツの認証に関して、Metaが取り組むべき課題や改善案を検討していきます」と述べています。

Facebook監督委員会は、政治家の言動について人々に誤解を招く可能性のある加工された動画に対して、現在のMetaのポリシーが適切に適用できるかどうかを評価し、改善案をMetaに提言するための議論の一環として、ユーザーからのパブリックコメントを2023年10月24日まで募集しています。





記事作成時点で募集されているパブリックコメントのテーマが以下。

・政治家の認識について、有権者が持つ政治家の認識に影響を与えるため、加工された動画コンテンツを利用するオンライントレンドについて

・加工されたメディアを含むMetaの現在のポリシーは、特に選挙の場面において、現在および将来的な課題に対応できるのかについて

・政治家などの影響力を持った立場の人物に関して、誤解を招くような印象を与えるために加工された動画コンテンツを掲載したMetaの責任と、AIのあり方について

・自動化を含む、適切な動画コンテンツの認証に関する課題と最適解について

・ファクトチェックプログラムなど、コンテンツの削除以前に、政治的に誤解を招く情報に対する取り組みの有効性について





Facebook監督委員会は今回のパブリックコメントを踏まえて議論を行った上でMetaに今後のあり方について提言するとのこと。一方で今回のケースではFacebook監督委員会に拘束力はなく、Metaがポリシーに関して修正を行うか、またどのように修正を行うかについてはMetaに委ねられています。なお、ポリシーの修正を行う・行わないに関わらず、Facebook監督委員会の提言を受けてから60日以内にMetaはコメントを残す必要があります。